言語コーチを目指すみなさんへ
「言語コーチになりたい」という方からご相談を受けることがあります。自分では何年経っても駆け出しのつもりですが、他の人から見ると古参、なんなら長老なんでしょうね。髭のばそうかしら。
というわけで今回は、これから言語コーチを目指す人たちに私が先輩ヅラしてお伝えしていることをシェアします。
まずは、感謝
まずは、ありがとうございます。自分の仕事について「なりたい」と言ってもらえるのはとてもうれしいことです。その昔、子どもの英語教室で「大きくなったら英語の先生になりたい」と言われたときもうれしかったですが、大人のみなさんの「なりたい」は格別です。数年後、早ければ数カ月後には同業の仲間になるわけですから、楽しみです。
言語を教える経験をしてみよう
「今のうちに何をしておくといいですか?」とよく聞かれます。とりあえず教える経験をしてみるといいんじゃないかと思います。未経験でいきなり言語コーチになる道もあるようですが、教えた経験があると、コーチになった後なにかと便利です。教えることを通じて、教え方や文法などの知識を整理し、いろんなタイプの学習者と出会っておいてください。私の知る限り、言語コーチングの国際的な資格をとる場合、教えた経験が受講の条件になっています。言語コーチングは教育事業です。
教えた経験を振り返ってみよう
すでに教えた経験がある人は、その経験を振り返ってみましょう。言語を教える仕事のどこが好きですか? 学習者とのやりとりの中で、どんなことが印象に残っていますか? ティーチングからコーチングに転向しようと思ったきっかけは何ですか?
この時点でワクワクしてくるようなら、とっとと次の行動に移りましょう。自分の強みをさらに強化したり、言語コーチングのトレーニングを受けたり、コーチのコミュニティに入ったり、クライアントを探したり。やることはいっぱいあります。
もし、嫌な思い出やグチが浮かんできたら、それはそれでいいのですが、一人で振り返るのはいったん止めましょう。「私にできるのは、XXぐらいしかない」のような消去法も、謙虚でいいのですが、あまり思いつめないようにしてくださいね。
「ネガティブだと、コーチになれませんか?」と聞かれることもあります。コーチにはいろんなタイプがありますし、ポジティブならいいというものでもありません。ただ、長く活躍しているコーチたちを見ると、気持ちが安定していて、おおらかで、ユーモアのある人が多いような気がします。
言語コーチを目指す人には、今の率直な気持ちを書き留めておくことをお勧めします。そして、プロによるコーチングを受けたり、仲間と一緒にコーチングを学んだりした後でそれを読み返してみてください。きっとコーチングによる変化を実感できますよ。
どんどん実践する
本や講座で学んだことは、どんどん実践します。「自分にはまだ早い」などと慎重になりすぎていると、一歩を踏み出すきっかけを失ってしまいます。せっかく新しいことに挑戦しようと決意したのですから、準備期間はほどほどに、つべこべ言わず、とにかくやってみましょう。たとえ失敗しても大丈夫。その経験は必ず糧になります。当たって砕けろです。
実際のところ、セッションの成功も失敗も、学習の成果も、コーチがどうこうできるほど単純なものではありません。学習の主役は学習者ですし、成果はいつ、どんな形で表れるかわからないのです。最悪、盛大にやらかしたとしても、きっとそれは “反面コーチ” となって学習者の学びにつながります。
それに、コーチとしては場数を踏めば踏むほど力がつきます。授業やセッションの時間、声かけやフィードバックの一つ一つが、すべてコーチの血となり肉となるのです。その意味で、私は今になって「過去の受講生、ごめん!」と反省することが多々ありますが、そこは今後の受講生にペイ・フォワードすることで許してもらおうと思っています。
そして場数を踏むなら最初のうちです。コーチングセッションは気力、体力、集中力を要するのと、経験を積むうちに掘り下げる深さや守備範囲が広がるので、だんだん1つのセッションにかかる負担が大きくなってくるのです。
どんな仕事でもそうですが、新人のうちは質より量。私もかつては毎週たくさんのセッションを抱え、さらに増やそうとさえしていましたが、”長老” の今はもうそんなことできません。もじもじ先延ばししないで、一日でも若いうちに数をこなしておいてください。
英語で情報を得る
コーチングはアメリカで、言語コーチングはヨーロッパで広く知られ、発展しています。研究、実践とも層が厚く、情報が豊富ですが、そのほとんどは英語で発信されています。これから言語コーチになる人たちは、ぜひこうした情報を直接キャッチして知識や技術をアップデートしてください。
また、言語コーチングの講座やトレーニングは英語で受けることをお勧めします。世界水準で最新の内容が学べることに加え、言語や文化の違うクラスメート、仲間ができるからです。日本語でセッションをする場合にも、日本語のコーチになる場合にも、英語で学んだことが役に立ちます。
そのうえで、欧米由来の言語コーチングを、日本の文化、日本の学習者にどうアジャストさせていくとよいか、ぜひ一緒に考えましょう。
Photo by Tobias on Unsplash
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