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なんとかなる。 吉本ばなな 『キッチン』を読んだ話

こんばんは。Kazuhiraです。

吉本ばななさんの『キッチン』を初めて読んだ。

この本を読んだきっかけはたった一つ。

私がしんどい状態だったから。そこから解放されたかったから。

読んだ結果は、言葉にするのが難しいが、私の心が少しだけ晴れやかになった。そんな気がした。

今回は、この『キッチン』という作品を読んで、感じたことを書いていこうと思う。

・今の自分

私は2月からうつ病により休職中だ。

少しだけ、うつ病になった経緯を話そうと思う。

1月の終わり、仕事の休憩中のアイスやお菓子の過食から始まり、声が出しづらくなった。

前からストレスを感じると甘い物に走ることは自分でも気づいていたし、今回も同じと思っていた。

甘い物を食べることで満たされると同時に、またやってしまった。という後悔。

そんなこんな繰り返しているうちに、判断能力や意欲が低下してきた。

ついには、結婚記念日の夜、家に帰って妻と何を食べにいこうか話し合っていた時、思考が止まり、何も考えられなくなった。

そのまま自宅のソファにもたれかかり、動けなくなった。気力がなかった。

そんな感じです。
うつ病になった経緯は、別の機会にまた色々書こうと思う。

そんなこんなで自宅療養を始めた。

最近はイラストや映画鑑賞など、趣味を楽しむ程度には回復もしてきた。

ただ、時折思うことがある。
「俺って何してんだろうな…。」と。

なんとなく、漠然とした不安が襲ってくることがある。

どうしようもなくなって、消えてしまいたいと思うことがある。

趣味も手につかなくなり、呆然する日が続いた。

そんな時に出会ったのが、吉本ばななさんの『キッチン』だ。

・『キッチン』に出会った経緯

この本を見つけた経緯は
この方の記事を読んだこと。


望月哲門さんの
自分が分からなくなった時、本を読みまくれば自分の立ち位置が決まる。

私は記事が以前から好きで、よく読み返していた。
しんどくなった時、ふとこの記事を思い出し、また読み返していた。

この記事の中にある、筆者が助けられたのが「吉本ばなな」「西加奈子」、二人の小説家の作品だという。

影響を受けやすい私は、すぐにAmazonで検索をかけた。
すると作品がたくさん出てきた。

「どれを選べばいいか…。」と悩んでいた時、
吉本ばななさんの『キッチン』が目に止まった。

なぜか、この本を知っている気がした。

理由は分からない。刊行された年も知らないし、内容も知らない。

ただ、何か引っかかるものがあった。

価格はKindleで400円ちょっと。
安い。すぐにポチった。

で、早速読む。

・『キッチン』を読んで

この本の内容は大きく二つの物語に分かれている。
(『キッチン』は一つの物語だが、今回私が読んだ文庫版には、著者の「ムーンライト・シャドウ」も収録されている。二つの物語を合わせて紹介していく。)

どちらの物語にも共通して言えることが、『愛する人を失った悲しみ』だった。

読んでいてとても悲しい気持ちになった。

愛する人を失って、絶望に打ちひしがれる主人公たち。

淡々とその場の風景、主人公の心境が語らられる文は、読んでいて心がキュッとなる思いだった。

でも、この本はとても面白かった。

いや、面白かったというより、『美しいものを見た』ような感覚に近い。

主人公たちは、絶望に打ちひしがれながらも、行動し、新たな人に出会い、絶望を乗り越えていく。

その主人公たちの立ち上がろうとする姿を見て、心の中で「頑張れ。」と、応援していた。

絶望から這い上がろうとする主人公たちは、美しかった。

それは、うつ病で空虚になっていた今の自分に、心の潤いをもたらしてくれたように思う。

文中、気に入った言葉があった。

「今がいちばんつらいんだよ。死ぬよりつらいかもね。でも、これ以上のつらさは多分ないんだよ。その人の限界は変わらないからよ。
〜(中略)
こういうのがまたあるのかっていやんなっちゃうって見方もあるけど、こんなもんかっていうのもあってつらくなくなんない?」

吉本ばなな『ムーンライト・シャドウ』

これは、風邪をひいた主人公に対して、「うらら」という女性が言った言葉だ。

この文を読んで、無意識にマーカーを引いていた。
物凄く心に刺さった。

確かに、いま自分はしんどい。

会社での出来事がトラウマになって、幻聴が聞こえることもある。

どうしようもなく気分が晴れないこともある。

大勢の友人の集まりに行くのに、とんでもなくおっくうになってしまう自分もいる。

でも、その苦しさがずっと続くわけじゃないと、この「うらら」の言葉を聞いてわかった。

なんとかなるのだ。

きっといつかは苦しみも晴れる。

だって、うつ病になって、ある意味、私は自分の限界を知ったから。

療養を始めた頃は、自分を情けなく思っていた。

「こんなことで仕事を休むなんて…。」なんて、社畜精神全開だった。

それが辛く、焦りでもあった。

でも、今は違う。

この小説を読んで、気が楽になった。

辛いことがあっても、自分の限界を知っているから、「こんなもんか。」の精神で、受け流していきたい。

・まとめ

どんなに絶望的でも、それはずっと続かない。

新しい場所に行って、新しい人と出会って、そこからまた新しい人生が始まる。

どんなに辛くても、幸せになりたいと願っていい。』そう思うことが出来たのが、この小説を読んで得た最大の学びだと思う。

私のように、しんどい状態にある人にこそ、この小説を手にとってほしい。

本を読むことで、他人の辛さを知った。

本を読むことで、今の自分を知った。

やっぱり本はいい。
今の自分の立ち位置を固めてくれるような、そんな存在だ。

この本を読んで、確実に心が救われるという保証は、私には出来ない。

ただ、その人にとっての、何かしらの気づきにはなるはず。

ぜひ、読んでもらいたい素晴らしい一冊でした。

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