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「ドライブ・マイ・カー」観ました

映画「ドライブ・マイ・カー」を観ました。アカデミー賞4部門ノミネートを受け、再上映の映画館が一気に増加。おかげで近くの映画館で鑑賞でき、けっこう、人がたくさん入っていました。
この作品は世界的に高評価なんだから、きっとずば抜けて凄いに違いない、隅々まで見逃すまい…そういう意気込みの人多かったかと…はい、私はそうでした。
で、観終わってまず…うーん、そ、そんなに凄いのか??ってのが正直な感想。でもすぐに、“面白くなかったと簡単には即断できない”という強い思いが湧いてきました。慎重に扱わなくてはいけないという直感。つまり…私が面白いとすぐに思えないのは、自分の“教養と洞察力のなさ”が原因とわかるから。たとえば、“ワーニャ叔父さん”を知っているか否かで、この映画の楽しさは大分違うはず…いや、ワーニャ叔父さんを知らなくても洞察力十分なら問題ないだろうけど。うーもっと深いところが知りたいのにわからない、そんな浅い自分が悔しいと、悶々としてしまいました。
観た後、爽快!とか謎が解けた!とか納得のいく綺麗なラスト!とか…映画によくあるエンターティメント性ならではの醍醐味は乏しいです。でも綿密に計算された映像で、だから、派手な展開がなくても3時間の上映時間を長く感じない。ん-これどういう意味かなあ?と疑問に思いつつも、知らず知らずのうちに、映画の世界に入りこんでしまっている。やはり凄い作品なのです…人間の根源的な問いを、静かにただ、凝視しているような。
頻繁に登場する戯曲「ワーニャ叔父さん」の台詞…”苦しくても辛くても生きましょう”とか“仕事をするのです、仕事を”とか、どきりとします。自分を見透かされている気分。人生について、ままならないコミュニケーションについて、様々に示唆されていく。
帰宅後すぐに、YouTube解説動画でおさらいしました。とりあえず見たのは、おまけの夜もっちゃんねるシネマサロン映画業界ヒットの裏側…あーなるほど!と納得。勉強になって有難い、興味深い。識者による解説や講評って、ほんと必要なものですね。
こうやって作品内容を深く知っていくほどに、また観たいと思える。時代と場所を超えて、普遍的なテーマが力強く込められているのです。
人は人間関係に悩む。感情って一筋縄でいかず難しい。良識で制御できない、正論が通じない…心は誰とも共有できず、人は徹底的に孤独な存在。
けれども、人は共鳴することができる。共鳴の作用により何かが生まれ、それはまた人の心へと還元される。そして心を変えていく。「人の心と心の間に奇跡は起こる」(映画「恋人までの距離(ディスタンス)」より)という大好きな言葉を、今、噛み締めています。

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