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ハーバートを継ぐ者。#4

 刑事のクリストファー・スコフィールドは捜査一家の扉を開いて中に入った。白のYシャツの上から茶色の革のガンホルスターをつけている。

左側のホルスターにはポリスピストルのワルサーPPKシルバーが収められていた。

さっさとさっさと通路を歩くと机の引き出しを開けた。書類のファイルの番号を指でめくりながら目的のものを探す。

見つけた。人差し指と親指で摘んでルーズリーフとファイルをつまみ出すと「ふぅ」と一つ吐息をつくともう一度すたすたと歩いた。

黒の革靴の表面に照明の反射した光が光沢となって現れていた。木の床に、踵でコツコツと音を鳴らす。

歩くペースが速くなっている。歩幅が大きくなっていて大股で歩いているのが自分でも分かる。何故だろうか。

それは分からない。

ガラスが嵌め込まれた鉄の扉のノブを捻って勢いよく開ける。

「ガレンジー、今回の事案だ。」ぶっきらぼうにそう呟いて同期のローランド・ガレンジー刑事にファイルを投げた。

月の検挙率一位二位を争うほど優秀な刑事であるスコフィールドを唸らせるほどの検挙率を誇る敏腕刑事であるガレンジーは色白の肌に大きな目とクールな口元、天然パーマのような髪型の上に丸メガネをかけていた。

チェックのズボンに黒色のYシャツというフランクな服装の彼は机の上に組んだ脚を乗せていた。

スコフィールドが話しかけると新聞からひょっこりと顔を出す。

「ご苦労さんだな。そうだ、ゲンジーの旦那が今回も二人で当たれってよ。」低いがよく通った呂律の回る声でいった。

ゲンジーの旦那というのは一課の課長であるネルソン・ゲンジーのことである。年配のお手本のような男で突き出た腹に小柄な体格に、サスペンダーを好む男で、刑事時代はガレンジーを上回るほどの能力を振るっていたという。

老眼を理由に第一線を退いてからは管理職に就き、組織の統制を取ることと悪を撲滅することに全力を燃やしている。

別にガレンジーとゲンジーは懇意というわけではない。ただガレンジーが勝手に呼んでいるだけなのだ。

 いそいそしく働く事務の人間や他の刑事が背景に溶け込んでいる。その一線にガレンジーやスコフィールドがいた。

ガレンジーは徐に体をファイルの前に乗り出す。

右手でメガネを取りながら視線を右に右に動かしていく。彼がメガネを取る時は興味を持った時だと、スコフィールドは心得ていた。

「どうだい?」

「ほぉ〜‥‥‥名高いパブリックエネミーを逮捕したと思ったら舌の根も乾かないうちに脱獄され、おまけに要員は全滅。刑務所の外装も破壊されたと‥‥ふ〜ん‥‥」

スコフィールドは結論を待った。

ガレンジーはそれに応えるようにバンと両手で机を叩いて「ぉお面白いじゃないの。」と嬉しげにいった。

「あんたのことだからそういうと思ったよ。さあて、解決に向かおうか。」

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