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『まんがで読破 社会契約論』We Can Work It Out!~読書感想文#37

著者はルソー。自由民権運動に影響を与えた思想家とのことで、『社会契約論』なんて題名からしてちょっととっつきにくいですよね。そこで、まんがでも読まないよりはいいだろうと思い、読んでみました。要するに人間の「不平等を打破するのは社会契約である(p.2)」という主張のようです。

日本は身分制度のない平等な国だというのは半ば幻想かもしれなくて、実は「貴族政治的」だという話を『ニュースが伝えない政治と官僚』でも伝えました。

この本でも、似たようなことが書かれていました。

世襲化の弊害

為政者の確立が私有と不平等を永久化するのです
世襲化によりはじめは合法的であった権力が…次第に恣意的な権力にかわり…やがて「専制政治」という怪物が現れるのです

p.23-24

岸田文雄首相が9月13日に実施した内閣改造でも世襲が話題になりましたが、この本を読むと、洋の東西を問わず世襲はあまり続けないほうがよさそうです。

権威の源

日本の場合、天皇が現人神宣言をし、政治のトップは天皇ではなく首相です。しかし、形式的な国事行為としてであれ天皇が任命することで正当性を担保しています。

さて、ルソーは次のように言っています。

どんな人間にせよ他者に対する自然的な権威など持っておらず、また権力は力につけ加えることはできない
そして、人間と人間とのあいだには、正当なすべての権威の基本となるのは「約束」のみ

p.74

神代から続く万世一系が本当だとして、世界的に見ても稀で貴重なことと、権威は別です。
私には天皇陛下ご自身がそれを強く認識していらっしゃるように拝察するのですが、それを権威に挿げ替えようとする人たちが今後現れないとも限りません。

そして、ルソーのいう「どんな人間にせよ他者に対する自然的な権威など持っておらず」とは一言で言えば「天上天下唯我独尊」のことであり、「約束」とは、敬語でいえば「建前」に該当するものではないでしょうか。私が伝えたいと思っている敬語の考え方とも通底するように読めました。

戦争の目的

相手の領土を所有できれば貿易の幅が広がる
また所有したその土地の人々に税を課すこともできる
つまり未来のすべての利益が大幅にアップする

p.87

これを同じページで「欲深い怪物」とも表現しています。

日本は今、来るべき台湾有事に備え軍事費を増やすために増税が必要とされています。それは他国の領土を所有せんがためではありません。他国に攻め込まれないためという、正当防衛のようなものです。10月からのインボイス制度では、増税されるのは中小企業だけで消費者である自分は関係ないと思っている人がいるかもしれませんが、その増税は消費者に跳ね返るでしょう。(なかには、今まで払うべき税金を支払っていなかった中小企業が正しく払うだけで増税ですらないと考える人もいるかもしれません)

日本人は誰のためにお金を稼いでいるのか

思考が少し脇道に逸れてきました。一体そのお金はどこへ行くのでしょう。

武器を買うためにアメリカに流れ、インボイス制度が実質増税になる一方で大企業には減税になります。これは本当に台湾有事に備えているのでしょうか。それとも体のいい口実でしょうか。
国民の幸せを考えていないという点では同じかもしれませんが、なんだかもっと情けなくなってしまいました。

そういえば、旧統一協会は年間数百億円もの日本円を韓国に持ち出していたそうですが、そんなことができたのも政権与党である自民党との蜜月があったからですよね。
考えれば考えるほど情けないので、この辺りでやめましょう。

すべての人が生き残るには

ルソーは、「すべての人が生き残れる手段はひとつだけ」であるとして、以下のように述べています。

それは集合して約束を結ぶことです
主人と奴隷といった関係を結ぶのではなく全員の力を総和させるのです

p.147

この「約束」が特定のイデオロギーを各人に強要するものであっては元も子もありません。また、マキャベリはその著書『フィレンツェ史』において、「党派もなく徒党もないままで維持される分裂は有益」であるとして、「そこに党派が存在しないように配慮すべき」と言いました。国民が互いにいがみ合い分裂や分断があっては総和などあり得ませんからね。

ビートルズも言っています。

人生はとても短いから
いがみ合ったり喧嘩している暇はない

全員の力を総和させるとは、日本で言うなら「和を以て貴しとなす」ことであり、日本なりの民主主義を実践しなければならないのではないでしょうか。

それでは、また。

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