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【社会】オフピーク社会を提唱する

長年、コールセンターのマネジメントの仕事をしています。
コールセンターの運営時間もいろいろですが、多くのユーザが電話をかけることの多いBtoC窓口は、土日や夜もあいていることが多いですよね。
あらゆる窓口が平日の9時から6時だったら、「いつ電話するんだよ!」ってことになることが容易に想像されますので、夜は9時ぐらいとか、土日も開けるとか、一部は24時間とか、そういうことが多いビジネスです。

上記の「いつ電話するんだよ!」ってなる人たちはご自分が平日の9時から6時まで仕事しているんでしょう。
それ以外の時間に仕事する人がどれだけ必要なのかっていう話でもあります。
コールセンターのマネジメントは、土日や夜間に人を配置することに悩み続ける仕事でもあります。

「バイトで運営するからいいんじゃないの?」って思っている人も多いでしょうが、バイトだったら土日や夜間に仕事したがるかというとそんなこともないです。
確かに学生が入れる業務ならそれはいえますが、学生も最近は忙しいし、試験の期間に急に休まれたりするのも大変なので、コールセンターの主力ではありません。
それに土日だけ入れば務まるような単純な業務もあまりなく、週に3日か4日、20時間程度はシフトインしてもらわないとスキルや知識が維持できない仕事でもあります。

つまり、はっきり言えば「フリーター」とされるような、非正規フルタイムスタッフが主力です。
この人たちが好んで夜や土日に働きたがるかというと、特にそんなことはありません。
だって、彼らのお友達の多くは平日の日中仕事をしていて、一緒に余暇を楽しむなら、自分だって同じような勤務時間が良いに決まってます。
あるいは、お子さんが小さいようなパパママ(ママが多いですが)も、保育園が運営されている時間にしか仕事できません。
だから結局、平日日中のシフトに人気が集まるし、土日や夜のシフトを埋めるのはとても大変。

こういうことは、コンビニやスーパーなどの流通系、外食などのサービス系でも同じ悩みがあるのだろうと想像されます。
コールセンターは、きちんとしたトークと業務知識を身につけ、パソコンで対応記録をつけるITスキル(タイピング)が必要で、特にパソコンを触ったこともないような人はまず無理なので、採用活動は非常に大変なのです。
コンビニなどより楽そうでありながら、時給が高めなのはそういう理由です。

長く運営するコールセンターでは、学生バイトがフリーターになり、フリーターのまま結婚して子供をもうける、なんていうライフステージの変化がオペレータの中で起きますから、夜間や土日が平気だったオペレータが、急にそれができなくなって辞めてしまうということもしばしば。

こういう人たちを非正規、時給1,000円台で雇う構造自体は課題があるとは思いますが、それにしても、どうしてこう働きたい時間帯に偏りが生じるのか。
この問題は、待遇のそれとはちょっと違います。
だいたいコールセンターは人を集めやすいターミナル駅周辺にあるわけで、平日9時から仕事するということは、通勤ラッシュに巻き込まれること前提といっていい勤務形態。
ランチタイムは、センターに常に人がいる必要があるので時間が分散することが多いので良いですが、それでも高めで混んでる飲食店しかない状況も多いです。
そんな不合理な勤務時間への人気は常に高いです。
平日9時から6時、祝日も休みという業務だったら相当人を集めやすいんじゃない?といつも思いますが、そういう業務って少ないんですよね。
そういうセンター自体少ないし、要求する人員数も多くないので、私が以前まで仕事していたアウトソーシング企業では、そんなに美味しい案件っていうわけでもなかったのです。

なぜこうなるのかというと、ひとつは、上にも述べたような、そういう時間で働く人が多いからということがあります。
満員電車がイヤだという話と真っ向から対立しますが、恋人がいるような若者だと、勤務時間帯のズレはつらいですよね。
しかし、このことの解決策のひとつは、平日日中の勤務ということがもっともっとイレギュラー化することでもあります。

次に、保育園の運営時間。
ベビーシッターの割引券を配るとか政府が言ってますが、認可保育園に子供を通わせることができるラッキーな夫婦でも、それ自体簡単なことではありません。
送り迎えの問題もあるし、ベビーシッターを呼ぶための費用や労力もあまり現実的ではないでしょう。
でも、ベビーシッターなどが利用可能なのは確かで、色々やりようはあります。
第一、未就学児を持つ人には時短勤務を認めなければならない法律だってあります。

そんなパパママがやがて直面する「小一の壁」というものがありますが、小学生の子供を抱える家族が特に大変なんじゃないでしょうか。
小学校に行かせて、放課後は学童に行かせることで、平日日中は仕事できます。
しかしそれ以外の時間に仕事をするのは本当に大変です。
保護者会とかそういうのも、だいたい土曜日に設定されてたり。
色々考えると、最終的に障壁となるのが小学校の運営時間じゃないかと思うのです。

そこで思うのですが、小学校が平日日中の運営なのは仕方ないとして、月曜から金曜までフルに行かなければならない、ということはもう少し相対化されるべきではないかということです。
コロナ禍で、学校に行かなくてもある程度の教育は受けられることや、それが可能な環境もできてきました。
具体的には、平日学校を休んだら、その分は土日にでも録画授業やeラーニングでカバーしましょう、といった体制を作ることはもっとすべきではないかと。
土日に仕事があって平日に休みになっている親も、子供と過ごす時間を増やすことができます。
平日日中勤務の両親も、有給休暇は取れるはずなので、子供を平日休ませて、少しでもすいているディズニーリゾートに行けば良いわけです。
そういうことで学力やら教育の質を維持できるのかっていう議論は当然出るでしょう。
でも今の体制が本当に学力や教育の質の維持に貢献しているのかっていうのは、疑問とは言わないまでも、検証の余地のある話でしょう。

それができたら、保育園だって24時間化を目指すべきだし、学童保育だってそれができれば良い。
24時間というのはさすがに、深夜から明け方の時間帯の需要の少なさ(コールセンター経験からわかりましたが午前1時から4時ぐらいに活動する人は本当に少ないのは確か)から、無理しなくても良いと思いますが、朝6時から夜11時ぐらいは、たいていのサービスが提供されていいんじゃないかと思うのです。

ほとんどの人が、仕事はその中で、シフトで動くべきです。
ひとつの仕事を一人でやるということはできないし、同じチームでも勤務時間がズレて当たり前。
何でもかんでも共有して引き継ぎしてください。
メールなどのITツールの活用、データ化が鍵です。
一人の社員が仕事と情報を独占するリスクが顕在化したことは、多くの会社員が経験しているでしょう。
リスクの最大のものだと「横領」までありますから、そんな属人化を許さない体制になるべきです。

できれば、都内の企業は9時から11時の始業を禁止するとかすると、満員電車も無くなりそうなので良いですが、禁止っていう方向も色々問題が起きるのでそこまでは言いません。
大事なことは、「平日の9時-6時で勤務して残業がない」を良いことだと思ってしまう働き方のイメージを変えることです。
残業がないことはもちろん重要ですが、シフトになってたら、金曜の夕方に発生した仕事を終わらせるのに必死になるようなこともなくなりますよ。

そんなオフピーク社会への移行を求めたいものですが、声高に言っている人が全然いないので、私がここで述べることにしました。

人口減少社会の中でそんなことできるのかっていうのは、確かにありますね。
でも通勤ラッシュは相変わらずですよね。
大都市に人口が集中することに対して、地方への分散ができることも必要ですが、働く時間も(つまり、遊んだり休んだりする時間も)分散した方が良いでしょう。
というのが私の提案です。


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