本日の羽尾先生は上手くいっていない。
何が・・・？
残念ながら何もかも、である。

①目覚ましが鳴らずに寝坊
②急いでシャツに袖を通した瞬間に破ける
③自転車がパンクしている
④僅かに遅刻して出勤
⑤普段はまだ来ていないはずの院長がいる
⑥注射針を誤って自分の指に刺して出血

こんなときに羽尾先生は動物に癒しを求める。
入院やペットホテルで預かり中の犬や猫を撫でるのだ。
まるで自前のペットセラピーのようだと、この時はシンプルに、この仕事をしていて良かったと安堵する。
ちょうど今は、快方に向かっているとても可愛い猫が入院しているので、その子を撫でることにした。
「よしよし、いい子だね・・・」
その猫はクンクンと羽尾先生の指の匂いを嗅いでいる。
その指は先程怪我をしたので絆創膏を巻いている。
が、猫の鼻には明確に血の匂いがしたのだろう。

ガブリ！

⑦猫はおもむろに、その指を噛んだ。
羽尾先生は思い出した。
猫が肉食動物だということを。
ダメな時は何をしてもダメだって本当だな、誰がいったんだったっけ？
自分の指の治療をしながら、ぼんやりとそんな事を考えた。

#猫のいるしあわせ