【ひよわな校長の処方箋59】教師の事情と学校の事情
休日の部活動の地域移行が進んでいるが、平日の部活動については当分教師がやらざるを得ない。
働き方改革の視点から、勤務時間の適正化も課題になっているが、部活動があると退勤は遅くなる。
昔からの慣例で、時期ごとの日没の時間に合わせて完全下校の時間を決めている学校が多いのではないだろうか。そうなると、夏季は18時過ぎまで部活動をやり、翌日の授業の準備はそれから始めることになる。
ならば、年間を通して完全下校の時間を統一して早めるようにすればいいのだが、そうすると冬季に合わせることになるので部活動の時間がほとんどなくなる。
そこで、妥協点を探り、冬季以外の完全下校の時間を例えば17時半に統一して、少しでも早める案を出す。
そうすると「本来、完全下校の時間というのは、その時間まで部活動をやらねばならないというものではないのだから、顧問が自分の事情で退勤時間に合わせて部活動の終了時間を決定すればいいのではないか」という意見が出る。
ところが事はそう簡単にはいかない。生徒や保護者から、「昨年度までの顧問はもっとやらせてくれたのに」とか「他の部はやっているのになぜうちの部だけ帰らなくてはいけないのか」などの不満が出てくる。また、一緒に下校する友達を待って、結局完全下校の時間まで時間をつぶす生徒が出てきたりする。
これは部活動の話だが、授業の指導や、学級の運営などに関しても教師による違いがクレームになるケースは多い。確かに、健康観察の方法や、給食の片付け方など、全学級が統一しなくてはいけないこともあるが、生活指導での生徒との対応の仕方や、授業での教材の工夫などは、教師の個性が発揮されるべきところでもあるし、対応する一人一人の生徒の事情もある。
これらの問題のおおもとは、なかなか多様性を認めない日本の風土にあると思うので、これこそ未来をつくっている学校が先駆けとなって変えていかなければいけないところだとは思うが、例えば下校時間を早めようと思っても、公立学校の場合、近隣の学校が旧来の方法でやっている中で一つの学校だけで先走って実践しても、「他校ではできているのになぜ早めるのか」というような批判が学校にくる。時にはそのクレームが教育委員会にいく。
そこで必要なのが「根回し」と言われる処世術である。校長は他校の校長と「雑談」と言われる非公開の情報交換を行い、課題意識を共有し、一つ一つ可能性を探っていくのである。
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