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【スリランカ】宝石買い付け紀行〜現地の方のお宅にお邪魔した9泊10日

カラッツ(KARATZ)代表の小山(おやま)です。

2022年12月中旬から10日間、宝石の国・スリランカに行ってきました。
スリランカは以前から、宝石の仕入れや研磨で取引があり、是非訪れたいと思っていた場所の一つです。今回はいつもお世話になっている宝石職人の方のご好意で、お宅に泊めて頂けることになりました。
宝石仕入れや鉱山訪問はもちろん、スリランカの人々の生活についても書いていきたいと思いますので是非ご一読ください

フライト〜スリランカに到着

成田空港からスリランカのコロンボ空港までは約10時間のフライトです。
無事到着した後の、初めての食事はローカルフードの「コットゥ」です。小麦粉でできた生地と野菜などを細かく刻んで炒めた食べ物で、日本人にも食べやすく美味しいです。

今回はいつもお世話になっている職人さんのご好意で、お宅に泊めていただけるいただけることになりました。スリランカは自然溢れる場所で、今回お世話になっている職人さんの自宅裏では沢山のホタルが見られ、近くを散歩するとリスやマングース、インドトサカゲリに出会えました。

鉱山が集まるエリア・ラトゥナプラ&サンジェ氏の研磨工場へ

スリランカ最大鉱山であるラトゥナプラにある4つのエリアを訪問。採掘跡地や最近採掘が始まった場所など、様々な状態のスポットが点在しています。スリランカは一次鉱床が基本的に禁じられており、漂砂鉱床が中心なので、川で採る姿を至る所で見ることができます。

こちらはスリランカ南部に位置するミーティヤゴダ鉱山です。スリランカ最大のムーンストーンの鉱山で、上質なブルームーンストーンが採掘されることで有名です。この鉱山ではムーンストーンが最も有名ですが、サファイア、ガーネット、トルマリン、アクアマリン、ホワイトトパーズなども産出されています。

数十年前までは地表近くで採掘されていたものの、現在では25メートルほどの深さの鉱床で採掘しています。スリランカ最大のラトゥナプラ鉱山とは対照的で、比較的最近の1900年頃から採掘がスタートしました。

採掘開始は比較的最近ではありますが、現在では宝石品質が枯渇しているため、一部を観光地化して、一般向けに採掘現場・研磨・ジュエリー加工を無料で公開されています。現場の臨場感もありながら、非常に入りやすい鉱山ですので、スリランカに行かれた際にはおすすめのスポットです。

ここではブルーサファイアを中心にイエローやピンクサファイア、スピネルやガーネット、トルマリン、トパーズなど様々な原石が採れます。私はラトゥナプラのehiliyagodaで、採れたばかりのイエローサファイア原石を買付。

こちらのイエローサファイアは加熱処理はせず、このまま現地のスリランカ研磨職人サンジェ氏に依頼します。サンジェ氏は、いつもお世話になっている腕の良い職人さんです。現地で原石買い付けから研磨まで一気通貫出来るのは、海外買い付けの醍醐味です。

鉱山から鉱山へ移動する車窓からは、スリランカの自然を眺めて楽しみました。孔雀や牛など、さまざまな生き物が見られました。

1泊2日でオッカムぺディア鉱山へ

ラトゥナプトラの後は、1泊2日でオッカムペディア鉱山へ向けて旅立ちます。オッカムぺディアは上質なスピネルが採れることで有名で、ブルー、ピンク、スタースピネルなど様々なスピネルが採掘出来ます。片道6時間の長旅ですが、新しい出逢いが楽しみです。

スリランカでは現地の職人さんのお宅に居候させてもらっていますが、今回のオッカムぺディア鉱山も彼と向かっています。現地の人と、毎日寝食を共にすることで、スリランカをより身近に感じるようになります。温かい人が多く、素敵な国です。写真は旅途中のpelmadullaでの風景。

オッカムペディアに向かう道中でも、宝石を採掘出来る場所が多くあり、それぞれの鉱山で直接宝石買付していきます。写真はスリランカの代表的な宝石、シンハライト原石です。このエリアはコットンが有名で、綿の木や綿を販売している風景を見ることが出来ます。Pallebeddaでの風景。

