見出し画像

#19ゆかと翔太のオータムキャンプ(1)

シルバーウィーク初日の土曜日。
今日から1泊2日でキャンプに向かう。

栃木県にあるキヌガワ温泉のキャンプ場だ。
ゆかの家は関東圏じゃないため、高速道路に乗っての長旅になる。

朝早くに出発して午後2時くらいに到着する予定になる。
だから荷物は全部昨日のうちに車に積んでおく。

朝食はコンビニでおにぎりと飲み物で済ませる予定だ。
私は目覚まし時計が鳴るとすぐに飛び起き、パパの車に乗り込んだ。

「楽しみすぎて、すぐに目覚めちゃった」

パパもママの準備万端のようだった。
まずは翔太くんを迎えに行かないといけない。

私たちは翔太くんを迎えに行って、
それからコンビニでおにぎり等の食料を調達した。

「いっただきま~す!」

私たちは車の中でおにぎりを頬張った。
こういう食事は子供たちから見ると珍しいので、ワクワクするのだ。

パパはカーラジオをかけて高速道路に入っていった。

今からたっぷり6時間以上は車の中だ。
ゆかたちは朝早かったこともあって、眠気に誘われていった。

「う~ん、眠くなっちゃった……。パパ、キャンプ場に付くまで寝てるね」

ラジオの音とナビの声がちょうど子守唄のようだった。

……おやすみ、私。
私は落ちるように眠りに入っていった。

――――――――――

「ゆか、起きなさい。もうお昼よ」

ママに起こされて気がつくと、栃木県内のサービスエリアについていた。

ここで昼食を取ることになったみたい。
今晩と翌朝はキャンプ飯になるからフードコートで食べるのはこれが最後になる。

「はぁ~。お腹すいたな。ゆかちゃんに翔太くん。ここでお昼取るぞ!」

パパは運転で疲れているようで、お腹ペコペコみたいだった。

私はさっき朝ごはん食べたばかりだと思ったのに、寝ている間に時間はあっという間に過ぎて、お腹もまた時間通りに減っていた。

うん。

私たちはそこでラーメンなどの麺類を注文したよ。
『佐野ラーメン』というあっさりとした鶏がら出汁の醤油ラーメンが有名みたいだった。

コシの強い麺がすごくおいしかった。

そしてデザートに栃木名物『レモン牛乳』のソフトクリームを食べたよ。(*^o^*)

そして、ここからキャンプ場までそんなに遠くない。
私たちは無事に予定時刻、午後2時くらいにキヌガワ温泉のキャンプ場に到着したのだった。

――――――――――

キヌガワ温泉のキャンプ場。

ここは子供連れなどのファミリー層に人気があるキャンプ場で、釣り堀や温泉、ドッグランなどを完備しており、有料ではあるが、機材の貸出なども行っているレジャー施設だ。

まずは管理棟でチェックインを済ませる。

さあ、ここで1泊2日のキャンプ生活だ。
管理棟の奥に進むとオートキャンプサイトと呼ばれる区画があり、そこにテントを建てて一夜を過ごす。

「まずはテントの設営だね!」

車から荷物をおろしてテントを設営する。

……でも小学2年生の私たちじゃテント組み立て方はわかんない。
だからここは……ママに任せよう!

パパ用とママ用と子供用の3つのテントを建てるのはママに決定。

ここのキャンプサイトはキヌガワ側と山側と区画が分かれているんだけど、キヌガワ側は川の眺めが良いから人気でいつも混んでいる。だから、ちょっと地味だけど山側の区画のほうがゆっくりのんびりできるみたい。

「にぎやかな川側じゃなくても、山側でもいいわよね?」

私は静かな雰囲気で翔太くんと寝泊まりできると思うと、山側のテントがいいなぁと思った。

「うん。山側でいいよ」

さっそくママはテントの設営を始めた。
ママはこう見えてもパパと一緒に何回かキャンプしたことがあるらしく、設営には慣れているようだった。

だから、私と翔太くんはパパと火起こしをすることにしたよ。

「ここのキャンプ場は直火は禁止なんだ。芝生が燃えちゃうからね。だからバーベキューコンロや焚き火台を使って炭を起こすんだぞ」

パパはそう言ってバーベキューコンロを組み立て始めた。

「二人は持ってきた炭に着火剤を塗っていてくれ」

実は炭というのは思ったより火がつきにくいのだ。だからジェル型の着火剤を塗ることでスムーズに火をつけることができる。

ゆかと翔太くんは、持ってきた炭に着火剤を塗っていく。

「炭って、火がつきにくいのか~。なんかすぐに燃えそうなのにね」

そうして、組み立ったバーベキューコンロに着火剤の付いた炭を入れていく。
するとパパがチャッカマンで火をつけた。

ボッ……。

「おお~、火がついた~」

翔太くんは目を輝かせていた。

「いや、まだなんだよ。こうやって、トングで『井』の字のように炭を重ねて、火吹き棒で風を送るんだ。炭が赤くなって完全に安定するまで、炭火起こしは気が抜けないんだよ。ほら? 火吹き棒で炭を吹いてごらん」

そう言ってパパは翔太くんに火吹き棒を渡す。

ふう~。ふう~。

本当だ。炭が赤くなってきた。
私もやってみたい。(間接キスになるけどね。えへへ)

「ねえ、翔太くん。次、私にも吹かせて」

そう言って二人でかわりばんこに「ふーふー」する。
そうしているうちに、だんだん安定して炭が赤くなってきた。

「やった……。炭火起こしできた!」

私と翔太くんでハイタッチをする。イェイ!

「じゃあ、二人とも。ご飯を炊くからお米を洗ってきてくれるかな」

私たち4人分の今晩と明日の朝食べるご飯だ。
全部合わせてお米5合になる。

「はーい。私、お米ちゃんと洗えるよ」

そう言って私は、持ってきたお米を炊事場で洗う。
普段ママの料理を手伝っているから、お米洗いはお茶の子さいさいだよ。

ジャ~……。ワシャワシャ……。

ボウルとザルを持って、かき混ぜるように洗う。
あまり力を入れてかき混ぜるとお米が割れちゃうから、軽くすすぐのがポイントなんだ。

それを5合炊き飯盒はんごうに入れて完成! 水は目盛りの分だけちゃんと入れたよ。それから、お米に水分を吸収させないといけないから、洗ったすぐには炊けない。だから、とりあえずいったん完成だ。

もう少し遅い時間になったら、炊こう。
翔太くんが重くなった飯盒を一緒に持ってくれた。

無洗米を使えばいいじゃないかって思うかもしれないけど、無洗米より普通のお米のほうがおいしいんだって。ママが言ってたんだよ。

そして、米の吸水時間の間にやれることは……魚釣りだね!
ドキドキの魚釣り。すごく楽しみ!

「ママ、魚釣りしてくるから、火の番をお願いね?」
「はいね。魚釣り、行ってらっしゃい」

よ~し! 大きいのを釣ってやるぞ~。

火の番はママに任せて、私たちは釣り堀エリアに向かうことにした。
……→ 次回に続くよ。

私がより長く生き延びるためにサポート下さい。