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ワレ、自分、お前

前回に引き続き、多くの人が尊敬するながた氏はんの記事の紹介から。

ながた氏はこの☟記事の中で、関西人が相手を指すときに使う『自分』は『ワレ』を丁寧に言ったものではないかと推察なさっています。

ワレ ⇨ 自分 ?

私も方言には詳しくないので正誤は分かりませんが、「ワレ」と「自分」のどちらが丁寧かと言われれば「自分」で間違いないでしょう。

ただ、相手のことを「自分」という人は、自分のことを「僕」「俺」「私」などと言いますが、「ワレ」という人は自分のことを「ワシ」「ワッシ」などと言います。

もちろん、その筋の人が好んで使う傾向もあるのかもしれませんが、もしかすると(勝手な推測ですが)、通常の関西弁では迫力が足りないと考えた映画業界が、荒い方言を選んで映画で使っただけ、なんて言う可能性はないでしょうか。

※「ワレ」「自分」のどちらも、聞き手を指すときの標準語としては「あなた」です。ただし実際の話し言葉としては、「●●さん」や「失礼ですが」などを使うことが多いでしょう。

お前 > 自分 ?

ながた氏はんの記事の少し前、デザイン思考と本質追及を楽しもう♫さまが「自分」について書いていました。

二人称で用いる方言として、”自分”という言い回し/用法があります。当方はこれが「嫌い」です。”お前”と言われるよりも気分を害します⤵

これは、もしかすると関東人と関西人が出会うところではよくあることなのではないか。そんなふうに私は気になったのです。

では敬語の考え方に照らして、どちらがより失礼でしょうか。

それは、デザイン思考さまが感じているとおり、「自分」です。

敬語は距離を取る

敬語では、距離が遠ければ遠いほど、敬度(=敬意の度合い)が高くなります。

自分と相手との関係を言葉の上で表したときに、「自分」は文字どおり自分と重なっています。これでは距離ゼロです。
一方、「お前」は自分の前に相手がいるわけです。少なくとも距離はゼロではありません。その分、敬意があるわけです。
(「あなた(貴方)」ならもっと距離は遠くなり、敬度も高くなります)

では逆にいえば、関西人は失礼な言葉に鈍感ということになるのでしょうか。

もちろんそんなことはありません。

きっと関西人が「お前」と言われたら、”冷たい”、”よそよそしい”と感じるのではないでしょうか。

要するに、基本の距離感が違うのです。

「雨が降ってきたから、洗濯物を取り込んであげた」
と言って勝手に人の家に入る

まだ、買い物に出掛けるときにカギを掛ける習慣がなかった昔の話です。
そんな昔でも、このようなことは、関東では考えられませんが、関西なら「ありそう!」と思うのではないでしょうか。

これを、”温かい”、”親切”、”好っきゃ”と思うか、”図々しい”、”失礼”、”嫌い”と思うかの違いでしょう。

適切な言葉は、適切な距離が違えば変わる

言葉づかいを考えるときに、いつも最上級の敬語を使えばよいかと言えば、全くそんなことはありません。

同様に、「自分」と「お前」のどちらを使うべきかは、文化背景によるのです。(デザイン思考さまも、下記のように書いています)

 しかし地元では「親しみを込めた言い方」と受け止める/使う人が少なくありません。『こんな二人称は撲滅すべき』と言い出す人がいますでしょうか?

郷に入っては郷に従えと言います。
どちらが間違い、どちらが正しい、という話ではなく、違う文化に入っていくなら、周囲の文化を尊重するのがいいのではないでしょうか。
また周囲も、受容できる範囲であれば、違いを受け入れてはいかがでしょうか。

それではまた。

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P.S.実は、今回取り上げたデザイン思考と本質追及を楽しもう♫さまの記事には、もう一つ気になるポイントがあります。
それについては、また次週。



世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。