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PCGとAPPLE][スーパーテキスト

APPLE][を除く初期のパソコンはグラフィックのためのハードウェアを持たず、その代わり多彩な図形文字としてのフォントセットを持っていて、それを使ってグラフ表示などができるようにはなっていました。

例えばPC-8001の160✕100というグラフィックは80文字✕25行のテキスト表示に対して横2✕縦4に分割した図形文字をたくさん用意して、表示したいグラフに合わせたパターンを持つ文字コードを選んで表示していたわけです。これはグラフィック用のVRAMといったハードウェアを必要とせず、あくまで文字なので表示も高速に行えるというメリットがあり、当時のハードウェアの能力を考えると極めてリーズナブルな解決ではありました。

確かにテキスト画面のコストでグラフィックを扱えるのは便利なのですが、それでも文字フォントが8✕8であれば、本当は640✕200の解像度はあるはずです。ゲームの画面として考えると図形文字を使った画面は少し物足りないところもあります。

キャラクタ (コンピュータ) - PCG

それならばフォントデータをRAMに格納して自由な図形を定義できれば、多少の制限はありますが、より自由な画面を作ることが出来るはずです。そう考えてPCG(プログラマブル・キャラクタ・ジェネレータ)というハードウェアを作ってしまったのが、ハル研究所です。

ハル研究所

懐パソカタログ HAL研究所 PCG8000, PCG8100, PCG6500

ハル研に関しては、ご存知の方はご存知だとは思うのですが、池袋のパソコンショップに集まっていたマニア集団が始まりで、ファミコンの立役者である岩田聡さんが活躍されていた会社です。製品としてはゲームの方がメインだったような気もするのですが、このPCGを使うことでゲームセンターにあるゲームに引けを取らない見た目のゲームが出来るということで、かなりの人気となりました。

このPCGという考え方は、その後のホームパソコンにも大きな影響を与え、スプライト機能と共にゲームのキャラクター表示の基本として一般的なものとなりました。

マイコン向けハードでも有名なソフトハウス「ハル研究所」と、海の向こうの名作ゲームを発売した「コンプティーク」

私は当時、もっぱら秋葉原か渋谷に通っていたのですが、もし池袋まで足を伸ばしていれば出会いがあったかもと思うと今でもちょっとドキドキします(当時からアップルは独自路線が強くてコミニュティーも交わっていなかったのですけど)。


さて、最初からグラフィック機能を持っていたAPPLE][に関しては、PCGの必要性もなく無縁な存在だったのですが、グラフィックモードにすると基本的にはテキストは表示できません。APPLE][はローレゾ、ハイレゾともに下4行だけはテキストが表示できるミックスモードというのが存在しましたが、テキストはテキスト、グラフィックはグラフィックで、グラフィック画面の中にテキストを重ね合わせて表示するスーパーインポーズ機能は持っていませんでした。

ゲーム画面においてプレイヤー名であるとか、スコアなどテキストが必要となる場合にはミックスモードを使い下4行に表示することでお茶を濁していましたが、他機種のゲームを移植するときなどはデザインを変えると雰囲気が台無しになるので、頑張って独自フォントで描画するサブルーチンを一生懸命書くなんていう状態でした。この目的にはベクトルデータで文字を書くドローサブルーチンが愛用されていました。

そんな時代に(APPLE][ユーザ限定ですけど)革命を起こしたのが、月刊アスキー1980年3月号に記載されたGAME/APPLEのライブラリであるSUPER TEXTです。

  • 256種類のフォントをユーザが自由に定義できる。

  • ハイレゾ画面に対してPRINT文だけで定義した文字を表示できる

  • 表示だけではなくスクロール、それも部分スクロールも可能

  • プログラムの編集画面でも利用可

という優れもので、GAME言語からだけではなくBASICから使うことも出来ました。これはAPPLE][のBIOSにある1文字出力ルーチン(COUTフック)を上手に使ったもので(DOSもここを使っているので干渉は少し苦しみましたが)、リバースモードが無かったりカーソルが点滅しなかったりの違いはありますが、テキストでAという文字を表示する手軽さで好きなキャラクターが表示できるという手軽さがあります。また特定の文字コードを出力することでカーソル位置を変えることも出来、PETなどで使われていた技法をそのまま持ち込むことも容易になりました、

これでJ-PLUSにしなくてもカタカナが使えるようになるだけでなく、英語の小文字はもちろん、少し読みやすさには苦しいところもありましたが、ひらがなも使えるようになりました。もちろんテキストに比べればパフォーマンスは落ちますし、スクロールは決してスムーズとはいえませんが、元々APPLE][のグラフィックはそれなりに高速で、通常のグラフィック命令と混在できるので、いろいろなフォントデータを使うことで表現力は格段にアップしました。フォントエディタも付いていましたが、いろいろなフォントが流通していた覚えがあります。

とても便利でしたし、なかなかよく出来た設計だなぁとは思っていたのですが、この手法と殆ど同じような考え方がその後のDOS/Vにおける日本語化で使われることになろうとは想像もしていませんでした。また制御コードで文字セット、文字の位置、文字の修飾を行う方法は端末を使うようになった時に、ああいつか来た道だなと思い出すこととなりました。

そしてここからフォントというものとのお付き合いも始まったわけです。

ヘッダ画像は、月刊アスキー1980年3月号の表紙。少しヨタっています。

#PCG #SUPERTEXT #PET #APPLE2 #フォント #キャラクター #ハル研究所  

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