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和菓子に物語を知る奥深さ

おはようございます。
今日もご覧いただきありがとうございます。
洋菓子、和菓子分け隔てなく好きな僕。今日は和菓子の世界へ。



今日の食日記

和菓子職人さんの頭の中は歴史だと思う。ある意味文学者的な発明と才能があると思う。

他にない気鋭な発想がある方々のことを指すのだが、小説を書いているような、そんな風に物語が進行しているのがわかるから、その脳みそから生まれる発想を少しお裾分けしてもらえた気分になる。

そう、和菓子は美術館の展示品を見るのと同じ芸術文化なのだと。

日頃頂く和菓子といえばどら焼きや団子、まんじゅうなど。どれも和の真髄を体現し、餡子と品のある甘さが日本人の心を朗らかにしてくれる。

ただ、その見かけよりも優しさにすがるように甘さに寄って行ってしまっているようで、もしかしたらまだまだ和菓子を知らないのかもしれない、と(確かに洋菓子はとりわけ煌びやかだと思うのだ。光るし重なるし、立体的で高さが違う)。

そんな気づきを得た僕は、最近はお茶菓子を食べに和菓子屋さんなお茶屋さんに出向くことにしている。その出会いは毎回芸術祭であり、たびたび新しい人に出会った気分にさえなる。刺激的な毎日をくれるのが和菓子のようだ。

京都のお話なのだが、古都にはお茶菓子文化が継承されている。だから僕も死んだ身柄は京都のような古都に預けてもらいたい。日本を感じにいつまでもやって来てくれると信じられるから。




今日のお店

五条駅から西へ数十分駆けるように進むと(ちょっと汗ばんだ)、静かにお店が構えている。
そこのお菓子は独創的でいて継承され、アップデートされた力強さを感じられるという。

菓子屋のな。冬の寒さだってなんのその、お店は開かれ、暖簾が儚く揺れている。夢の目的地に辿り着いた気にさえなってしまう(そんな憧れの場所なのだ)。

静かにこっそりと近寄れば、いらっしゃいませの一声が。一見誰もいないのか?なんて失礼なことがよぎってしまったのだが、いつまでも冷静で姿勢を正す緊張感さえあった。

一歩踏み入れた途端、春風にも似た暖かくもひやっとする緊張感が全身を駆け巡った(そのくらい神聖な場所というか、目的の場所だったのだ)。

テーブルすぐそこにはまるでジュエリーのショーケースのように大切にされた作品が音のない空間に鎮座していた。

見入るしかないこの重厚感。
限りなく小さな小声で「凄いね」と隣の母と同意した。

掴み取れない冷たい空気がそこには流れ、無重力の中無力感に襲われる。そのくらい、そこにある作品の数々が訴える力強さに押されている。

今日はお土産に、と全4種類のお土産を箱にまとめてもらい、お店を出た。大金を詰めたボストンバッグを守るように持ち帰った。

家での開封の儀(なんで神聖な)。
開けた瞬間の輝きは、ライトがなくてもきっと光っていたことだろう。


ジュエリーのような輝き

眩しいくらいに艶やかで発光している和菓子の一つ一つに、敬意を表明した。

何がどうなっているのか、どう感じ取ればいいのかさえ分からない、村上春樹の小説の中に身を置いている気持ちにさえなった(掴みたいのに、僕じゃ分からない)。

感謝の念のもと、一つ一つ丁寧に両手でそっと取り出し、今日は気合いの九谷焼の皿に特等席のように座らせる。まさにVIP待遇というやつだ。

上から時計回りに、「柿日和」「冬将軍」「冬茜」「夜明けのうた」だ。

一体誰がこの名前だけで作品の味わいたどり着けるだろうか。その一つ一つには物語があって、きっと見た目以上に繊細に織り成された味わいにそのエピソードがきちんと収められているのだろう。

そんな特大の期待感を持って一口一口と向き合った。

柿日和
柿の香りが閉じ込められた布団のような皮の中、ラム酒が香る少し大人なほろ苦いキャラメルがとんと入っている。柿らしい味わいにその洋な餡が自然と移り変わっていく。

冬将軍
抹茶の深いミルク餡に、さっとレモンの風が髪の毛を揺らす程度に吹いて来て、深いのにすぐにいなくなってしまう迷子になってしまったようなそんなはじめての味わい。確かに冬が到来した。

冬茜
ブラッドオレンジの香るゼリーのような食感は明るくて。コシのあるライム羊羹がとてもさっぱりにまとめる。柑橘フルーツの爽やかさに夏の南国より涼しい冬の風を思い出した。

夜明けのうた
これまた本当に面白い。
しっかりと黒糖の味わいの後りんごの甘さに持っていかれる。まるで黒糖を使ったコンポートのよう。
それでいて甘すぎず、りんごの味わいが引っ張っていくのが凄い世界だ。

物語を掴むのはそう簡単ではなかった(これが正直な感想で)。
ただ、味わいの移り変わり、重なりに気づこうと食べるその過程が、なんだか人生の模索のようで一つの物語をなぞった気分になるのだ。

和菓子職人の手がけるその作品はまさに文学作品なのだ。

もっと知り味わってみたいと心から思えた贅沢な体験だった。


美味しいひと時に、ごちそうさまでした。
では、また次回。




今日のお店:菓子屋のな(京都市下京区)



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