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【映画】ARGYLLE/アーガイル

マシュー・ヴォーンの映画は、『キック・アス』を観たのですが、『キングスマン』などは未見。
大人気スパイ小説の中の世界と、それを書いている小説家のいる「現実」がクロスオーバーするという話です。
こういう、作者と物語世界があわせて描かれる作品というのはたくさんありますが、新井素子の『…絶句』が近い感じだなーと思いました。
あれは映像化はされてないけど(ラジオドラマになったことがあって、それはたしか新井素子自身が出てたと思います)。
あと、スパイものという点では永井豪の『00学園スパイ大作戦』の中に、演習だと思ったら本物のスパイ戦に巻き込まれるというのを読んだことがあって、それも思い出しましたね。
まあ、私は『007』シリーズを一本も観たことがなくて、『ミッション:インポッシブル』は2ぐらいまで観たかなっていう程度です。

で本作ですが、スパイ物ってやっぱりユルいんだなと思わされる、アクションとサスペンスを優先した荒唐無稽な場面が多く、楽しいです。
全体にはコメディということでいいんじゃないかと思います。
サービス満点で、笑える楽しい場面も多々あります。
問題は、それで2時間19分はちょっとつらかった。
劇場が寒かったのもあります(階段状の劇場の最前列は、寒いです)。
でももうちょっとシェイプアップして欲しかったかなというところ。

さてシェイプアップといえば……
主人公を演じるブライス・ダラス・ハワードですね。
『ジュラシック・ワールド』1作目で、がっしりしつつも細めの、エリート的な人物を演じていましたが、2作目の『炎の王国』ではカジュアルなキャラクターに変貌。
1作目で恐竜の映像にCGを多用していたところ、2作目ではフルスケールのメカニカルも増やすようになっていて、フィジカルエフェクトに力を入れたことで映画にも「血肉」が感じられるようになったと思いました。
そんな恐竜にまたがったりで大活躍のブライス・ダラス・ハワードの肉体性が感じられていて、魅力を増していました。
肉感的とかそういう性的な印象ではなくて、俳優の肉体がそこにあるという感覚を打ち出せたのは彼女の功績だと思いました。

今回『ARGYLLE/アーガイル』はその延長という感じがあって、彼女はより太くなってます。
このへん、細いことが求められがちな映画ヒロインのイメージもアップデートしようということかなと思われました。
実際、太いことはそんなに気にならず、主人公は十分魅力的でした……途中までは。

後半でドレス姿になるのですが、そこからはちょっと苦しいなというのが正直なところでした。
メイクもキメていますが、ナチュラルな前半部分は十分以上に可愛いのに、後半はさすがハリウッドセレブという方向の美しさにはなってなかったです。
その分、デュア・リパやアリアナ・デボーズは綺麗でしたが、映画全体を引っ張るような出番ではまったくなく、ブライスが出ずっぱりです。
ドレス姿でのアクションシーンなど面白いところが多いのですが、こういうことするのであればもう少し細い方がいいんじゃないかと思ってしまいました。

でも、こういうルックスに慣れていくことも必要なのかも…… とも思ったりはしますね。
映画におけるルッキズムはどうあるべきか、批判されるものなのか、考えさせられています。
作品全体は荒唐無稽で明るく、悩む要素のないタイプの娯楽映画であるところ、この点だけは、観客の感性が問われるようになっているという、そういう方向での挑戦が感じられましたね。

実のところ、『スター・ウォーズ』のキャリー・フィッシャー、『レイダース』のカレン・アレン、『ジュラシック・パーク』のローラ・ダーンと(何かルーカス/スピルバーグ系ばかりですが)、それまでの感覚だとあまり美しいと思われなかった人たちが確固たるヒロインになっていき、昨年の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』では「若い美女」の枠に入らない人が堂々とヒロインを張って評価されたりしていますので、作り手と観客がともに意識を更新していくポイントだなと思いました。

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