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フットボールクラブの存在意義について考えたこと

フットボールクラブの経営に一瞬でも携わることができたので、事業化に向けて考えてきたことを書いておこうと思います。

まず、世田谷ユナイテッドというフットボールクラブに携わるきっかけは、代表である地頭薗くんのお誘いでした。
昨年末、ローンチに向けたテキストなどをつくっている時に出来上がったクラブのコピーを見たときは本当にワクワクしました。
ただのフットボールクラブではなく、存在意義を宿したローカル・イノベーション・フットボールクラブという世界観に大きな可能性を感じ、鳥肌が立ったのを記憶しています。

https://setagayautd.com/

地頭薗くんの熱量と行動力、そこにこの世界観をデザインできる峯村さんがいるというだけで、一気にテンションが上がりました。

この世界観に惹かれてボードメンバーとして事業化に向けて奔走してきたわけですが、まずは1年も経たずに離れることになった理由を書いておきたいと思います。

私は本業が別にあり、限られたリソースで関わっていたため、オンザピッチへの関与はほぼせずにビジネスサイドに注力する形で携わっていました。しかしながら、ボードメンバーの中でも私だけ世田谷ではなく神奈川在住となりオンラインコミュニケーションをメインに強いてしまったことで、コミュニケーションエラーが出てきたこと。クラブ創業期の重要なフェーズでオンラインでコミュニケーションを補完するのは難しいと感じたことです。
そしてコミュニケーションが不足しているが故に明らかになった課題が、根本的な価値観の違いで、それは限られた時間の中ですり合わせていくのは難しいと判断しての決断です。

フットボールクラブなので、フットボールを第一に洗練させたいという代表である地頭薗くんの熱い想いに対して、私はより高い視座でフットボールクラブの存在意義を思考し事業構想を練っていたこともあり、現場寄りの意見とのすれ違いが生まれていました。
限られた私のリソースを踏まえて、中途半端な入り方をすることでクラブにとってポジティブな影響をもたらせないと感じたのが一番の理由です。

短い時間でしたが、世田谷ユナイテッドというフットボールクラブに携わりながら考えたことを書いておきたいと思います。

フットボールで人と社会を繋げるとはどういうことか

ローカル・イノベーション・フットボールクラブという世界観を生み出したデザイナーの峯村さんとクラブの未来について語り合いながら、フットボールクラブの存在意義について妄想する時間が増えていく中で、社会を俯瞰する視座を意識するようになり、なにかのヒントを得るために本屋さんや図書館に足を運ぶ機会が増えました。その中で手に取った4冊の本をご紹介しながら考えたことを書き留めておきたいと思います。

フットボールクラブをパーパスブランディングする

パーパス・ブランディングとはなにか?

パーパス・ブランディングは、企業や組織の根幹であり、拠り所となる「パーパス(存在理由)」を見つけ、究極的にはそれ一つで、様々な判断をして、課題を解決していくことです。拠り所となるパーパスを明確化すると、経営者も現場もブレることなく、同じ方向を見て進むことができる。それは、パフォーマンスの最大化につながります。  そして、パーパスは「今」にフォーカスした考え方です。突き詰めると「企業やブランドが何のために存在するのか」という問いに回答できる
ブランディングは、「人の意識」に働きかけることです。強いブランドを築くためには、ブランドに関わる人々の意識を統一したり、方向性をブレないものにする必要があり、そのために様々な施策やツールを駆使して働きかけが行われます。しかし、人間が言語を使って考え、会話をする以上、「言語化された判断基準」つまり「パーパス」が必要になるのです。日本人特有の「今までこうしてきたから」「言わなくてもわかるでしょ」といった、暗黙のルールや慣習を継承しているだけでは、真のブランディングはできません
パーパス・ブランディング ~「何をやるか?」ではなく、「なぜやるか?」から考える

まず、フットボールクラブの存在意義をしっかりとつくり、ブランディングすることの重要性を感じていました。
これだけたくさんのクラブが存在する中で、なぜフットボールクラブをつくるのか、フットボールでなにができるのか、フットボールとはなんなのか。これらを深く問い直しながら、パーパスを考えていました。
そこで峯村さんが携わる一冊と出会います。

パーパスモデル: 人を巻き込む共創のつくりかた

持続可能な社会のためには、ビジネスモデルだけでなく、「パーパスモデル」が必要であると、そしてこの本にはパーパスモデルの作り方が記されていました。
峯村さんは、常に高い視座でフットボールクラブの存在意義を問い、高い視座で静かに語っていました。
「僕らが大事にすべきなのは、グローバルアジェンダに接続しながら、フットボールの価値を表現していくこと。その為にクラブをどう作るかがとても大切」
私は、そんな峯村さんの影響を多分に受けながら、フットボールクラブとして社会にポジティブな影響を与えるための行動を模索していくことになります。
そして手に取った本がこちら👇

ネイバーフッドデザイン――まちを楽しみ、助け合う「暮らしのコミュニティ」のつくりかた

フットボールで人と人、人と社会を繋げるとは?

