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人生のダイソン状態

今まで、次から次へと
やらなければならないことをつくり、
忙しく過ごすことを「良し」と
してきたように思う。

充実。

そう言えば聞こえはいいものの、
果たして本当の意味で
充実していたのかは疑わしい。

なぜなら、
「自分には何かが足りない」という
不足感を感じないようにするため、
わざと忙しく過ごしてきたような
ところがあるからだ。


やることがない。

それは突然、僕に訪れた。

厳密にいうと、
やることをやりきったから
やることがなくなっただけだ。

「次は何をやればいいのでしょう?」

餌を食べ切っておかわりを
ねだる犬のごとく、
吠える僕に師匠は言った。

「どうしようかねえ。
いや、どうしようかねえという状態が
いちばん理想なんだけど」

その言葉を聞いて、
僕の混乱は極みに達した。

次の餌という名の
人生の課題を求めていたのに、
「どうしようかねえ
という状態がいちばん理想」という
言葉が出てくるとは思っても
みなかったからだ。

どういうことなのか?

「どうしようかねえ」と
「いちばん理想」は、
僕にとって水と油のようなもの。

同時に存在することはあっても、
けっして混じり合うことのない言葉だ。

―― いや、ちょっと待てよ?

僕はあることに気づいた。

これまでの人生において、
こんなことがあっただろうか、と。

師匠の話は続いていた。

『真空状態』

僕の置かれている状況を、そう呼んだ。

真空状態とは、やることをやりきって
余裕や余力のある状況を指す。

空きスペースができるようなイメージだ。

空きスペースができると、
そこに吸引力が働いて
新しいものが入ってくる。

ちなみに僕の場合、
人生初の真空状態だったこともあり、
ダイソン顔負けの吸引力が働いた。

立て続けに、
新しい仕事が入ってきたのだ。
恐るべし、ダイソン。
いや、真空状態。

今回のことで、自分に誓ったことがある。

常にやらなければならないことをつくり、
四六時中、
満たされようとするのはやめよう。

そんなことをしていたら、
僕のダイソンが働かない。

やることをやりきって、
定期的に真空状態をつくる。

そして、意図を放っておくと、
ベストなタイミングで
しゅぽんと新しいものが
吸い込まれてくる。

これからは、
そういう循環のなかで生きていこう。

それが僕のダイソンを
最大限に活かした生き方であり、
密かに求めつづけてきた充実なのだから。


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