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楽天グループの決算を読み解く

こんにちは。各企業の決算が発表されてから、少し時間が経ってしまいましたが、2/14に発表された『楽天グループ』の2023年12月期の連結決算がファイナンスの視点でとても勉強になりそうだったので、アウトプットしたいと思います。

2023年12月期の連結決算

楽天グループの2023年12月期の連結決算(国際会計基準)は以下のとおりで、5期連続の赤字となりました。

売上収益:2兆713億円(前期比 +7.8%)
営業損益:▲2128億円(前期は▲3716億円)
最終損益:▲3394億円(前期は▲3772億円)

楽天グループ2023年12月期 決算短信より引用

モバイル事業が足を引っ張り、最終赤字が続いている一方で、売上収益は創業以来27期連続の増収でついに2兆円を突破しました。
赤字ばかりが目立って報道されていますが、ずっと確実に増収し続けるビジネスモデルを築いているのは凄いと感じます。

前期と比べて赤字幅は縮小したものの、モバイル事業の設備投資が引き続き重荷となり5年連続の最終赤字となっており、株式を店頭登録した2000年12月期以来、23年ぶりに無配当となりました。

モバイル事業の黒字化への道のり

モバイル事業は前年と比べて赤字幅が減ってきているものの、楽天が黒字化のために必要とする『契約会員数が800万~1000万』『ARPUが2500~3000円』には届いておりません。
特に上記のうちARPUについてはこれまで順調に伸びてきたのが、今回「1986円」(前期比 -60円)となり、下がったことが気になりました。
※ARPUとは一人あたりの平均利用金額のこと

主な理由は、法人向け携帯が増えたことによる影響とのことで、たしかに会社携帯でYoutubeを視聴したりしないと思うので、その影響はあるのかなと思いました。
ただ、目標数値に向けた施策はまだ具体的なものは見えてきていません。
例えば、楽天ポイントを中心とした楽天Gの様々なサービスとのシナジーを出す等、今後ARPUを上げていく施策を具体化していく必要があると感じます。

財務視点でみた楽天グループ

投資家が最も気になる楽天の財務情報ですが、『自己資本比率の推移』『リファイナンスリスク』『フリーキャッシュフローの改善』の3つの視点で着目しました。

自己資本比率の推移

モバイル事業で続く赤字は楽天G全体のバランスシートを悪化させており、これまでに積み上げてきた利益剰余金を減少させ、自己資本比率が3.7%にまで低下しています。
これは楽天Gが目標とする自己資本比率9%を大きく下回っています。(2015年時点では15.6%)
ただし、自己資本比率が下がったからすぐに問題というわけではなく、あくまでもキャッシュが調達できるかがポイントとなります。

リファイナンスリスクの解消

楽天はモバイル事業に必要な巨大な設備投資をしていますが、その資金源として社債の発行で補ってきました。
社債発行で調達した資金は返済が必要となるため、その償還が今後24年と25年で約8000億円必要と言われています。

楽天の発表では、このうち24年の約3200億円については調達の目途が立ったとしており、リファイナンスのリスクは無いと言い切っています。
ただ、今後25年には約4000億円の個人向け社債の償還期限を迎えるため、引き続きリファイナンスリスクに対応していく形となります。

フリーキャッシュフローの改善

楽天の財務が本当に大丈夫かはキャッシュフローに注目する必要があります。

22年12月期のフリーキャッシュフローは−1兆2103億円
(営業CFが−2579億円、投資CFが−9524億円でどちらもマイナス)

23年12月期のフリーキャッシュフローは+1268億円
(営業CFが7242億円、投資CFが-5974億円)

22年は営業CFと投資CFがどちらもマイナスとなっており、莫大な投資を本業で回収できていない状態となっていましたが、
23年は営業CFが大幅に改善されており、フリーキャッシュフローがプラスになっています。
それに伴い、現預金も4000億円ほど改善しており、投資家にとってはかなりプラスとなる情報だったと思います。

今後の展望

売上収益の増収は続いており、モバイル事業の赤字幅は減ってきているので、黒字化までの時間稼ぎとして、今後の新たな調達でリファイナンスのリスクをどれだけ抑えられるかがポイントになると思います。

そして、常に強気の三木谷会長ですが、最後の手段として、収益性の高い虎の子事業である『楽天カード』『楽天市場』の上場に手をつけるということになれば財務が非常にまずい状況になっていると判断できると思います。

楽天について多くの専門家から様々な観点で予想がされていますが、自分としては『リファイナンスの状況』『今後の楽天子会社の上場』に特に着目していきたいと思います。

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