移住、暮らし、想像と構築

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この文章は、「移住 Advent Calendar 2015」というクリスマスまでに毎日ひとりずつ「移住」をテーマに文章や写真などを投稿していこうという企画の一環で書いています。今年何かと楽しい時間をご一緒した岸本千佳さん(京都移住計画)からのお誘いです。
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僕はいま、自宅のソファの上で足を伸ばし、膝の上のクッションのさらにその上に愛用のchrome bookを置いてこの文章を書いています。時間はお昼、13時半。

2012年の夏に東京から京都府大山崎町に移住しておおよそ3年半。コーヒー豆を焼き、お店を切り盛りしながら、たまに文章を書く仕事もして妻とふたりで暮らしています。

お店を開けているのが週に二日(木曜日と土曜日)だけのため、しばしば「他の日は何してるんですか?」という質問を受けます。

「ネットショップからの注文もありますし、カフェや近所のお客さんに配達もしているので、お店を開けられるのは週二日なんです。」

と、だいたいこんな感じで答えています。

でも、これは嘘ではないけれどそんなに正確ではありません。だって、正直実店舗をオープンした1年前には、毎日焙煎したり配達したりしなければならないほど注文は多くなかったですから。それに、同じことをしながらも毎日お店を開けている方はたくさんいらっしゃいます。

つまり、先の回答は現状の説明としてはそれなりに正しいけれど、そもそも週二日の営業にした理由は説明していないわけです。

僕らが週二日の営業にした理由は、自分たちが自由に動ける時間を確保したかったからです。

面白そうなイベントがあれば出店したいし、文章を書く仕事をする時間も取りたい。
朝ごはんはゆっくり食べたいし、本もたくさん読みたいし、それになにより家族と過ごす時間がたくさんほしい。

週二日の営業というのは収入面を考えるとマイナスです。
店舗の家賃はお店を閉めている時間でも変わらず発生しているわけですから。

それでも僕らは、お店をやりたいという想いと、時間にしばられない生活をしたいという想いの両方を実現したかった。その結果が週二日の営業というスタイルだったのです。

いま、その想いが実現できているかというと、なかなか思うようにはなっていない点もたくさんあるのが現実です。それでも、少しずつ自分たちの目指す生活スタイルに近づいていっているという実感はあります。

なんだか今回のテーマである「移住」とは離れた話をしているようですが、僕が伝えたいのは「暮らしを想像する」ことと、「その暮らしを構築する」ということについてです。

移住したいとか、転職したいという人は、自分の理想とする暮らしがあって、それを実現する手段として移住や転職という選択肢を考えていると思うのです。でも、収入や家族のことといった「現実」を考えた結果、断念してしまったり、中途半端な形で実行に移してしまうということもあるように思います。

巷には「地方には雇用が少ない」、「地方は教育レベルが低い」といった言葉が溢れ、心を折る理由には事欠きません。(地方には「雇用」は少ないけれど「仕事」はたくさんあるし、これからの時代、教育レベルはどこにいたって自分次第、というのが僕の考えです)

大切なことは自分がしたい暮らしを想像し、その暮らしを無理矢理にでも構築してしまうことです。

僕らは全然収入が足りていない店舗の開店時から週二日の営業というスタイルを無理矢理構築し、それを維持する上で発生した問題についてはその時々で一生懸命に向き合って考えてきました。

そして、まだまだ問題はあるにしても、ここまでそれを維持し、少しずつですが良い方向に向かって進んできています。

「現実は厳しい」、それは事実ですが、「やってみなければわからない」というのもまた事実です。

2015年ももうすぐお終い。

僕はいま、自宅のソファの上で足を伸ばし、膝の上のクッションのさらにその上に愛用のchrome bookを置いてこの文章を書いています。とても幸せです。

来年も良い年になりますように。

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「移住 Advent Calendar 2015」、明日(12月13日)の担当は岸本千佳さん
楽しみです。
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中村 佳太|エッセイスト,コーヒー焙煎家
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