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小説 23時14分大宮発桜木町行

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各駅停車が好き。一人も置いてきぼりにせず乗せていくから…… 乗り合わせた見知らぬ誰かの人生が、音を立ててゆっくり動き出す。 そんな風景を描いた短編小説を、JR京浜東北線のとある駅… もっと読む
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記事一覧

[小説 23時14分大宮発桜木町行(終)]わたしの引き際

 「ママ、忙しいのにごめんね。今日が最終日だね。そう、今向かってるの…」  隆治からの着…

Kazuyoshi Hara
3か月前
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[小説 23時14分大宮発桜木町行(8)]Everything will be alright

 「えぇ勿論です。今後とも引き続き…」  第二期のシステム移行も我が社が引き続き請け負う…

Kazuyoshi Hara
3か月前
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[小説 23時14分大宮発桜木町行(7)]パステルタッチの愛情

 定時を終え駅へと走る。この街はビル風が強過ぎる。爽快に中生を立ち飲みする気楽な先輩方を…

Kazuyoshi Hara
4か月前
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[小説 23時14分大宮発桜木町行(6)]カメレオン・ライフ

 「久し振りだな…」  ソフトに刈り上げたツーブロックの黒髪とネクタイ姿でこの駅に降り立…

Kazuyoshi Hara
4か月前
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[小説 23時14分大宮発桜木町行(5)]パンチボレーを決める瞬間(とき)

 地下道で手を振る僕の心は、少しだけれど曇りが取れていた。  改札の奥へ駆けていく、蛍光…

Kazuyoshi Hara
4か月前
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[小説 23時14分大宮発桜木町行(4)]スポットライトを浴びるまでは

 これまで体験したことのない充実感と奇妙な高揚感に全身満ちていた。商店街で買った牛肉コロ…

Kazuyoshi Hara
4か月前
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[小説 23時14分大宮発桜木町行(3)]桜舞う道で

 乱暴に座席に腰掛けると、緊張感がようやく抜けた気がした。  これほど大荷物で移動しているのだからと躊躇なく大宮発を選んだ俺を、恥ずかしげもなく褒めてやろうと思う。親の手を離れてしまってからは、褒めてもらえる機会などほぼ皆無なのだから。  最終日。昨晩の送別会の余韻を微塵も感じさせない同僚たち。あっさりとしたものだ。まるで昨日までの外回りに出掛けるかのように、別れを告げた。  支社の入るビルを立ちすくんで見つめていた。タクシーの窓から離れていく、俺の居場所。泣きはしない

[小説 23時14分大宮発桜木町行(2)]牛に願いを

 やり切った。ビルを出た時まではそう思えた筈なのに、丸の内地下中央口までの地下街に入る頃…

Kazuyoshi Hara
5か月前
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[小説 23時14分大宮発桜木町行(1)]僕の進む未来

 「…痛ってっ…」  殴られた。新橋駅のコンコース。肩がぶつかったと気付いた瞬間。週末で…

Kazuyoshi Hara
5か月前
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