人々が暮らしを楽しみ、助け合えるまちをつくるのがネイバーフッドデザインの役割であると定義され、その取り組みの事例が豊富に描かれています。とりわけ私が本書の根幹となる姿勢に共感した一文を紹介しておきます。

私は、日本人はコミュニティ活動のための母体をつくるのがあまり得意ではないと思っています。終身雇用制や年功序列が文化的な背景にあることもあり、日本人は人の集団というと「ピラミッド型」、言うなれば軍隊式のつくり方をしてしまいがちです。ただその形は、ネイバーフッド・コミュニティにはふさわしくありません。だからこのあり方を変えていきたいとも考えています。ここは大事なところなのですが、ネイバーフッドデザインでは、旧来のしがらみのある暮らしを復活させよう、と考えているわけではありません。むしろ、しがらみ化しないつながりは何なのかについて考えています。
ネイバーフッドデザイン――まちを楽しみ、助け合う「暮らしのコミュニティ」のつくりかた

そして下記の見出しで展開していきます。
未来とゴールのデザイン、機会のデザイン、主体性のデザイン、場所のデザイン、見識のデザイン、仕組みのデザイン…

この本に書かれている事例を参考に少しづつ、行動を起こしていきました。
近所の公園をボールを持って回って、サッカーをしている子供たちに混ざって一緒にボール蹴って、ミニゲームをする時にゴールをペットボトルにしてみたり、こういうアイデアは子供たちと一緒に考えてデザインしたものだったりします。

世田谷ユナイテッドのモーニングパークフットボール企画にペットボトルミニゲームを組み込んでみたり。

そしてパークフットボールという事業構想が生まれたりもしました。
ボール遊び禁止の公園を有機的に使えるようにしていくための社会活動の一環として、フットボールクラブが起点になって取り組むことに意義を見出したからです。

デザイン案(峯村氏作)
デザイン案(峯村氏作)

このような取り組みを拡張するためのコンテンツやプロダクト構想も頭の中では進めていました。
そして、これらの事業を携えたフットボールクラブをプロダクトとして捉えた時に参考にした書籍がこちらです👇

新規事業を成功させる PMF(プロダクトマーケットフィット)の教科書 良い市場を見つけ、ニーズを満たす製品・サービスで勝ち続ける

なぜフットボールクラブでPMFの概念を入れるのか

なぜ、この視点を取り入れたかというと、私自身がアーリーステージ〜シリーズBのスタートアップ界隈で長年仕事をしてきたことが一つあります。
フットボールクラブという長年存在し続けているものに、このPMFという概念を適用することの意図は、新たに存在意義をつくるという視点を持っているからに他ならず、マーケット自体が変化していると感じていたからです。マーケットというよりもフットボールを取り巻く人々の価値観、もう少し俯瞰的に捉えると、日本社会で生活する人々の価値観が変わりつつあるからです。
人と人の関係性が希薄になり、人と社会が分断されつつある要因は多々ありますが、この現象に対して人々が違和感を感じ始めており、なにかしらのアクションを求め始めているという肌感覚を持っていたからです。
世代間の価値観の違いが可視化さつつあり、多様性を蔑ろにして生きていくことは難しくなる社会に更になっていきます。
SDGs、DE&Iという視点が社会にインストールされ始めている背景を考えても、これらを息をするように自然体で振る舞える集団になっていくことが、フットボールクラブにおいて重要になりうると考えていました。

これらの考え方をベースに、ボードメンバーを基軸に組織を作っていくイメージを持って、 CCO(Chief Communication Officer)として取り組んできました。
しかしながら、事業化に向けてということはつまり、収益性のない状態であり、無報酬でコミットできる範囲が限られていることから、上述した理由で離れざるを得なかったという現実があります。

クラブは離れますが、フットボールは常に私の日常にあります。フットボールの本質を追求し続け、フットボールを通じて、人と社会を繋ぐための企画を模索していきます。
その話もまた近々できるように準備していきたいと思います。

世田谷ユナイテッドを通じて出会った選手たち、スタッフのみなさん、応援しに来て声をかけてくれた皆さん、本当にありがとうございました。

世田谷ユナイテッドは、みんなで育み、繋がり合うクラブになれるポテンシャルがあると思います。少しずつ。これからの活躍を楽しみにしています。

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