説明会は免罪符ではない - 外苑再開発
先日、地元住民および地域に勤めている人を対象にした「法令に基づかない」説明会が開かれたので、せっかくなので聞きに行きました。
配布された資料にはすべてのページに「撮影・無断転載禁止」と書かれているので、これをお見せすることはできないのですが、およその内容としては以下のサイトで公開されているものだと考えて良さそうです。
神宮外苑まちづくり
※このサイトも文字のコピペが出来なくしてあったり、神経質な注意書きが目立ちますね。
説明会は、決まった人しか入れないこともあり用意された椅子の４割くらいしか埋まっていない感じでした。説明会は「説明をする」のであって、あくまで主催者が言いたいことを言って、その言ったことに対して質疑応答をするものなのですが、この手の集まりではだいたいそうなるのですが、意見や要望を出してみたり、個人的な感情をアラワにしたり、ただ糾弾するような方も多く、かなりの時間をとってあったにも関わらず、あまり中身があるとは言えませんでした。
「だれのための説明会か」東京・神宮外苑再開発で事業者が住民に説明も出席対象者を限定
神宮外苑地区 よくある質問と回答
主催者側も「説明すればよい」感が漏れ伝わってきていて、法律や規則でもとめられていることをこなすことを目的としていて、あまり丁寧な説明をしたとは思えません（そもそも法令に基づかない説明会なんて、あんまりな説明ですし、明らかに行政からの要請が見え隠れします）。当然ではあるのですが、事業者が知り得る出来る範囲の限った説明になりますし、範囲を超えた必要のない情報を出すことはありません。その割には使った資料に微妙な省略や誤解を招く表現が混在しており、数字のマジックも見る人が見ればわかってしまうのに、こういうことをするから後から突っ込まれないように、クローズにしたがるのかもとは感じました。
だいたい、どうしてこんなに騒がれなくてはいけないのかは主催者としても腑に落ちないところもあるのかもしれませんが、そもそもとしては国立競技場の建て替えがかなり強引に進められ、周囲の住人はその経緯と結果にかなりの不満を持っているのが大きく関係しているのだと思います。国立競技場のある地域を始め、外苑地区の再開発の範囲に含まれない部分に関しては、事業者は他所の話として完全スルーを貫いていますが、これがかえって混乱を招いています。
いくつかの施設が老朽化し建て替えが必要だというのが再開発の大きな理由であることは説明されていますが、この理由で高層ビルが建てられることの説明にはなりません。また再開発で消滅する施設も数多くあるのですが、どうして無くなってしまうのか、その理由も説明されてません。残るものと残らないものの線引はどこにあったのでしょうか。
今回の再開発がややこしく見えるのは、単に私企業が自分の所有物を利用するだけであればともかく、もっとも大きな影響のある組織が宗教法人であり、さらに特殊法人も関わっていることが原因でもあり、公の立場が中途半端に出てくるのが問題になっているのではないでしょうか。宗教法人の経営情報はあまり丁寧に公表されているものはないのですが、それがキッカケであるのであれば、もう少し主幹するお役所も説明責任を果たす必要がありそうです。
わかっている計画だけを見ると、地域住民にとって再開発は百害あって一利なしとまでは言いませんが、地域サービスが向上するものではありません。むしろより多くの投資を行っていただいて、地域の利便性が良くなる施策があれば良いのですが、かえって低下する恐れのほうが目立ちます。
現状で説明がなく気になることとしては、例えば以下のような点があります。
工事期間中の騒音、振動、工事車両の出入り、交通規制についての問い合わせ先が不明です。個別の工事の担当者に問い合わせるのは、どこがどこになるのか、その判断が難しいです。統一した窓口を用意して欲しいです。
工事期間中に災害が発生した場合の対応が、どこにも書かれていません。該当地区は地域の一時避難場所として使われているのですが、どの時期にどこへなら避難できるかわかりません（オリンピック期間中はあっさりとと避難先が無くなっていました）。
工事期間中に中止となる、もしくは開催できるイベントについて何も明らかにされていない。
もう木を何本切るのかはどうでも良いです。数字あそびをしているようにしか見えなくなっていますし、肝心なのは維持管理する体制が整っているのかです。その意味でこれを機に外苑全体の表舞台に立つ組織を整備して、そこを中心にもっとオープンに地域の宣伝を行ったり、要望を受け付けるようにできれば明るい未来が広がるのではないでしょうか。
基本的には既に計画が決まっている部分は、それで認可を取っている以上、変更する可能性はないとのことですが、正直に言って、少し脇の甘いところも散見されるので、腕の良い弁護士か政治の力を使えば、ほんの少しは何かが出来る可能性はあるかもしれません。ただ外苑は再開発地域ではない部分もあるので、それらを含めて全体としてより安全で便利な魅力的な街になるように、関係各位が問題を押し付け合うのではなく、協力して取り組めるようになって欲しいと切に願います。
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