020_20230112_へうげもの

作品情報

  • 「山田芳裕(やまだよしひろ)」さんによる成人向け漫画

  • 『モーニング』(講談社)にて、2005年8月〜2017年11月まで連載

    • 12年ほどの連載で完結しています

  • アニメ化も2011年にされてます

    • 39話程度

導入

「史実と一緒」というなら、ネタバレもくそもないので、バラしまくって行きます。

「数寄者」という「行き過ぎた芸術かぶれ」をテーマにした作品…なのだと思う。

  • 古田重然(ふるた しげなり)、後の古田織部(ふるたおりべ)という、実在の人物

  • 戦国時代、1577年安土、織田家臣の軍議の風景からものがたりは始まる

    • 当時、古田はサスケという名で、34歳

    • 「この先どうしよっかなー」というお年ごろ

  • 周りの武将を内心「もっさりしてる」「センスねえな」と思ってる

  • 当時、古田は「伝令や後方支援」に定評があり、信長から信頼を得てた

  • 松永攻めを行う

    • 戦場は倅の信忠に任すが、降伏勧告はお前がやれ

    • その時「平グモの茶釜を俺に渡せば裏切りを許す」といえと

  • で実際、火事場で交渉にあたる

    • その時、後ろに「平グモの茶釜」が目に写ってしまう

  • 古田、泣いてしまう

    • 松永が「ワシの人生は」とか「誰にも渡さん」とか言うてるけど、聞いちゃいねえ

  • そこで、松永が「聞け」と一括された言葉に感銘を受ける

    • 「圧倒的な力を持つものが現れた時、ワシの道おw選ぶか、諦める道を選ぶか、決めねばならぬ」

    • つまり「武人として君主として民草と生き延びる」か「芸術家として数寄と心中するか」

  • 秀吉が乱入するが、松永は体に平グモと爆薬を巻き付け、天守閣から叫ぶ

    • 「信長よ、涅槃で待つ、在りし日にお前にくれてやった茶入「九十九髪茄子」必ず土産に持ってこい」

    • 松永「数寄者として死ぬ」ということを体現してみせた

  • が、古田にはそんなことよりも「平グモはどこに飛び散ったのか!」のほうが気になる

    • 飛んだ破片をうけにいくが「あちー!」となる

  • なんだかんだあって、秀吉の手柄になる

    • 信長様は本当は「屈服することが望み」で、平グモとかどうでも良かったのでは?

