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【 吉永小百合さん 】

ペンネーム Mr.K

 はじめて吉永小百合さんを見かけたのは、
35年ほど前のテレビのワイドショーだった。
それは、小百合さんのことを伝える内容ではなく、
誰かのお葬式に多くの芸能人が駆けつけている映像の中の、
車から降りるワンシーンが流れただけのものだったのだが、
「誰だ?このすごい美人は」と、目が釘づけになった。

 それからしばらくして、かの方が
「世に名の轟く」吉永小百合さんなのだと知った。
 巷に、「サユリスト」という、
あまたの信者を生んだ張本人をはじめて知ったのだけれど、
そのときすでに私もサユリストとなっていたというわけである。
 タモリさんがサユリストであり、
小百合さんに会いたいがために同じ大学に入学したことは
わりと知られていることだが、
念願かなってテレビのトーク番組で対談したとき、
あのタモリさんが、赤面し、まったく目を合わせられなかった。
 そのとき、タモリさんは、
「小百合さんのどこが好きですか」とのインタビューに、
「たたずまいが 」と答えていた。

ある日、なにげに新聞を眺めていると
「吉永小百合、映画DVD発売記念手渡し会」の記事が。
テレビへの露出さえ控えていた小百合さんにお目にかかれる!
天が最高のプレゼントを与えたもうた!と心が高鳴った。

 その開催日は先輩との会食を予定してた日であったのだが、
先輩に懇願し会場へご同行願った次第で、
会場は日本橋のホテルの大きな部屋であった。
 多数の来客なので、DVD手渡しの時間は一瞬であろうと思われ、
「握手なんかできるのかな、できないだろうな」などと考えながら
順番を待った。
 そしていよいよ、その時はやってきた。
 小百合さんは和服の立ち姿で、
「ありがとうございました。」とDVDを手渡してくれ、
頭を下げられた。
思わず、私は
「こちらこそありがとうございました」と頭を下げた。
 これは、「小百合さんがこういう場に出てきくれるなんて、
ありがとうございました。」という意味のつもりだったのだが、
舞い上がっていたせいで言葉足らずだったのは否めない。
 すると小百合さんは、一瞬キョトンとした顔をしたあと、
その意味を理解されたようで、おだやかな笑顔を浮かべ、
再度、しかも深々と頭を下げられた。
 天下の大女優が、通りすがりの一般人に二度も頭を下げるなんて...
すごい人だなと思った。
「 惚れ直してまうやろ! 」

 小百合さんのお顔・姿がどれほど美しかったのか、
ここでお話できない。
なぜなら、舞い上がっていた私はそこの記憶がないのである。
キョトンとしたお顔も、おだやかな笑顔も、
おぼろげなイメージだけである。
 ちなみに、写真撮影を頼んだ先輩はそのカメラ操作に手間取り、
小百合さんと私が米粒大ほどに映るスナップショットを、
ただ一枚撮ったのみであった。( 先輩!! )

つかの間の、一方的な片想いでの、逢瀬であった。
 ただ心に憶えているのは、
小百合さんの素敵な「たたずまい」である。

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