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熊野古道伊勢路を歩くday2#4

女鬼峠は山道と言うには物足りない。ただ峠を越えるだけなら茶屋跡から大きな岩を切り割った「切り通し」へ向かえば簡単に越えられる。
本当に物足りない。けどそうなのだ。熊野古道は伊勢神宮と熊野本宮大社を結ぶ道なのだ。山を登るのではなく、効率良く山を越える道なのだ。
だから、展望台に向かう道は熊野古道からわずかながら逸れて進んでいる。

大きい岩を切り取った切り通し



標高150m程と言われる女鬼峠だが、展望台と言うくらいだからきっと景色はいいモノなのだろう。宮川の清流や遠くには大台ヶ原の山並みなんかを望みながら心地よい風を感じらるだろ。なんて勝手な想像を膨らませながら、茶屋跡から5分程度で着く展望台を目指して歩いた。

女鬼峠に入ってからすれ違う人はいない。
この熊野古道を歩くにあたり、僕みたいに歩いている人は居るのか疑問だった。
もちろん、伊勢から玉城、そして多気町を歩く途中では多くの人を見かけた。ただ、そのどれも熊野古道を歩いている人には見えない。ま。人が居るから頑張る!とか人が居ないとつまんない。。とかではないが、同じ考えの。同じ思いの人が居ることをどこかで知りたかったのだ。

静かな山道を進むと、展望台らしき所に出た。展望台といっても、看板と二人掛けのベンチがあるくらいの小さな空間だった。
だが、お世辞にも素晴らしい景観だとは程遠い景色が広がっていた。

眼下に広がる景色


おそらく長い年月の間に山の木々が成長して、人の視界を遮るほどになっていたのだろう。
眼下に広がる木々の隙間から宮川の光る水面をなんとか探りながら背負ったリュックを下ろして一息ついた。
ちょうど目の前にはこれから進む下り坂が延びている。リュックから暖かいコーヒーの入った水筒を弄っていると、下から一人の男性が登ってきた。
簡単なカメラを片手に景色を振り返りながら登ってきた男性は、60代前後で僕より年上にみえた。
向こうも僕がいること気がついたのか、大きめの独り言を発しながら僕の出方を待っている様なので、勇気を出して軽めの挨拶をした。

口火を切った僕の挨拶で、二人の緊張はほぐれて色々な話をさせてもらった。

彼は僕と同じで
熊野古道伊勢路を歩いて踏破の挑戦中だとか。
熊野から伊勢に向かって歩いているとか。
初めてから3年が経ちゴール目前だとか。
熊野の海はすごく気持ちが良いとか。
熊野古道を歩くことが楽しく気持ちが良いとか。

初めてあった同志のおかげで、展望台から観る景色は素晴らしく気持ちのいいものに変わっていった。

鈴木牧之の俳句


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