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地方移住をフワっと見ずに、必要な移住者と関係人口数を定量的な目標に

東京都人口は今年の半年間、転入が19万4,395人、転出が19万9,937人で、5,542人の「転出超過」に。

7月以降も転出超過はつづいています。


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(住民基本台帳人口移動報告 2020年/総務省統計局/2020.10)

1. 東京からの転出先は地方?

NHKによれば、4月から9月までの転出者数約19万人の転出先は、半分を超える約10万人が神奈川県・埼玉県・千葉県の首都圏内。

NHK転出先

人口問題に詳しい、みずほ総合研究所の岡田豊 主任研究員は、「企業や大学でリモート化が進むなどした結果、東京一極集中に是正の動きが見られる。コロナ禍で、地方移住や郊外への転出が社会実験のように進んだが、こうした流れが定着し、人の住まい方の自由度が高まってくれば、地方創生が進む」

神奈川県・埼玉県・千葉県を地方ととらえるなら、上記の通り、地方創生は進んでいくのでしょうが違和感。。地方という括り自体がフワっとしていて雑かも。

2. 宮崎県への転入は増えている?

僕が住む宮崎県都農町の人口動態をデータで確認してみました。

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平成30年、平成31年、令和2年(11月まで)の転入数と転出数の増減。東京が転出超過になった7月から、宮崎県の転入が転出を上回る傾向にはなっておらず、特に影響を確認することはできません。かえって転出増?

都農町も同様です(これは住んでて実感値もあり)。

都農町では、今年の春にJ.FC宮崎のサッカー選手のご家族が60人以上移住するなど、自助努力による転入増加はありますが、東京からの転出との相関はなさそう?

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ちなみに、転出超過数と都内の失業者数には相関ありそうです。

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(住民基本台帳人口移動報告 2020年と労働力調査(基本集計)2020年を編集/総務省統計局/2020.9)

過去に東京へ転入した地方からの移住者が失業をきっかけに地元へ戻った、というストーリーはありそうです。

3. 地方スタートアップへの応募は増加

人口減少・高齢化・若者流出が進む地方の小さな町で働いていると、東京の転出超過のニュースがポジティブに見えがち、ただ中身を深く見れば、町にはあまり影響のないことかもしれないし、見極め力が求められますね。

Wantedlyが先日、リリースした内容によれば、宮崎県はスタートアップ雇用指数「WANTEX」の道府県別ランキングで昨年同月比1位に!弊社イツノマも紹介されました。

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地方や無名の企業が、東京や大阪などの都市圏から若手を採用、移住させていくことは昨年までと比べればチャンスは増えています(これは断言。)

将来を考えれば、地方での起業が増え、そこに集まる人たちが全国から来るのは経済的に見れば一番理想的なこと。ただし、自治体全体にとって、すぐに経済効果が上がるだけの社会人口増にまで発展するかというと、そこはケタの違う話なので、話の切り分けは必要です。

4. 関係人口を増やす

もう1つの考え方として、移住者、定住者ではなく“関係人口”を増やす戦略があります。

先日、都農町では関係人口の提唱者であり、旧知の仲である高橋博之さんをお招きし、農業生産者向けの講演、都農町長との対談を開催。

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河野町長:関係人口を増やすことは大切ですね。自分のことを中心に考えず、お互い信頼関係を築くことで消費者の皆さんの「生きる」ということを助けることができるのではないでしょうか。関係人口を増やすためには皆で助け合うことが重要になってくると思います。
高橋博之さん:関係性を構築するのは時間がかかり、難しいですが、関係は結果として生まれるものです。結婚を前提としてのお付き合いは重いですよね(笑)。お付き合いを楽しむ、結果として移住してもらうという気持ちで接して行きましょう。10年ほどかかるかもしれませんが、今後リアルに東京をでようという動きが起こるときに、都農に行こう、〇〇に行こうと思ってもらえる準備をしようという気持ちで。

5. 移住や関係人口の目標化

地方移住希望者が増えているのは実感していますが、あくまで感覚的な話ですし、属人的な感じも否めません。

ことの難しさを考えると、移住や関係人口増加を、一部の行政担当者が進めても限界はあります。

行政、民間企業、大学、医療機関をはじめ町全体として、具体的にどの層をどのぐらい移住してもらうのか、関係人口と言われるファンにはどれぐらいの経済効果を期待するのか、定量的に目標化していく必要があると思います。

以前、インバウンドの仕事をしている時にわかりやすかった目標の例ですが。。住民一人が自治体にもたらす所得が約120万円。つまり一人亡くなると120万円の歳入減。一方で、インバウンド訪問客の1回あたり消費が約15万年。住民一人減少分は、インバウンド訪問客を8人確保すれば代替できる、という計算。

少し乱暴かもしれませんが、当時、とてもわかりやすく、戦略を考えやすくなったと記憶してます。

これからの10年、人口減少の予測は統計的にある程度出るとして、減少分を補填するために、何人の移住・定住者が必要で、交流人口、関係人口はそれぞれいくらぐらいの消費を期待すれば良いのか。

都農町においては、来年から65歳以上だけ高齢者世帯を含め2000世帯にタブレットを配布し、より双方向型のホームページに切り替えるため、町の未来にとって必要な数字を、町民全体がわかりやすく共有して、一体的ある戦略づくりと推進に役立てていきたいと思います。


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