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変化するスポーツ観戦

冬期オリンピックが始まりますね。そして今年はサッカー⚽ワールドカップもあります。変化する観戦スタイルに、スポーツ提供側、スポンサー側はどう対応すればよいのでしょうか。

これまでの観戦スタイルと動機

これまでの観戦は、スタジアムに行くか、TVで観るか、あるいはパブリックビューイング(PV)に行くかの選択肢がありました。PVでの観戦にはスタジアムより参加がしやすいという利点があり、スポーツマーケットの規模を劇的に変えました。PVは高額なチケット代を払う必要が無く、場所も自由に移動できることが多いため、たくさんの仲間と一緒に同じ体験をし、価値創造ができるからです。

人はなぜスポーツ観戦をするのか、まずはその動機から見ていきましょう。先行文献からは次のようなことが言われていて(Wann et al. 2001; Trail et al. 2003; Aimiller & Kretzschmer 1995; Schafmeister 2007; Woratschek et al. 2017)、チーム・アイデンティフィケーションは、ロイヤルティ(口コミ、購買意欲、エンゲージメント…)につながることが分かっています。

スタジアム観戦の動機となっているものには、例えば
・ ライブエンターテイメント
・ 快ストレス
・ フィジカルのスキルや魅力
・ 家族や仲間とのソーシャル・インタラクション
・ 現実逃避
・ 自尊心
・ チーム・アイデンティフィケーション(チームへの同一化)

TV観戦の動機は、さらに
・ 賭け事
・ 知識の獲得
・ プレイヤー・アイデンティフィケーション(選手への同一化)

PV観戦には、下記の特徴があります。
・ TV観戦では味わえない、他者とのインタラクション
・ スタジアムでもTVでも味わえない、異文化(他国チームのファン)との接点
・ スタジアムでは席が固定だが、移動が自由
・ チケットが無料(または低額)で、たくさんの好きな仲間といられる

パブリックビューイングに関する調査

チケットはプレミアがつき、TVでは消費が生まれにくい中で、PVは大きな効果がありました。チームアイデンティフィケーションによりグッズの購買意欲が高まるし、何より多くの人の注目を集めることからスポーツやチームの価値が高まるからです。
そんなPVについて調査したのがWoratschekら(2017)。オーストリアとスイスで行われたUEFA EURO 2008(44年ぶりにスペインが優勝した時)のPVの観客に定量調査を行っていて、なかなか面白い結果がでています。”私はPVに参加します。なぜなら…” という理由を因子分析をして、10個の因子を導出しています。また、平均(mean)の差の検定(Welchのt検定)をして、男・女、外国人・ローカルによって、動機に差があるといいます。以下は男女の差の結果。

・ チーム・アイデンティフィケーションは女性より男性が高い
・ プレーや選手の美しさは、男性より女性が好む
・ ライブエンターテイメントとして楽しむのは、女性より男性が強い
・ 会場を自由に動き回れることは、男性より女性が好む
・ 現実逃避のために来ているのは、女性より男性

どうですか?納得感はあるでしょうか。この調査は2008年のものですので、今はもっと男女差はなくなっているかもしれません。今や現実逃避したいのは男性だけでなく、社会進出が進み多重役割を強いられる女性の方が多いかもしれません。

https://www.researchgate.net/publication/313902514_Innovations_in_Sport_Management_The_Role_of_Motivations_and_Value_Cocreation_at_Public_Viewing_Events

コミュニティの活用

しかし、コロナ禍でスポーツのビッグイベントの観戦スタイルも変わってしまいました。国外への移動が制限され、スタジアムの席数も制限され、現地で直接観戦できる人はごくごく限られた人のみ。大規模なPVもなく、現在はスポーツバーに集まることすらできません。お家で家族とTVを観るしかない…という状況です。でも、TV観戦だけでは、消費が動きません。顧客との接点をどこにつくり、どうやったら価値共創ができるのか、とても難しい気がしてしまいます。

そこで有効なのが、Woratschekら(2017)の調査で分かっていない、インターネット上のコミュニティの存在です。他者とつながり、異文化との接点を求める人々が、自宅でTVとインターネットを併用しながら、PVに参加するその動機を満たしてあげればよいのです。ここに、コロナ禍でのスポーツ観戦需要喚起の鍵がありそうです。

自宅でTV観戦しながら、ネット上にファンが集まり交流できるプラットフォームがあれば、そこで大勢の不特定多数のファンと盛り上がることができます。DeNAベイスターズのバーチャルハマスタがそのいい例です。
例えば、clusterやZEPETOのワールド(いわゆるメタバース)内だってTVと併用すればネットPVができそうです。もちろんアンブッシュマーケティングにならないよう注意は必要ですが。でも、オリンピック委員会やパートナー(スポンサー)であれば、大規模なネットPVをメタバースでできないことはないでしょう。カクテルや焼きそばを作るロボットに歓声をあげている場合じゃなくて、メタバースに視線を向ける仕掛けができれば、もっともっと盛り上がるのに・・・

ZEPETO内のスキージャンプ

今年のSuperbowlの目玉はミラーライト⁈

日本時間2/14に行われるスーパーボウルは、ラムズVSベンガルズ。もちろんそれも楽しみですが、もう一つ、ミラーライトがDecentraland(メタバース)内にMeta Lite Barを開くそう。ゲームや現金が当たる抽選もあるそうだし、13日には、メタバース初のスーパーボウル広告が見られるとのこと。どのくらいの人が集まるのか、行ってみたいと思います。Barのオープンは、2/7です。

Decentraland内

https://www.millerlite.com/metalitebar

まとめ

ということで、PVの利点を最大限利用してメタバースに移行するというのが、今後の大規模スポーツイベントの観戦の鍵になるよ、というお話でした。移動や集会が昔のように制限なくできる世界にいつ戻るかわからない中、顧客の性別や年齢、趣味、行動を把握しやすい仮想空間内で、ターゲティングも容易になる分、消費喚起ができるのではないかと思います。
⚽ワールドカップの時には、そんな楽しい空間で、友達みんなで盛り上がりたいです~

(了)


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