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一人前デザイナーの育て方:スキルとマインドを育む5つのポイント

私は現在、LINEヤフーコミュニケーションズ クリエイティブ部に所属し、去年の10月に新設されたOPSチームでクリエイターのスキルアップやキャリア形成の支援に取り組んでいます。私のLINEヤフーコミュニケーションズでのキャリアは、当時10数名だったデザインチームからのスタートでした。デザインチームは、私がジョインした2018年から5年間で40名以上のメンバーが所属するチームに拡大しています。

チームが急成長する中で、私は多くのデザイナーの採用や育成に関わってきました。その経験から「一人前デザイナー」になるためには、専門的な知識や技術であるテクニカルスキルを磨くだけでなく、プロジェクトやサービスの担当として任せられるマインドや人間性も育てることが重要だと学びました。
特に地方では、成熟したデザイナーを採用するのは難易度が高く、若手を中で育てていくことは重要ではありますが、組織内での決められたプロセスや方法も無く手探りで行ってきました。

そこでこの記事では、これまでの経験から感じる一人前デザイナーを育てるための5つのポイントを、参考にした事例や方法の紹介を交えながらまとめてみたいと思います。
この記事が、デザイナー育成に悩むかたの一助となれば幸いです。


その1:目標を持つこと

デザイナーとして一人前になるには、テクニカルスキルに加えて、チームやクライアントとのコミュニケーション能力や問題解決能力も必要です。
そういった様々な能力を、スキルアップする方法は多くありますが、何をやるにしてもまずは明確な目標を設定することが大切です。当たり前のことのようではありますが、良い目標設定はなかなか難しいものです。

おすすめは、下記の3点を押さえること。

  • 目標に意味を見出せること

  • 達成可能であること

  • ゴールが明確であること

中でも重要なのは、意味を見出せることです。どんなデザイナーになりたいのか、どんなキャリアを歩みたいのか、何のために目標設定するのかが曖昧なままだと、目指す意味が見出せず、目標は形骸化してしまいます。
特に、メンターやトレーナーがついて育成を行う場合は、メンティやトレーニーとの共通認識を持つために、目標設定はとても効果的です。
しかし、意味づけできたからといって、ゴールが現実味のない壮大な目標だったりすると、モチベーションは持続できずに達成する確率はグンッと下がります。
そのため設定する目標は、頑張れば半年先ぐらいには達成できそうかつ、定量的な目標であることをおすすめします。
例えば「世界中のマラソンレースを制覇する」ことが最終目標であれば、まずは「半年後に10km走れるようになっている」ことを目標としてみるといった感じです。

私たちのチームでは、スキル項目を可視化したスキルマトリクスを使って「半年後に〇〇スキルを○レベルまでアップ」といった具合に、期間、ターゲット、上げ幅を明確にして目標設定できるようにしています。これにより、共通言語で共通認識を持つことが可能となり、個々の成長を具体的にサポートすることができます。スキルマトリクスの詳細については以下の記事をご覧ください。

しかし、スキルマトリクスのようなスキルの可視化は整備に時間がかかるのが難点です。そんな時にお勧めなのは「セリフメソッド」を用いてみることです。「セリフメソッド」は、上司や顧客に発言してほしい「褒めセリフ」自体を目標に設定します。また、社内からどのような褒め言葉(セリフ)が寄せられたかを評価指標とする方法としても用いられています。
セリフメソッドのいいところは、「褒めセリフ」が出たか出ないかで定量化できるところと、目線が上がることです。
例えば、上司の褒め言葉を目標にすると、上司の視点を意識するようになるので、自然と自分の視点も上がるようになります。

セリフメソッドについては、サイバーエージェントの曽山さんの動画や記事が非常に参考になります。

その2:フィードバックをもらうこと

一人前のデザイナーになるためには、他者からのフィードバックも重要な要素となります。特に上司や先輩デザイナーからの意見は恐れず、積極的に求めてみましょう。他者の価値観や視点に触れることで自分のバイアスに気づくことができます。自分だけの視点でデザインを考えると、視野が狭くなりがちです。他者の視点を取り入れることで、より多角的な視点からデザインを考えることができます。
しかし、わかってはいてもフィードバックやアドバイスをもらいに行くことに、人はどうしても抵抗を感じることはあります。
実際、若手の話を聞いていると「こんな完成度の低い状態で見せられない」「先輩に余計な仕事を増やしてしまう」「まずは自分で全部やれるようにならないといけない」等の悩みを聞きます。しかし、これは思い込みであるケースが多いと私は思います。特に先輩や上司は、今のあなたと同じように他者からのフィードバックをもらいながら様々な状況を何度も乗り越えた結果、今の立場にいるので、頼れば助けてくれるケースがほとんどなのではないでしょうか。むしろもっと頼ってもらいたいと思っているかもしれません。
フィードバックを通じて周りを巻き込むことで、チームの力を実感することもできます。一人のデザイナーだけでなく、チーム全体でデザインを考え、改善していくことが、より高品質なデザインを生み出すことに繋がります。

