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100倍おもしろく3000mSCを見る方法

こんにちは鈴木太陽です。

皆さんの1年の中で好きな季節はいつですか?
僕は春があまり好きではありません。
ポカポカしていて最高なんですが、それが逆に平和すぎる気がして、フワフワと白昼夢の中にいるような感覚にもなるからです。
ただこと陸上に関しては、明日の学生ハーフを皮切りにいよいよシーズンインということで平和だなんて言ってられず、全力で戦える日々が来ることにとてもワクワクしています。

今回のブログでは一足先にトラックシーズンの話、僕の大好きな「3000mSC」という種目について語らせて頂きたいと思います!
これを読んで少しでも3000mSCに、そして僕のトラックシーズンに興味を持ってもらえれば幸いです🔥

ざっと目次です。

3000mSCとは?

3000mSCとは、3000mという距離を走りながら障害物(ハードルを28回、水濠を7回)飛び越えていく競技です。

障害物の高さは男子の場合91.4cm、僕の腰骨よりは少し低いくらいで、これは男子400mハードルのハードルの高さと同じになっています。
水濠の深さは最も深い部分で約70cm、障害から水のない部分までは3.66mあります。
水を張って足をつけると思ったよりも深く足をとられるので、この水ゾーンを1歩で抜け出すことが大切になってきます。

日本陸連より


「SC」とは「Steeple(教会)Chase(競走)」の略で、「教会の尖塔を追う」という意味になっています。これは3000mSCの由来が、中世ヨーロッパのある村の教会から別のある村の教会までを駆け抜ける徒競走だからと言われています。
ヨーロッパで人気のクロスカントリーレースをトラックで再現しているのです。
教会の尖塔を目指して村境を示す柵や堀を飛び越えていく、そんな歴史の背景があるって知ったら少し3000mSCを見るのもワクワクしませんか??

となりの村の教会目指して柵を越え堀を越え


また、3000mSCは「3000m障害」と表記されることもあり、略称も「サンスク」「サンショー」の2つある気がします。個人的には「サンショー」ですかね。どっちでもいいと思います。たまに年配の方が「スクラッチ」なんて言ってるのも聞きますがそれは正直よく分かりません。SCはSteepleChaseの略ですよ!特に中学の顧問の先生…苦笑

魅力はこんなところ!

まずパッと思いつく3000mSCの魅力は「ランダムなレース展開、最後まで誰が勝つか分からないハラハラ感」だと思います。
長距離種目の多くはスタート直後に位置取り争いがあり、そこから淡々と集団で進み、スパート合戦で決着がつくことがほとんどです。
一方で3000mSCは始めから集団がばらけやすい種目です。その要因として「集団で走ると障害物が飛びにくい」ことや「障害物を超える技術に個人差が大きくでる」ことなどが挙げられます。
また、接触のリスクが高い水濠を出来るだけ安定したポジションで飛び越えようと1周ごとに細かい位置取り争いがあります。
最初から飛び出した人がそのまま勝ち切ることもあれば、どこから出てきたのという人がひょいと勝ってしまうこともあります。転倒の可能性など不確定要素も多いため、最後まで勝負の行方は分かりません。

自分自身、高校陸上は転倒で終わってしまった


また、「水濠を飛び越える選手の迫力」にも注目です。
日本の競技場には水濠がトラックの外側に置かれる「外水濠」と、トラックの内側に置かれる「内水濠」の2種類ありますが、特に外水濠の競技場で3000mscがある機会には、是非水濠の真横で観戦してみてください。選手の躍動感、水の飛沫など迫力満点です。高校1年性の時に観たレースで1位だった選手の、水飛沫のほとんど無い静かな着水はいまだに覚えています。

迫力満点。こちらは左上が三浦龍司選手。美。


さらに3000mSCは、「様々な走能力が総合的に求められる」ことも魅力だと思います。
他の長距離種目と特に異なる点として、障害後の着地時に瞬発的に再加速する必要があるため、いわゆる解糖系、乳酸がどばっと出るようなスプリント能力も必要になってきます。

上のツイートのように、3000mSC=中長距離種目の混成ギュギュッと1つに濃縮版と考えると、なんだか少し面白くないですか?
(ちなみに3000mSCを走った後の血中乳酸濃度は、100mや200mを走った後とほとんど同じ11~12mmolらしいです。中距離系よりは少なく、長距離系よりは多い。へーおもしろ。)
このように様々な能力が必要になるため、中距離選手と長距離選手のバトルが見れるところも魅力かなあと思います。

