見出し画像

金曜ドラマ『不適切にもほどがある!(2024)』を観ました。

80年代に生きる中学退体育教師のオガワ(阿部サダヲ)が2024年に現れた場面が凄まじかった。
オガワがバスの一番後ろの席でタバコを吸っている(80年代のバスには灰皿が付いている)のを、乗り込んできたお客さんはまるで殺人犯でも見るような扱い。遠くからスマホで撮影する人、「受動喫煙(じゅどうきつえん)でガンになったらどうするんだ!」と言うおじいさん、そのおじいさんを止める会社員は「やめなさい、刺されますよ」などとおさめる。

タイムスリップものだと、一度何かの拍子に別の時代にとんでしまって、そのなかでなんとか困難を乗り切って、最後は元の時代に戻ってくる。そんな流れを自然に頭に浮かべてしまう。
しかし、このドラマは宮藤官九郎脚本である。そんな予定調和にはならない。
昭和の体育教師オガワは夕方にタイムスリップして昭和から令和に移動して、夕方には一度また昭和に戻ってくるものだから、毎回行ったり来たりするのか?」とか「昭和のドンデモない行いを令和で注意されるのか?」とか先が読めない心地よい状態に落ちいる。

今度は逆に、昭和の時代に現れる令和の中学生男子(坂元愛登)である。ここまで昭和の今ではありえない発言や扱いの数々(どこでもタバコを吸う教師、パワハラセクハラ発言の数々)が描かれてきてからの、「昭和が大好き」的な中学生男子の登場である。
学校での体罰や部活のシゴキに怒った母親が、この中学生男子を引っ張って学校に乗り込んでくる、この母親(吉田羊)が校長や教師にまくしたてて、しまいには「発言を録音させてもらいます」と、この時代にはまだないスマホを、机の上に置いて録音し出す。

アレコレ考えさせないですっ飛ばず展開で、「面白くて一気に観てしまった」ドラマはひさびさであった。しかもまだ1話しか観ていないのである。

なんとも驚いたのは、昭和から令和にとんで見た世界がこんなに異様だとは気が付かなかった。例えると、『洗面器で泳ぐ金魚たちの水がじょじょに熱せられていって、熱々になってもどの金魚も気が付かないみたい』なものであろうか。いつのまにやら令和の世の中は、後戻りできないくらいえらいことになっているのかもしれない。

出演は阿部サダヲ、吉田羊、河合優実、坂元愛登、仲里依紗、磯村勇斗、袴田吉彦(他書ききれない。1話にはまだ出てなかったが古田新太)。

お行儀よく、安全な範囲におさまっているようなドラマがほとんどの印象だったので、こんな正面突破するようなドラマの出現に驚いた。そして面白かった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?