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「飲まないなんて、ズルい」とは?

以前は毎日お酒を飲んでいて、自分ではそれが楽しくて好きなのだと思っていました。
それについて初めて微かな疑念がよぎったのは、ある飲み会のときでした。

仲間内で飲み会がありました。
そのときなぜか、普段は人一倍たくさん飲む彼が、一杯目からウーロン茶を頼みました。
「どうしたの?」
みんなびっくりして聞くくらい、本当に飲む人なはずなのですが。
「明日の朝に大事な用があってね」
そう言って、涼しい顔でウーロン茶で乾杯をする彼。
(飲まないのに参加して楽しいのだろうか?)
そう思ったのですが、せっかく参加してくれているので、余計なことは言わないでおきました。

さて、会が進んでも彼は特段飲みたがる様子もなく、いつもと同じようにテンション高く、元気にふざけて話します。
わたしはそれを横目で見ながら、次第にモヤモヤした気持ちになりました。

(みんな酔っているけど、1人だけシラフなんだよな)
それを意識すると、彼が、酔ってアホになったであろう他のメンバーを、まるで馬鹿にしたように相手をするのを見て、どんどん不快になって行くのです。
(なんかコイツ卑怯で嫌いだわ)
ついにはそんな感情まで芽生えてしまいます。
自分の考えの方が間違っていると、頭ではわかっているのです。
なぜなら彼は、いつもと全く変わらず振舞っているだけだからです。
お酒を飲んでいないから酔っていないという違いはあります。
しかし、ただそれだけで「彼が普段酔ったふりをしていたのではないか?」
とか、「何だったら大ウソつきなのではないか?」
なんて考えてしまうのです。

どうしてこんなに彼に腹がたつのだろう?
ひょっとして、飲まないのがズルい、と思っているのだろうか?
それは、飲まない状態の方が良い、ということでは無いのか?
つまり、本当は自分が飲みたくないのではないか?

そう思い当たったところでしたが、まさかね、と酔った頭ではそれ以上は深く考えませんでした。
酔っていると、いつも脳にモヤがかかります。
当時はそんなことに気付けてはいませんでしたけど。

しかしあれは、お酒についてしっかり考える萌芽でした。
今は全くお酒を飲みたくなくなりました。
その点では彼にお礼を言いたいところです。
お互い翌日に大事な日が控えていても、問題なく会って話ができるのでしょうね。

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