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パルメザンチーズの魔法

温めたトマトが好きだ。

特にトマトのスープが大好きだ。

冬になると途端にトマトのスープを作りはじめる。

冷たい時は酸味があるのに、温めたとたん、口の中にジュワッと旨味が広がるのがたまらない。

ロールキャベツのトマト煮込み
トマトのクリームスープ
トマトのコンソメスープ

ああ、

どれもたまらない。

うっすらと残ったトマトの酸味すらアクセントになる。

こんなことを書いていたら、自然と唾液がでてきた。あの味を思い出して、ごくりと唾液を飲み込んだ。


トマトのスープを愛してやまないけれど、理想の味を作るのはなんと難しいことか。

ミニトマトを切ってトマトのホール缶と一緒に鍋に入れる。料理用の赤ワインに深みを期待してドバッと投入。その他にもスパイスやらハーブをちょっと足してみる。

入れれば入れるほど美味しくなる、足し算の法則を信じている。

トマトの酸味を飛ばすために、長めに煮込む。煮込めば煮込むほど美味しくなる、とは料理好きの母の言葉である。

時間をかけてコトコト煮込んだトマトのスープ。

赤い色がアクセントになって、期待をさらに高めてくれる。

乾燥パセリなんかを散らしちゃったりして、見た目も少しおしゃれに仕上げる。

さあ、とろっとしたスープをすくって、


ひとくち。



「あれ?」


あれだけ煮込んだのに。コクをだすためにワインをドバドバ入れたのに。

なにかが違う。

毎回、入れるものを微妙に変えたりしてみるけれど、理想の味にはなぜか近づかない。

意図せず残ってしまう酸味、そして深みのないコク。

それでも美味しいからスプーンは進むけれど、かけた労力に対して得られたものが少ない気がして釈然としない。

美味しいけれど。

けれど、なのだ。

もっと、深みのあるジュワッとしたコクが欲しいんだ!

いつも、ネットでレシピを見つけている。

選ぶ基準は、冷蔵庫にある食材のみを使うレシピ、一択だ。

その日は、トマトクリームスープが作れそうな食材が、たまたま冷蔵庫にあった。


ニンニク、玉ねぎ、トマト、牛乳、
バター、小麦粉、パルメザンチーズ

いつも使うような食材たちに混ざっていたのが、パルメザンチーズ。

「ふーん?」

なんて、訝しく思いつつも、レシピ通りに料理を作っていった。

野菜を刻んで、スープを煮込む。
最後にパルメザンチーズをふりかける。

パラパラとふりかけた粉は、スープにとけてすぐに見えなくなってしまった。かき混ぜたときにも、チーズのとろっとした感じはない。

深めのお皿に盛りつけて完成。

あまり期待をせずに、スプーンを口に運んだ。


「んんっ!?」

あまりに美味しいと、驚きの声がでてしまう。

今のはなんだ?


もう一口、スプーンを運んで確かめる。

次に発した声は、もちろん、

「美味しい!!」

だった。


ほんとうに不思議だ。

あれだけ探しても見つからなかったコクが、ここにある。たいして煮込んでいなければ、ワインも入れていない。

お店ででてくるようなコクが、こんな簡単に手に入ってしまうなんて。


パルメザンチーズの魔法。

ちょっと入れるだけで、味が劇的に変わるのだ。

2口で満足するはずもなく、思うがままにスプーンを運んだ。
あっと言う間に平げてしまった。

恐るべし、パルメザンチーズ。


パルメザンチーズをひとふり。
なんと簡単だろう。

とはいえ、パルメザンチーズでコクをだすのは、なんだか邪道というか負けた気がする。コトコト煮込んでコクをだすこともできるはずだ。

いつだって王道に夢を見てしまうものなんだ。

一つの正解を手に入れた。
また別の正解を手に入れるために、今日も、トマトをコトコトと煮込む。



お読みいただき、ありがとうございます。
また次の記事でお会いしましょう!

またねー!


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