その3:挑戦すること

一人前のデザイナーになる道のりは、業務を通じた成長とも深く結びついています。まず、業務への挑戦と成長の関係性を理解することが重要です。経験のあることやできる範囲の仕事だけを任せても人の成長は鈍化します。自分で考え、挑戦することで真の成長が生まれるのです。

業務は、ストレッチをかけたミッションと課題をセットにして任せることで、人は新たなスキルを習得し、成長する機会を得ることができます。「できるようになってから任せる」のではなく、「任せることでできるようになる」という考え方は、自己成長の重要な要素です。
そうして実績(信用)を重ねていくことが「この人を信じて頼ってみよう」という他者からの信頼に繋がります。
信頼は、デザイナーが一人前と認識されるための重要な要素です。

信用と信頼の違い

「かわいい子には旅をさせろ」と言いますが、託してみてようやく気付くこともあるので、思い切って任せてみることも大事です。ただ、誤解しないでほしいのは、トレーナー側は丸投げしてみよう!という話では決してありません。信頼はちょっとした出来事でも失ってしまうものです。トレーナーはトレーニーが失敗しても信頼が失われないように尻拭いをしてあげることも役割です。

その4:振り返ること

人としてのマインドセットや価値観の醸成には、定期的な振り返りの実施が不可欠です。振り返りでは反省ではなく、得た経験を次にどう活かすかの内省を行います。

【内省】
内省(ないせい)とは、現実に起こった出来事を客観的に振り返り、自分自身について見つめ直す行為です。リフレクションとも呼ばれます。

プロジェクトが進行中のとき、自分の行動が全体の進行にどう影響しているかを把握するのは困難です。そのため、振り返りの時間を設け、自分が経験した事実やその時の思考や感情を内省することで、自分自身の行動がどのような意味を持っていたのかを認識し、理解することができます。
内省の中で感情を振り返ることは、自分自身の内発的動機づけを知る機会になります。「仕事自体にやりがいを感じる」「成長している実感がある」という理由で、仕事を楽しむ状態を目指すことが、一人前のデザイナーへの道のりをスムーズに進める鍵となります。また、継続的に内省を行う中で価値観が変化することもあります。自分自身の仕事やデザインに対する価値観の変化を知ることは、自己成長の一部であり、新たな視点やアイデアを生み出す源泉となります。
内省は、他者との対話形式で行うことをおすすめします。振り返った内容を他者視点で俯瞰的にみて、要素同士の関係性や抜け落ちてる観点を指摘してもらうことで、一人で振り返るよりも多角的な視点から自分自身の価値観に対する気づきを得ることができるためです。

内省の具体的な方法は、こちらの記事が参考になります。

その5:素直であること

一人前のデザイナーになるために「素直さ」は最も重要な要素です。特に、他者からのアドバイスを素直に受け入れ、それを自身の行動や考え方に反映できる姿勢は、デザイナーが一人前から「一流」へと進化するための鍵にもなります。

他者からのアドバイスは、自分一人では気づけない視点や新たな知識を得るための重要なリソースです。しかし、そのアドバイスを有効に活用できるかどうかは、自分自身の受け入れ方次第です。

アドバイスを素直に受け入れるためには、自己の価値観や思考パターンに固執せず、開放的で柔軟な姿勢を持つことが求められます。また、アドバイスを提供する側の意図や視点を理解し、自分の成長のためにどのように活用できるかを考えることも重要です。

素直さは、自己成長のための重要なマインドセットであり、一人前のデザイナーから一流のデザイナーへとステップアップするための道しるべとなります。

まとめ

一人前デザイナーを育てる5つのポイントを紹介しました。
目標を立てること、フィードバックをもらうこと、新しいことに挑戦すること、行動を振り返ること、そしてアドバイスに素直でいること。
これらは技術だけでなく、人としてデザイナーとして成長する心構えを教えてくれます。一人ひとりが成長するためのヒントとして、また、教える立場の人が計画を立てる際のアイデアとして、この記事がお役に立てれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました🙌

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