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本に人生狂わされて。

本を読んだら人生が狂った。

教科書で読んだ夏目漱石の「こころ」にはまってしまい、大学では文学部の道に進んだ。

大した研究はしていない。卒業研究は志賀直哉「范の犯罪」である。執筆というのもおこがましい卒業研究だったが、執筆当時、流行っていた「君たちはどう生きるか」をもじった副題にして、「范の犯罪」から自分自身はどう生きるのかを考えた。おこがましくはあるが、自分の中ではけっこういい卒業研究だったと思っている。周りの友達は、卒業研究、卒業論文が面倒くさいと言っていたが、私は書くのが楽しかった。そんなこと周りにいったら引かれてしまうから言わなかったが、書くことは楽しく好きだ。上手い下手は別にして。だから、たまにnoteに書いたりしている。

大学を卒業してからは文学部とは縁遠い福祉の仕事に就いたが、現場の過酷さを知り挫折。現在は本と関わる仕事をしている。といっても契約社員のようなもので、コロナの影響で来年の行く末は真っ暗闇である。それでも今の仕事をして改めて思った、私は本が好きだと。

夏目漱石の「こころ」から始まったこの狂いはどうしたものか(「こころ」全文読んだことありません。教科書の「下」の部分だけである。全部読まないと。)。まともな人生を歩んでいれば、今頃安定した企業に就職して、綺麗なお嫁さんがいたりしているはずである。しかし、現実は甘くなかった。これも本のせいだ(八つ当たり)。

しかし、どうしても私は本を読まずにはいられないみたいである。本に人生を狂わされているのにどうしてだろうか。

といっても何かの責任にしている時点で、自分のせいである。何事ももっと上手く立ち回れる方法があるはずなのに、失敗とわかってからでないと上手い立ち回りというものは見えてこない。これは結果に執着しているからではないだろうか。上手くやろう、上手くやろうと思いながら上手くいった試しがあるだろうか、いやない。もっと過程を楽しまなきゃな。

と思い、実は本になんて人生は狂わされていないのではないか。ただだだ、自分の情けなさを本にぶつけていないか。もし、そうだとすればごめんなさい、本。

正直にいえば、本に狂わされたのではなく、本が今の私を作り上げてくれた。私にとって読書とは唯一無二の行為だ。どれほど唯一無二といえば、無人島に本を持っていくくらいの唯一無二だ。これは言い過ぎであるが、これからも本を永遠にともにすることは疑いようがない。愛する人を墓まで持っていってやる、そんな気持ちである。

狂わされたのではなく、作り上げてもらったのが本という存在か。その影響か、私は真面目が周囲から売りとなっている(狂気の人とは呼ばれたことがない。)。まぁ、本性はそんなにさらしたことない人たちからの評価ではあるのだが。

この人も本に狂わされ、本に自分を作り上げてもらったのだろう。「人生を狂わす名著50」の作者、三宅香帆さんである。

「人生を狂わす名著50」を今読んでいる。全部は読めていない。それでも感想文を出す。出さなければ、何も残らない。少しだけ読んで書けてしまうのが読書感想文だ。「メロスは激怒した」という1文で書けるはずだ。いきなり激怒するとは何という短気な性格なのだろうか、短気といえば、私の祖父であるetc.。

「人生を狂わす名著50」にはわかりやすく、どういう系の本に心狂わせたいかが書かれており、そこに三宅さんの狂わされポイントみたいなものが文章で綴られている。

たとえば、私も心狂わされた「こころ」の場合、「自分って実はめっちゃワガママな人間なのでは……と思いはじめたあなたへ」という風に対象を明確にして、その後に三宅さんの文章に入る。これが50冊分である。また、読みたい本が増える。就職試験に向けて勉強しなくてはならんのに、どうしたものか。さらに、1冊の説明ごとに「この本を読んだ方におすすめする「次の本」」というコーナーがあって、さらに3冊。それも合わせれば200冊!?(計算合ってるのか?)読みたい本が増えることになる。これは年単位の闘いになる長期戦である。ゴルフの打ちっぱなしも行きたいけれど。それでも読みたい、と思えるほどのわかりやすく魅力的な三宅さんの紹介文だ。自分をバカにもできているし、本もバカにできている文章だと思う。

三宅さんは「こころ」について、「よくもまぁこんなもん教科書に載せてたな」と書きのけてしまうのはすごい、私ならびびってしまう。教科書製作委員会に。そして、人には欠けた部分があるが、「こころ」にはそれがないという。夏目漱石は「つめたくて完璧」なものを書いていると。それを文章で表現するところが恐ろしいと。みたいなことを魅力的な文章で書いていて読みたくならない訳がない。

この本にはもっともっと魅力が詰まっていますが、私が説明するよりも、それは読んだ方がわかると思います、はい。

今のところ、まずはこの本を読み切り、200冊を挑戦したいと思う。そして、私の人生はどう狂っていくのだろうか、どう新たな私が作り上がっていくのかが楽しみである。

人生を狂わす名著50(ライツ社) https://www.amazon.co.jp/dp/490904406X/ref=cm_sw_r_li_apa_fabt1_8ctUFbE8X37FA

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