高校での3000mscとそこから得たもの

では、ここから少しだけ僕の高校時代の3000mSCについて話させてもらいます。
大学に入ってから1回も3000mSCを走っていないこともあり、「なんでこいつは3000mSCにここまで思い入れがあるんだ」と思う方がいるかもしれません。
それは自分自身が3000mSCを通して成長できた3000mSCに育てられたと考えているからです。

高1の春から3000mSCを始め、高1の秋には関東新人で当時1学年上の安田陸人と初のお手合わせをしました。

安田(写真一番左)と自分(写真左から4番目)
今は一緒に走っているなんて面白い。

安田には負けてしまったものの、このときのタイムが当時2019年の高校1年生の全国ランキングで10位以内(確か)でした。
これによって一気に自分自身の視座が上がり、それまでなんとなくでしか考えられていなかったインターハイの舞台で勝ちたいと強く思うようになりました。

これにはカラクリがあり、1年生で3000mSCを走る人はかなり少なく、特に強豪校の人たちは5000m等に取り組んでいることがほとんどです。
また、ときに3000mSCは1500mや5000mで戦えない人達があぶれてくる場所だと揶揄されてしまうこともあります。
悔しいですが、正直その揶揄に対して完全には否定できません。
でも、それこそが僕が3000mSCに育てられたと感じる理由です。
1年生のころから1500mや5000mのみに取り組んでいたら全国ランキングに載ることは難しかっただろうし、1年生の時点では関東大会にすら出場できなかったかもしれません。そうなると、それまで全国大会の経験もなくやや消極的だった自分が、あれほど具体的にインターハイで勝つことを頭に起き続けて練習をすることは難しかったと思うのです。
また、そうやって揶揄してくる人たちの思う壺にはなりたくないと、俺は3000mSCだけじゃないぞと、他の種目や駅伝に対しても120%で取り組むことができました。
結果的にインハイで勝つことはできませんでしたが、3000mSCだけでなく1500mでもインハイに進むことができました。もし1年生から1500mのみに取り組んでいたらこの結果は出なかった気がします。3000mSCがあったからこそ、視座やセルフイメージを高く保つことが出来たと思います。

戦える可能性があるフィールドがあるのならそこで成功体験を掴みにいく、僕はそれを逃げだとは思いません。
ただずっと井の中の蛙でいるわけにはいかない。
その成功体験を糧に自分自身の視座を上げて、本丸に殴り込みをかけるのもありじゃないかなって思います。
僕はそんな生き方を3000mSCから学びました。

関カレとその先に向けて

こんなべらべらと語っていますが、昨年のトラックシーズンは怪我で棒に振ってしまっていたため大学では1回も3000mSCを走っておらず、まずは関カレ標準を切るところから始めなくてはいけません。

ただ、既に関カレで達成する目標は決まっています。決勝に進出することです。
チームの中で中間層と言われる立ち位置であろう僕が、予選会や箱根駅伝で名前を聞くような選手たちに1ミリでも噛み付くことで、「あいつが勝負できるなら俺も」と、自分自身だけでなくチームの視座を上げるような走りができればと思います。
ハーフでは今はできないことが、3000mSCでならできる可能性がある。もちろん簡単じゃないけど挑戦しがいがあるし、僕がすべき仕事はそこだと思いました。
観客気分で箱根駅伝を見るのではなく、ライバルとして箱根駅伝を見るための1歩とも言えます。そのためには彼らが余力を残す予選ではなく、本気の勝負をする決勝で走らなければいけません。

「逃げのサンショー」ではなく「攻めのサンショー」を。あるいは「攻める武器としてのサンショー」をお見せしたいと思います。

転倒後に眼鏡を拾い上げる図
2年越しにこの時の続きを走れることがすごく楽しみ



このブログを書いていたらテレビから一週間後には東京に桜が咲くなんてニュースが流れてきました。
やっぱり前言撤回、春も悪くないです。つくづく日本に四季があって良かったなあと思います。
トラックシーズンの前にまずは明日の学生ハーフ🔥
目の前のひとつひとつを戦い抜いて箱根路につながるよう頑張ります!

次は今シーズンからいよいよ軌道に乗せてくれるであろうコータローセキグチです。よろしくね。



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