UdaWalaweの風景

旅の途中ではウダワラウェ国立公園を通ります。ここはスリランカ最大の人口湖と共に野生のスリランカ像を見ることが出来ます。200種類以上の鳥類や哺乳類が生育されていて、親とはぐれてしまった小象のための保護施設もあります。今回は運良くスリランカ象も近く見ることが出来ました。

Wellawayaの風景

Wellawayaは現地では「グラスボディ」と呼ばれる透明感のあるサファイア原石が採掘出来ることで有名です。今回沢山のグラスボディを買い付けし、中でも素晴らしいホワイトサファイアやブルーサファイアに出逢えました。オッカムぺディアまでもう少しです。

オッカムペディアに着いたら、まさかの・・・

オッカムペディア鉱山の為に8時間かけて来ましたが、残念ながら今回はNGが出てしまいました・・・。鉱山に行くには約15kmのジャングルを徒歩で抜けるのですが、川を泳いで渡り、今は野生のゾウ、コブラがいて特に危ない時期だとの事。ちなみにここで日本人を見たのは初めてと、会う人会う人に言われました。

サプライヤーから買い付けた宝石たち

気持ちを切り替えて、オッカムペディア鉱山麓のサプライヤーから現地のコーネルピンやアンダリュサイトやスピネルなどを買い付け。特に上質なブルースピネルに出逢えたのは大きな収穫です。

さらに幸運だったのが、オッカムペディア最大の鉱山主を紹介してもらうことができました。沢山の秘蔵品の中でも、特に印象深いのは約150ctのグラスボディのブルーサファイアです。

約150ctのグラスボディのブルーサファイア
鉱山主の方から、次回スリランカに来た時には、
別荘に泊まっていいよ、とまで言って頂きました。良き出会いに感謝です。

レアストーンのサプライヤーと商談

オッカムぺディア2日目朝です。美しいブッタラマウンテンを背にbuttalaを後にしwellawayaへ向かいます。wellawayaではレアストーンのサプライヤーと商談です。

wellawaya鉱山主にムーンストーン鉱山をご案内頂きました。登山途中に採掘したばかりだという水晶やトルマリンインクォーツやムーンストーンの原石を頂きました。採掘したご本人から直接石を頂けるとは、なんたる僥倖でしょうか。大切に日本に持ち帰ります。

こちらは3年前にwellawayaで発見された新種の鉱物です。何の宝石か調べて欲しいと渡されました。宝石品質でないため、調査はせず、そのまま庭に沢山置いたままだったとのこと。サンジェ氏に一面研磨してもらい、日本で検査をする予定です。

wellawaya鉱山からbandarawelaへ向かう途中にある、Ella(エッラ)という場所です。近年観光地として人気で、1920年代に石で作られた鉄道橋ナインアーチブリッジや、ラヴァナ滝、紅茶畑など見所が沢山あります。四方を山に囲まれ、自然に抱きしめられているような感覚になります。

スリランカでは至る所でキングココナッツを見る事が出来ます。キングココナッツはスリランカ原産で、国外にはあまり流通しない希少種です。ジュースを飲み干した後は、切って中身を食べて疲れを癒します。

子供たちへのチャリティー

スリランカに訪れた暁には、是非実現したい考えていたことがあります。それは、スリランカの子供たちへのチャリティーです。2022年7月、対外債務不履行となり、国が破産宣告を行ったスリランカ。以前より不安定だった経済が更に悪化し、日々の生活に必要な物資さえ事欠く状況だそうです。スリランカ在住の知り合いからは、子供達は学用品も満足に買えないということを伺っていたので、この度ささやかながら、鉛筆や文房具などを地域の小学校に寄付させて頂きました。

財政破綻により、停電も頻発しており、職人さん達が仕事を失いかけない状況下でカラッツからは沢山の宝石を送り、研磨の仕事を依頼して来ました。今回の訪問で、スリランカの方から『何十人もの研磨職人の生活を守ってくれて有難う』との言葉を頂き、こみ上げてくるものがありました。

話を聞けば聞くほど、職人さん達の厳しい生活を改めて思い知り、何か出来る事は無いかともどかしさも感じました。微力ではありますが、今度も学用品の寄付や、ビジネスを継続して行うことで、お世話になっているスリランカの方々に微力ながら貢献できればと改めて感じました。

