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家族が出来ること・出来ないこと

家族員の誰かがうつ病のような精神疾患になると、他の家族には突然役割が急増します。
そして「家族だから」という呪文によって、周囲から色んな要求を突き付けられます。
しかし、家族だけで何もかも賄えるものではありません。

家族が病気になったとき、同居家族が出来ること・出来ないこと仕分けることが重要です。

1.「必要なこと」を4カテゴリに分ける

生活上・将来への備えも含めて、必要なことは山ほどあります。
しかしその全てが本人または同居家族だけでこなさなければいけないわけではありません。
まずは、

①病気本人が出来ること
②家族が肩代わり出来ること
③本人と家族が協力して取り組むこと
④専門家・第三者に任せること

の4つに仕分けましょう。
数字が大きくなるほど、問題は高度化・困難化していきます。


2.それぞれが出来ること

①本人が出来ること

症状が安定・回復していけば増えていく可能性はありますが、どんなにしんどい時でも本人にしか出来ないことがあります。
寝ることと食べること、薬を飲むこと、通院することです。
眠れなければ主治医に睡眠導入剤を処方してもらったり、少しでも食欲がわく食事を家族が用意することや、処方箋通りに服薬しているかの声かけをすること、通院同行も家族がやることは可能です。
しかし実際に、寝て、食べて、服薬して、主治医と状態について話し合うのは本人にしか出来ません。

②家族が肩代わり出来ること

病気になる前に本人が担っていた「家族内役割」が何かしらあったと思います。
これを、家族自身のキャパシティに応じて肩代わり出来ます。
例えば夫が毎日お皿を洗う役割だった→うつ病になって出来なくなった→妻が洗う、または食洗器を買う、のようなものですね。

同じく「会社に行けなくなった」として、夫の勤務先に妻が出勤するわけにはいきません。そこではなく、出勤出来ないことで減った収入をカバーする、などが可能かもしれません。

③本人×家族の共同作業

一つは病気本人の役割のサポートをすることです。一人ではしんどいから一緒に病院へ行く、一人で役所へ手続きに行くのが不安だから付き添う、などが考えられるでしょう。
病気以前より、夫婦で・家族で一緒に行動する機会は増えていきます。
これも症状の回復度合いで、そのうち家族のサポートが不要になります。家族にとってはとても大きな喜びと安心です。

もう一つは中長期的な将来設計です。これはどちらか一方だけが勝手に決めるわけにはいきません。

例えばうつで休職中に賃貸マンションの契約更新のタイミングが重なったとします。うつ療養中は大きな環境変化は回避したほうがいい、と言いますが、例えば家賃の支払いが過大だったり、療養には不向きな騒音が多い環境であるときは、相談のうえで転居も必要となるでしょう。
転居先も、いずれ復職するときに通勤が可能なエリアで検討しなければいけません。数年後に家族が増える(出産、介護など)可能性があれば、それも込みの計画となります。

家族同士でしか出来ない相談です。

④専門家・第三者に任せる

何よりも医学的治療は主治医にお任せするしかありません。本人と家族は、副作用や薬の効き方(期待した効果が出ているか)をちゃんと主治医へフィードバックすることが役割となります。

経済的に不安定なら、利用できるところから申請していきましょう。
例えば企業勤務していて社会保険に加入していたなら、最初は傷病手当金の申請→転職するなら失業手当金→1年半経っても状態が変わらない場合は障害年金の申請、となります。
障害者手帳を取得し、各種税控除を受けることも可能です。
通院が長期(数カ月以上)に及ぶ場合は、自立支援医療(精神通院医療)を申請して診察料と薬代の負担を減らしましょう。
世帯収入が大きく減った場合、公営住宅の利用も検討出来ます。その時、手帳保有者が居住予定者に含まれていれば抽選の当選率で優遇が受けられます。

自宅外の活動を試みたい場合は、地域活動支援センターの活用も可能です。ハローワークに相談して公的職業訓練を利用するのもいいでしょう。

またはリハビリ兼ねて障害者雇用枠での就業を検討するときも、ハローワークに相談します。
いきなり転職活動するのが不安な場合は、就労移行支援事業所で最大24か月のトレーニングを受けて(もっと短い期間の利用でもOK)再就職することも出来ます。

自分たちがどんな支援をどんな申請をすることで利用可能なのか、を知りたい場合は、まずは市役所の福祉課に相談しましょう。
事前に電話で相談しておくと、日時を予約した上で相談をすることも出来るので安心です。

3.家族が手を出さないほうがいいこと

困ったときは周囲に助けを求めることはとても大事です。
とはいえ、公的機関が何でもしてくれるわけではありませんし、家族・伴侶だから何をしていい、というわけではありません。
その線引きは、必ず事前に相談しておきましょう。

公的サービス利用時は、事前に説明を受けるので大丈夫だと思います。
問題家族間の「領域侵犯」です。

例えば通院同行して診察にも同席する場合。
家族は極力「黒子」になりましょう。
症状が重い時、主治医から「どうですか?」と聞かれても(この聞き方がそもそもどうなんだろうと思っていますが)、本人はすぐに答えられず、沈黙が続くことが多いです。
家族は「身内」のフォローのために本人より早く口を開いてしまい、結局本人と主治医がほとんど話さず、家族ばかり喋っている、と言う状況が生まれます。
これでは誰のための受診か分かりません。余程の状況になるまでは後ろで黙ってみていましょう。

精神疾患の療養期で重要なのは「変化」の時です。
少し前までは「出来ない」のが当たり前だったことへ、本人がやる気を出すことがあります。
これが、少しずつ出してくれればいいのですが、突然ジャンプします。
いきなり夕食時に「明日から会社行く」とか言い出したりします。
家族は驚きますよね。当然です。
驚いて止めようとします。
しかし、ここで安全を取って止めてしまうと、「やっぱり駄目なんだ」と、出しかけた頭を引っ込めてしまい、またしばらく何もできない状態が続いてしまいます。
成功するかしないか、はどっちでもいい、多分ほぼ100%失敗するけど(笑)、本人が「やりたい」と思ったことが大事で、失敗も、してみないと多分納得しません。納得してもらうためにも、「やめとけ」とか言わないで、本人に任せましょう。

4.まとめ

①生活上の必要な作業4カテゴリに分ける
②本人は自分の寝食+服薬、家族は役割交代、共同で将来設計を考えて、もっと難しいことは第三者や専門家を頼る
③家族間で「領域侵犯」しない

精神疾患に限らず、病人が出れば家族はしんどいです。1人分以上の負担と、心配・不安、自分の増えたストレスへのケアなど、やることが増える一方です。
だからこそ、必要ないことまで背負わないよう、キャパオーバーしないよう、出来ること・出来ないことをしっかり見極めることが重要です。


オンラインカウンセリング惠然庵
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