敬語を使う理由が分かる『Think Clearly』~読書感想文#21
・敬語は日本独特で、アメリカでは上司に対しても対等にモノを言う
・本音を言えないのは抑圧であり、どんな立場でもどんな場面でも自由に言いたいことが言えるのが良い環境である
そんなふうに思っている人に読んでもらいたい本です。
よりよい人生を送るための思考法
この本は、スイスの実業家ロルフ・ドペリが書いた本です。
この本には、
客観的にものごとを見ること、
感情に支配されず、かえってそれをコントロールして生きること、
自分を過信せず、しかし自分の核になるものを大事にすること、
そんな、自分の人生を幸せにするためのあれこれが書いてあります。
敬語講師をやっている立場からすると、その中で特に印象に残ったのが【本音を出しすぎない】という項目です。
本音を出しすぎない
著者は、自分の本音をまったく隠そうとしない人の例を具体的に挙げたうえで、「どんな場合も、一定の礼儀やマナーや自制心はあってしかるべき(p.107)」と述べ、それを「周囲に不快感を与えないための気づかい(同)」と言い換えています。
また、その理由としては「私たち自身、自分のことを本当にわかっているとはいえない(同)」ことを筆頭に挙げています。
他の章でも触れていますが、人は自分が思っているほど自分のことを理解していません。つい言ってしまった”本音”が、感情に支配された結果だったり、状況とそぐわないことだったりしても、後悔先に立たずです。
人とも自分とも距離を取る
筆者は「自分の感情なんて、まったく当てにならないもの(p.100)」といい、「人生のナビゲーションとしては使わないほうがいい(p.98)」と結論づけています。
一方、人とも距離を取る必要性を説明して、「バリアの厚み(p.109)」と例えています。
そういうバリアがあれば、あなたの内面も安定する。どんな境界線にも当てはまることだが、「外の世界」との区切りが明確になれば、「内側の世界」のこともはっきりと理解できるようになる。(p.111)
自信と謙虚
この本の中には謙虚という言葉が何度か出てきます。
一方、「尊厳」「ポリシー」など、自信に関する言葉も出てきます。
何か批判をされたとき、それによって自分が否定されたように感じると人は傷つきます。
しかし、批判されたことを客観的に受け入れられる人は、もっと向上できることに喜びます。
実は、自信と謙虚とは表裏一体です。
「俺様が人から批判される筋合いなどない」と思っている人や「きっとダメだ、人から何か言われるに違いない」と怯えている人は、批判されるとその内容よりも批判されたことそのものにショックを受けてしまいます。
このように卑屈と尊大が表裏一体なのです。
敬語は相手には尊敬語を使い、自分には謙譲語を使うのは卑屈な行為のように感じられるかもしれませんが、実はそうではありません。
敬語は、まさしく距離を取る言葉です。バリアとして、外をよく見、内を理解し、ご自身の人生を幸せに導いてくれる自信と謙虚さを得るために使っていただきたいと思います。
Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法
世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。