見出し画像

40歳以上の卵子凍結について思う事

先日ネット記事で、あるクリニックの卵子凍結患者の7割が40歳以上であるという記事を見かけました。(現在は卵子凍結患者の多くが40歳以上という表現に変わっていますが…)

今まで40歳以上の方からの卵子凍結に関するご相談やご質問を受けていたこともあり、40歳以上でも卵子凍結を考えている人が一定数いることは知っていましたが、卵子凍結実施者の7割以上が40代という事に、驚きが隠せないのが本音です。

この記事では40歳以上の卵子凍結について考えていきたいと思います。
後半は、個人的な見解も踏まえての内容になるため有料記事となります。

卵子凍結の推奨年齢と各学会の見解

日本産婦人科学会の見解

日本産婦人科学会は卵子凍結に関して、慎重な態度を示し、東京都の卵子凍結助成に関しては、以下のように申し入れています。

1. あくまでも当事者の選択に委ねられる事項である。
2. 推奨しない。

https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20230508_rinri.pdf

日本生殖医学会の見解

日本生殖医学会は2018年に以下の声明を出しています。
・凍結・保存の対象者は成人した女性で、未受精卵子等の採取時の年齢は、36歳未満が望ましい

再度2023年12月に上記のガイドラインを遵守するように文章が出ています
http://www.jsrm.or.jp/announce/287.pdf

2013年のガイドラインには以下のように記されています
未受精卵子等の採取時の年齢は、40歳以上は推奨できない。また凍結保存した未受精卵子等の使用時の年齢は、45歳以上は推奨できない。
http://www.jsrm.or.jp/guideline-statem/guideline_2013_01.html

クリニック等のHPではこの2013年の声明を引用しているものが多くみられますが、基本的には卵子凍結実施年齢は36歳未満が望ましいと考えておくのがいいかと思います。

36歳以上で卵子凍結をする場合は、メリット・デメリット、費用対効果をしっかりと考えたうえで判断する必要が出てきます。

卵子凍結を考えた場合の必要凍結個数は?

海外の報告になりますが、卵子凍結の個数予測によく使われる一覧がこちらです。

34歳までであれば20個、37歳までであれば30個の卵子があれば、9割近い人が子供を授かることが出来ると言われています。

しかし40歳になると、30個凍結しても65%の人しか子供を授かることは出来ません。さらに42歳になるとその割合は半分以下になります。

個々の卵巣の状態にもよりますが、42歳で30個の成熟卵を得るためには、2回~3回の採卵、人によっては4回、5回と採卵が必要になる場合もあります。費用も100万以上かかる人も少なくないでしょう。

そこまでしても、妊娠・出産に至る割合は半分ほどです。

「卵子凍結実施者の7割が40歳以上」

細かな年齢分布はわかりませんが、果たして何歳の人が何個保管しているのか、その保管個数の可能性をきちんと理解しているのかは気になるところです。
(このあたりの話は後半の有料部分で掘り下げていきます)

妊娠・出産のライフプランはどうなっている?

基本的には凍結した未受精卵は45歳までに使用することが推奨されています。そのため、クリニックによっては、45歳までと移植の年齢制限を設けているところもあります。また45歳以上で移植が可能なクリニックでも、多くは移植年齢を50歳未満にしています。

40代で卵子凍結をした場合、妊娠・出産のライフプランはどうなっているのでしょうか?日本の場合、未受精卵を使用するには、基本的には事実婚もしくは法律婚のパートナーが必要になります。

そのため、卵子凍結と同時並行で婚活を行う必要があります。そして子供を持つことに理解を示してくれるパートナーを見つけなければなりません。

厳しいようですが、正直40代で卵子凍結をしても時間的余裕はまったくないと思っておいた方がいいです。

これから婚活をする、まだ婚活は考えていない…という状況であれば、本当に時間とお金を費やして卵子凍結をするのかどうか、今一度考える必要があります。

そして何より、高齢妊娠のリスクを充分に理解しておく必要があります。40歳以上の卵子凍結を勧めているクリニックは、このリスクをきちんと伝えているのか正直疑問に感じます。

特にNICUを併設した周産期センターが近くにないような地域の場合は、出産する場所も含めて考えて、卵子凍結をするかしないか考えなければいけません。

ここまでのまとめ

既にパートナーもいる、1年程度の期限付きなどの条件があれば別ですが、個人的には40歳以上の卵子凍結は、費用対効果、高齢出産のリスクも踏まえてお勧めしません。

卵子凍結が保険やお守りになると言えるのは、あくまでも36歳までだと考えています。

それでも、40代で卵子を凍結しておきたいというのであれば、費やした費用はなかったものと思える性格、凍結しておいた卵子で妊娠出来なければ、スッキリと妊娠をあきらめなれるぐらいの割り切りが必要かと思います。

ここからは、個人的な見解を踏まえてもう少し踏み込んで考えていきたいと思います。

*ここから先の内容に関しては、引用、リライトを含め転載をお断りいたします。
無料部分に関しても、無断転載やリライトはご遠慮ください。引用に関しては、記事リンクを必ず記載ください

この先の内容
・40歳以上に卵子凍結を勧める闇
・凍結した卵子で妊娠出来なかった場合
・卵子凍結は収入源?
・東京都の卵子凍結助成金について思う事
などについて書いています

ここから先は

4,807字 / 1画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?