  • 古田は信長の元に「ご所望の品持参しました」と歩み出る

    • 粉々で真っ黒なくず鉄の破片を差し出す

    • 「平グモのフタにござりまする、無残な姿に成り果てました」

  • 信長は大爆笑する

    • 家臣たちは「そういえば、お館様は長く笑われてなかったな」と

    • くれてやるもってけ

  • 信長は「なにかやりそうな男では在る」と

  • ここまでが第一話

これは現代においての「芸術ぐるい」とも言える「数寄」と「武の道」また、「戦国の世をどう生きていくか」の物語。

観想

  • 一度「すごいの出てきたぞ!」ってマンガって、最後まで追いかける事が少ない

    • 例えば「このマンガが凄い!」とかで話題になって「うおー、追いかけなー!」で、その当時までの最新まで追う

    • で、その後は「連載のスピード」あるいは「単行本のスピード」で追うことになる

    • で、追いかけなくなる、そして忘れる

    • 最後まで追いかけることは少なく、完結したのも解ってないことが多い

    • 今回もそれだったので、そのために「最初から通して読んだ」

    • だからこその「今読んだ」なんですよね

  • いーー頃合いの、完結作

    • 25巻なら、頑張れば2日で読める

  • 史実を「ある程度」考慮してる「痛快娯楽作」

    • 節目節目の「大きなイベント」は史実に合わせているものの、

  • 不思議なタッチかつ芸の細かい作画

    • なんとも言えない線の太さ

      • 昔の漫画は線が太いが、それともまた違う「線の太さ」である

        • 手塚治虫とか石ノ森正太郎とか、昔のまんがは線が太いし、またディフォルメされたマンガもまた線が太い

      • 例えるなら「楷書体の毛筆」みたいな太さがある

        • 草書体は細かったり、滲んでたり、頼りないところがある

        • 基本は太く、ハネやハライを想起させる

    • コマの線が「震えた線」になっている

      • 古い古文書とかで「手書きで線を引きました」みたいな風合い

      • どうやって書いてるのかわからんし、なんか「そういう書き方」「そういう機械」があるのかはわからないが、

      • 最後までそれ

    • そのくせ、茶碗等の「芸術作品」だけは、わけのわからない書き込みで書いてある

  • 主人公は「芸術家」であり「目利きの骨董鑑定士」であり、出資者・資産家であり、芸術の大家の位置づけであり、インフルエンサーであり…というものに最終的にはなる

    • ただ「それになるための過程」と「それになるための足掻き」を描いているのが好み

    • 天才や偉人は、ともすれば「自分の内なる声に従えば自然に位置を手に入れてる」って思いがち

    • でも、この作品中の古田織部は「ここ、勝負どころで…権威を手に入れることができる!」とか「武人でいくか、茶人で行くか…」とか、俗物だし葛藤する

  • 聖人や偉人でなく、飄々とした俗物である、風に描いているのも好き

    • 自身が俗物なのはわかってて、本当の「才能者」や「求道者」を羨んでるフシがある

    • お金にも目ざといし、盗むしw

    • 自分が大家になった後も、「自分の考えた自分が好きなの、流行れ!」的なバズりやトレンドを望んでるし

    • 町に降りてって正体隠して若手を鼓舞する「芸術、水戸黄門」みたいなことしてるし

    • 学術・芸術としての「茶の湯」を体系づくりしてるくせに、「自分の好みは本当はこうだ」のようなものを現してて、それはラフだったりする

      • 要は「ビジネスマナー」と「自分の思う”最高にロック”」を同時開発してて、どちらかというと「最高にロック!」のほうが、流行れって思ってる

      • その趣味のほうは「織部ごのみ」として、後世にも伝わってる

    • その、後半における「好き勝手している」「ひょうひょうと、でも必死に図太く生きてる」というのが、タイトルの回収として浮かび上がってくる

      • 本人が自覚する、というのがこの作品の見せ場じゃないかなーと

  • 歴史を下地にしているけれど、「下地にしている」程度で、こだわってない

    • どちらかというと「テーマ」程度のもので、書いてることは「描きたい優先」「エンタメ寄り」だと思う

      • 例えば「千利休」を巨漢で描くことは、ママ在ると思うけど「老いてるのに筋骨隆々で、忌の際に鉄拳で人殴り殺せる」とか

  • 主人公は「現代の感覚を持った芸術評論脳の人」として故意に描いているのかな

    • 今やったら良く言う、擬音の感じ、例えば「この”くちゃっ”とした絵よなー」みたいなのをわりとしゃべらせてる

      • Wikiではオトマノペだって言うてるけど、物体に対して「ズドギュッ」・「ガニッ」・「はにゃあ」・「ホヒョン」みたいな評価をする

    • それは事実かはおいておいて、この作品中では「主人公は現代の感覚ほどだった」という有能さ先進性の示し

      • 自分たち「現代の読み手」にとって「作中は数百年前の日本」という”異世界”をのぞき見ているのに、一人だけ「俺らと一緒」という一週の周り方

      • 作中で「異質な人間である」というのが、読んでて理解できる

  • それに関連して、作品に「現代のサブカル」や「現代の芸能」「ちょいレトロ」を散りばめている感じ

    • 本の装丁や巻末予告などに「英語やデザイン性の高いもの」を多く入れてる

    • 新旧問わず、ポップスやロックの題名、歌詞などを散りばめてる

    • 登場人物のモティーフが、具志堅洋行だったり大橋巨泉だったり

  • シャレの聞いた「後のXXである」が多く出てくるのもおもろいw

    • 自分では本当かどうかは解らない(そない教養がないので)が、後の〜であるを「言わずに」しれっと出してくる

    • 例「これ、この陶器は未来”日本には当たり前にあるもの”として”陶器”の呼び名が”瀬戸のもの”と言われるようになればいいのに」

  • 「数寄者(ひょうげもの)」と「武人」や「政治家」や「権威」というものとの間での葛藤は、現代に置ける「趣味と仕事」の論争や「ワークライフバランス」みたいなものにも通じるのかもしれない

    • 会社の役職や出世を取るか自由を取るか、公人or私人どちらを大事にするか、そういうものも下地に置くと、考えるきっかけになるかもしれない

まとめ

  • 普通ならお硬い、歴史上の偉人伝を「ポップでロックな感じ」かつ「濃ゆい目」に駆け抜けたければ、イッキ見して欲しい痛快娯楽作

    • ただし、史実通りとは限らないので、お勉強にはしないで下さい

  • 自分と同じように「はぁ、そういえば途中まで読んでたけど…最後まで見てないなぁ」ってなる人、または「話題になったけど、食指が動かんかったし、いつか読もうと思ってた」人には、ぜひ読んで欲しい作品


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