子供たちとの交流を終えた後のことです。ちょうどオッカムぺディア小学校で、1人の先生が退職されるとのことで、お別れのダンスを見ることが出来ました。スリランカ伝統のキャンディーダンスです。素朴な音楽、煌びやかな衣装、可愛らしい子ども達の踊り、見ていて心が洗われるようでした。

スリランカといえば紅茶

翌日は、今回お世話になっている職人さんのご縁で、セイロンティーFadna社ソーマ社長宅にお邪魔いたしました。社長は仏教、奥様はキリスト教とのことで、ちょうどクリスマスの時期だったのでクリスマスの飾り付けがあちこちに見られます。広いご自宅には、ゆったりとした空気が流れているように感じます。

カラッツのお客様へのプレゼントとして、セイロンティーを頂戴いたしました。
ありがとうございます!
まだ日本ではあまり知られていないブランドですが、
スリランカ行った際は是非お試しください。

スリランカの首都 「スリジャヤワルダナプラコッテ」


スリランカの首都「スリジャヤワルダナプラコッテ」です。現地でも名称が長すぎるため、「コッテ」「コッテー」と略されて呼ばれます。子供の頃、社会の授業でこの地名を初めて耳にし、あまりの長さに驚いた思い出がある首都です。

コッテ国会議事堂。

スリランカの地引網漁


スリランカ最終日は新しい宝石研磨職人さんを訪ねる途中、たまたま海沿いにあるベールワラで地引網漁に遭遇しました。ベールワラはイスラム教徒が多く、魚市場や宝石取引所がある場所としても有名な場所です。
私が珍しそうに漁の様子を眺めていたら、キャプテンのラドゥ氏(ラドゥはシンハラ語で赤色)から一緒にやって良いと快諾いただき、参加させて頂きました。

後ろの方に私が居ます。
この日は不漁とのことで、いつもより勢いがないようですが、
漁師さん達は皆丁寧に解説くださったり、
撮影に応じていただいたり大変親切にして下さりました。

地引網漁で採れたロウニンアジを1匹購入して、お昼ご飯にして食べました。今回泊めて頂いた家の彼は料理が得意なので、ガーリックと玉ねぎとパクチーを使ったエスニック料理にしてくれました。スリランカ最後の食事、とても美味しかったです!

買い付けた宝石を持って帰路へ

長いと思っていた9泊の旅もあっという間でした。買い付けた宝石を持って帰国しますが、スリランカから国外への宝石を持ち出しは法律で禁じられています。持ち出すには、国営宝石公社に赴き、買付したリストと宝石の申告が必須で、申告には2時間程かかります。手間がかかりますが、手続きを経ないと罰せられるため必ず必要なプロセスです。

今回オッカムペディア鉱山で買い付けたトルマリン原石やサファイア原石は、原石のままで持ち出し許可が出たものの、スピネルやコーネルピン、エカナイトやシンハライトなどの原石は持ち出しがNGとなったため現地スリランカでの研磨となりました。上の写真は持ち出しNGの原石達です。

スリランカでは原石の持ち出しは基本的にNGですが、今回私が幾つか原石を持ち出し出来たのは、事前にスリランカ政府にスリランカの宝石を日本国内でセミナーなどに使用し、スリランカの魅力を伝えるよ、とお伝えしたため、一部OKを頂いた事情があります。

国営宝石公社に申告した荷物は、空港の搭乗手続き後に税関にて受け取りとなります。
この手続きを踏まないと罰せられるので、スリランカで宝石を購入した際は必ず申告をするようにして下さい。

スリランカの旅を振り返って

スリランカの現状を知るべく、現地の職人さん宅で寝食を共にした約10日間。自然豊かな国で、温かな人たちに囲まれ非常に充実した時間でした。

実際暮らしてみると、何度も停電になったり、お湯が出ない事が日常茶飯事でした。日常生活も厳しい中、スリランカの人達の明るく前向きな姿にはかえって私の方が元気をもらったくらいです。

今後もカラッツは、スリランカとのビジネスを継続し、子供達が勉強できる環境に貢献できるよう、寄付などを継続してまいります。 もし皆様も海外旅行に行く際は、候補の一つとしてスリランカをご検討頂けると嬉しいです。


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