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【後編】人との関わりが私とうつわを育ててくれた。陶芸家:脇山さとみさんのお話

このnoteは大阪の陶芸家、脇山さとみさんにインタビューしたお話です。
前編はこちらをご覧ください↓

ひとりでも育っている

ー「使うひとのことを考えるようになった」についてもう少し詳しくお話お聞きしたいです。

(脇)若い頃は野心もんもんで自分の好きなものばかりをつくっていたんだけど、だんだん使う人、つまりお客さんの方を向くようになってきたということかな。
私たちの仕事って、最終的に「かたち」として完成してお披露目しなくちゃいけないんだけど、これがね、ものすごくもどかしい。このもどかしさは若いころからずっとあって。
自分の好きなものをつくると偏りすぎちゃうし、かといってお客さん寄りでつくると自分の色が無くなってしまう。
どっちに重心を置くかのバランスが崩れてしまうと作風を見失っちゃうときがあるんだけど、だんだん年を重ねるごとに、自分とお客さんの気持ちを行き来できるようになってきたのかもなぁ。

ー難しい話ですね。「売れたい!」って気持ちがよぎるとお客さん寄りにつくらなくてはいけないし...。一番揺らぎそうなところですね。

(脇)そうそう。それはきっと誰にでもあると思う。仕事ってなんでもそうだけどやっぱり「食べていく」必要があるじゃない?
そうなると、やっぱり万人に好まれるものをつくって認められたい欲がでてくるよね。うつわでいうと、どうしてもシンプルで使いやすいものが好まれたりする。その葛藤は今、この瞬間でもずっとあって。

前にお客さんからこんなこと言われたことがあったの。

『あなたのうつわが手元にあったから、決してあなたを忘れてなかった。あなたのうつわで子供も育てたのよ。力があるのね、手塩に掛けられたものには』

久しぶりのお客さんだったけど、「久しぶりじゃない!」ってはっきり言われたの。「毎日会ってるわよ」って。
自分の作風に悩んでいたときでもあったので、私はこのことばを聞いてハッとした。わたしのつくったものが、知らないところでちゃんと育っている。すごいことだし、ありがたい経験させてもらっているなぁって。

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脇山さんのつくるうつわは、優しい色や手触り、かたちが特徴的だ。シンプルなものから絵が書いてあるものまで。すっと生活に入り込んで寄り添ってくれる安心感がある。


一番近くのひとを気にかける

ー脇山さんって、作品をつくるときは誰のことを考えているのですか。「使うひと」と言っても対象は広いのでなかなか想像するのは難しそうと感じます。

(脇)・・・(少し考えて、)
一番近くにいる人かなぁ。
例えば、展示会に出すときは声をかけてくれたそのお店の店主のことを一番に思ってつくる。気持ちに応えたい!という思いで、作品で返そうと全力でやっている。
その先にいるお客さんのことははじめからあまり考えないかな。
一番近くのひとに喜んでほしいと一生懸命やっているとね、自然とつながっていけるの。店主の先にいるお客さんたちと。

ーあぁ。だから脇山さんは、「おなじ」場所で「なんども」展示会をやってきたんだ..っていまはっきり分かりました。

脇山さんは、展示会のテーマをいつも自分で考えている。


"うつけ、まにまに"

"花笑み" 

"歩いていこう"


これは、お店の人が大事にしていることを脇山さんなりに感じとって生まれたことばなんだろうな。逆の立場だったら、こういうふうにタイトルを付けてもらったらとても嬉しいことだなと思った。




脇山さんの工房には作品や道具がたくさん置いてある。土や釉薬の独特な匂いも混ざって、洞窟にある秘密基地に入らせてもらったような気分でとてもたのしい。


これからのテーマは「ゆるく、たのしく」

ー脇山さんはここで「モズクレイ」という陶芸教室を一般の人向けにやっているんですよね。

(脇)そう。はじめてもう20年になるなぁ。今まで参加してくれた人は150名以上にもなる!転勤、結婚、出産、就職、留学・・・・・人生の節目に巣立っていく生徒が多いんだけど、最後、ここでつくった作品を大切そうに抱きかかえてこの場所を出ていく姿をみると嬉しい気持ちになるよね。
本当に、幸せな仕事だなぁと思います。

ー脇山さんのブログを見ていると、モズクレイでのエピソードがたくさん書いてありますよね。同時に、脇山さんの作品にも影響を与えているのかなぁと想像しましたがどうでしょうか。

(脇)そうだね、自覚はしていないけど、教室には色んな人が来て色んな話をしているからそれはあるかもしれない。
みんなと話していた内容が、思いがけずに「ピュッ」とことばで抽出されてひとつのイメージになって作品につながるってことあるもんね。
そう考えると、ものづくりって一人じゃできないのかもしれないね。

ーさいごに、これからの「テーマ」を教えてください!

(脇)「脱力」だね。奥歯を噛まない、ほどよいゆるさをテーマにしてやっていきたい。陶芸を長くやる中で、自分の生活も仕事もほどよいゆるさが心地よくなってきたからそれを作品にも表したいし、使う人にもリラックスしてほしいなって思うな。

ーうわぁ!ゆるいの大好きです。こんな感じ?

(脇)うふふ、そうそう!あとたのしく、もね!

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今回、脇山さんは突然の訪問にも関わらず、たくさんのお話をしてくれました。ずっと笑顔で楽しそうに話をしてくれたので、私も気持ちよくインタビューができましたが、かえってから過去のブログやお話を振り返るなかで脇山さんが登ってきた小さな山も見つけました。
そう考えると、いまある作品はポッと出たものではなく、山を登ったり下ったりでたどり着いたものなんだなと思うと、私が雲のうつわをみたときに感じた感動の理由が少し分かったような気がしました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


★プレゼント企画★

2回にわたってお届けしたインタビュー記事ですが、やっぱりうつわって
使ってみなければわからない!絶対にそう思うのです。
そこでなんと!今回、わたしが選んだ脇山さんの作品を1名の方にプレゼントします。このnoteをみて、何らかのリアクションをしていただいた中から独断と偏見で選ばせてもらいます。
当選者の方には、直接お届けするか郵送でお送りしますので楽しみに待っていてください!

そして、できればそのうつわを使った写真と感想を送ってほしいのです。

今回プレゼントするうつわはこちら↓

横から見るとこんな感じです。

厚みはこのくらいです。

これ、、写真じゃわかりにくいのですが実物は絵画みたいな優しい色合いでとってもきれいです。これに夏野菜とか、彩りある食材を盛るとぴったりだと思います!これからの季節にぴったりの超おすすめなお皿です。

★脇山さんワンポイントアドバイス★

うつわの使い方:
うつわを洗う時は手洗いをオススメしています。食洗器に入れるとうつわに負担がかかってしまいますのでご注意ください。
洗った後は、風通しのよいところで保管してください。土もので水分を含んでいるので密閉されたところだとカビが生えやすくなってしまいます。
乾燥もしっかりさせてくださいね。

料理の盛り方のコツ:
お料理は盛りすぎないのがコツです。うつわのサイズに対して料理の量は「ちょっと足りないかなぁ」くらいの少な目がちょうどよいのです。食べすぎ防止にもなるので、いいですよ。

〈さいごに、脇山さんのサイトを紹介します〉

脇山さんのインスタ↓

※脇山さんは通販サイトをやっていませんので、なにかありましたらインスタのDMよりお問い合わせください。価格帯は、うつわが2,000円~、オブジェが10,000円~になります。

感想もいただけるととても喜びます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

※プレゼント企画は終了いたしました。ありがとうございました。

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