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竹に雀紋 〜なごみ2022.8月号より〜

竹に雀紋は竹と雀の複合紋で、上杉家、伊達家などの定紋として非常に有名である。

基本となる竹紋は竹または笹で表現され、松竹梅の構成の一つとしても瑞祥的な意味を持つといわれている。文様としては古くから使用されており、天皇の袍(装束を構成する表着)の地紋である「桐竹鳳凰」が代表的であるが、そのほかにも有職文様として公家の装束としても数多く使われている。また、笹としては「九枚笹」「根笹」などの多くの家紋がある。

一方、雀紋はふくよかな姿を模した張雀(はりすずめ)を「福良雀(ふくらすずめ)」「雀の丸」「三羽雀」など数多くの家紋がある。

竹輪に九枚笹に雀

竹に雀紋の意匠のいわれは定かではないが、梅に鶯などにみられる情景的な要素から構成されたと考えられる。この紋は南北朝時代に藤原北家支流の公家である勧修寺家が用いた「竹輪に九枚笹に雀紋」が最初とされ、その流れであった上杉家も「竹に飛び雀」を用いたといわれている。

竹に飛び雀(上杉家)

この家紋は、多少意匠は異なるが東北の雄である伊達家の定紋(「仙台笹」)としても用いられている。室町時代、伊達稙宗(だてたねむね)とその長男の伊達晴宗の間で起きた天文の乱の発端である越後上杉家へ伊達家から養子を出す計画に際し、その返礼として越後上杉家から竹に雀紋の入った陣幕が贈られたのがきっかけといわれている。

仙台笹(伊達家)

ところで、夜咄茶事(よばなしちゃじ)の際、茶室の灯りに使われる竹檠(ちくけい)は、雀土器を載せて火を灯す。まるで森の中にあたたかく優しい光が差し込むかのような情景を醸し出してくれる。家紋であれ竹檠であれ、竹に雀という組み合わせの美は、人の心を豊かにし、そして優しくする作用があるのかもしれない。

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