[小説 23時14分大宮発桜木町行(3)]桜舞う道で
乱暴に座席に腰掛けると、緊張感がようやく抜けた気がした。
これほど大荷物で移動しているのだからと躊躇なく大宮発を選んだ俺を、恥ずかしげもなく褒めてやろうと思う。親の手を離れてしまってからは、褒めてもらえる機会などほぼ皆無なのだから。
最終日。昨晩の送別会の余韻を微塵も感じさせない同僚たち。あっさりとしたものだ。まるで昨日までの外回りに出掛けるかのように、別れを告げた。
支社の入るビルを立ちすくんで見つめていた。タクシーの窓から離れていく、俺の居場所。泣きはしない