銀メダルを獲得したアカツキ・ファイブのコーチから学ぶリーダーシップ
「なにやってるんですかー!!」
TOKYO2020、銀メダルを獲得した女子バスケのトム・ホーバスヘッドコーチが注目されています。流暢な日本語で指示を出している、と。そして、その言葉が熱い。
選手をリスペクトした叱咤激励
冒頭のように敬語ですが、容赦なく選手を叱咤激励する姿がちょっとした話題になっています。わたしも、テレビのニュースで取り上げられているのを見ました。タイムアウトの最中の言葉が印象に残っています。
「このバスケは、良いバスケですか…?!」
フランス戦の後半、点差が開いてリードしている際の言葉です。疲れもあり、少し油断しているような空気だったのでしょう。真剣な表情で選手に問いかけていました。
この時…「なにやってるんですかー!!」だったらどうでしょうか。
後半で疲れてきています。選手によっては、「そんなこと言ったって…」とできない理由をあげたくなるかもしれません。それに、コーチに弁解しても意味がありません。実際にプレイし、勝ちたいのは選手たちです。だから、「あなたたちは、このバスケで良いのですか?」と問い、選手自らが勝つために必要なことへ向き合わせようとしているのです。
これは、選手をリスペクトし、信頼しているからこそ出てくる言葉だと思います。
優れたリーダーは巧みに主語を使い分ける
ここで、コミュニケーションの原理原則から彼の言葉を見ていきます。
「なにやってるんですか」
「このバスケで良いですか」
どちらも、「あなた(you)」という主語が隠されています。一般的に、あなたを主語にした「youメッセージ」は命令調になりがちとされています。あるいは、責めるような状態になります。だからあまり良くない、と。ただ、コミュニケーションですからケース・バイ・ケースです。
ここでのポイントは、事実や状況をホーバスさんも選手も共有できている前提で「youメッセージ」を発していることです。
「なにやっているんですか」は良くないプレイの直後に伝えています。だから、お互いにプレイについて認識している。そして、その後に具体的にすべきことを伝えています。
「もっと強くボールを持ちなさい」
「もっと山なりのボールでシュートを打ちなさい」
シンプルに、即時のフィードバックをしています。だから効果的です。選手のインタビューを聞くと「鬼怖い」というコメントもあります。でも納得して受け入れているようです。(本当に怖いだけだったら、公のインタビューで「鬼怖い」とは言わないはずです。)
「このバスケで良いですか」も選手全員がうまくいっていないことが分かっています。そのタイミングでのタイムアウトです。こちらも事実や空気が共有されています。そして、この場合は、気持ちの問題です。だから、問いかけて自分自身に向き合うよう仕向けている。そして、最も大切なのは、ホーバスさん自身は「ジャッジ」をしていないということです。つまり、ここでは「ダメ出し」をしていないのです。
とても巧みに使い分けていると思います。例えば、褒めるときは、「私」を主語にした「Iメッセージ」になっています。
「ほんと、すごいよ、すばらしい、びっくりした」
そして、さらに
「もっと、もっと、もっと、相手をびっくりさせよう!」と主語が「私たち」つまり「Weメッセージ」になっていくのです。
チームの力を最大限に発揮させるリーダーシップ
アカツキ・ファイブの銀メダルは、選手の力です。そして、それを十分に発揮させたコーチがいました。自らはプレイするわけではないけれど、戦略を伝え、それを実行できるよう働きかけていたトム・ホーバスヘッドコーチ。
経営者やもちろん、わたし達コンサルタントもこういうリーダーシップを発揮したいものです。
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