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新入編集部員の日記 #5 「付き物(3)」   奥付は本のエンドロール

前回(#4)はこちら↓

皆さん、こんにちは (こんばんは)! 日本評論社・経済編集部のSです。

友人にそそのかされて格闘家・那須川天心氏くらい髪を切りました。

前回は、『
新版 経営戦略の経済学』を紹介しつつ索引がどうやってつくられているのかを紹介しました。

今回は付き物のお話第3回目です。テーマは「奥付」です!

「付き物」というテーマを引き延ばしまくった結果3本書くことになりました。決して手抜きではないです。


■奥付(おくづけ)って?

その本の著者や編者、発行者(出版社)の情報などが書いてあるアレです。

通常本の末尾にあります。

『新版 経営戦略の経済学』の奥付
(今回も淺羽先生に許可を頂きました。寛大なご対応に感謝します...。)

このページもほかの付き物と同様メインコンテンツではありませんし、奥付なんて意識したこともないという人が多いと思います。


■「奥付は本のエンドロール」

見出しの言葉は、安藤祐介さんの小説本のエンドロールに出てくるものです。

この小説は、私が出版に関わるさまざまな人たちの存在を知るきっかけとなった作品です。

本に関わった人々や企業の名前が並ぶ奥付は、映画のエンドロールのような位置づけのものです。

しかし、せいぜい著者/編者・出版社・印刷会社・製本会社・装幀担当者(デザイナー)の名前くらいしか奥付には書かれません(というか書ききれない?)。

出演俳優はもちろんのこと、監督、脚本家、美術、衣装、作画、映像編集……など制作に関わったすべての人の名前が列挙される映画のエンドロールとは対照的です。


■奥付の向こうにいる人たち

奥付には名前が載らない多くの人たちの協力によって1冊の本はできあがります。

仕事をこなしていく中で、編集者は本がお客様に届くまでの一連のプロセスのうち、ほんの一部を担っているにすぎないのだと思うようになりました。

原稿やゲラのやりとりは、社内の仕入製作部や印刷会社の営業の方々がいなければ成り立ちません。

私がめちゃくちゃに赤入れしたゲラが、ミスなくきれいに反映された状態で戻ってくるのは、DTPオペレーターとよばれる方々のおかげです。

本の印刷は印刷工場の皆様の高い技術なくしてありえません。機械の設定を間違えたり、メンテナンスが行き届いてなければ、版ズレなどの印刷不備が起こります(「紙を機械で印刷するなんて簡単だろう」と、私は印刷技術の重要性をかなり低く見積もっていました)。

担当編集者以外にも、その本の製作に必要な作業(目次・索引などの読み合わせ、参考文献リストのチェック、出校してきたもろもろの引き合わせ......etc)を手伝うスタッフもいます。

そして、営業部の社員の方々は一冊でも多く自社の本がお客様の手に届くよう知恵を絞り、日々書店に足を運んで汗を流しています。

以上の方々の名前は、すべて「エンドロール」には載りません。ですが、本という商品を作り、読者の手に届けるというプロセスに間違いなく貢献しています。


■論文に名前を載せることしか考えていなかった過去の自分

大学院生として研究をしていた頃(ダメダメ大学院生でしたが)は、自分の名前を(主に論文に)載せることばかり考えていました。

自分の業績を認めてもらわなければいけない世界ですので当然のことではあります。

とはいえ、「自分の成果を世に認めてもらえる仕事でなければ意味がない」みたいな観念が心のどこかにあり、きわめて視野が狭かったと思います。

「自分の研究=自分のおかげ」という考えもあったため、どこか独りよがりだった気もします。

先ほど挙げた方々は、本に自分の名前が載らなくとも自社のプロダクト(=本)を作る・一つでも多く売るためにそれぞれの責務を果たしています。

このような方々と一緒に仕事をさせていただくなかで、「仕事はみんなでするもの」という至極当たり前のことを改めて学びました。私も、よりよい本を作るために、自分のできることで貢献していきたいと思います。


■おわりに

奥付の話からだいぶ飛躍した感もありますが、とにかく本というコンテンツは、映画と同様たくさんの人々の協力があって始めて成立します。

最後のほうは、うまく言語化できなくてすみません。

本を作ることのお手伝いをさせていただくなかで、「仕事」への考え方がかなり変化したということをお伝えしたかった次第です。

本に限らず、あらゆる商品・サービスについても名前も知らない方々の努力に思いを馳せるようになりました。

私も本作りの一端を担う1人として全力で頑張ります!


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