読書の記録#11 ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー(新潮文庫) 伊坂幸太郎(著)

映画も傑作な、逃亡劇

あまりにも有名な作品なのでご存じの方が多いだろう。
私自身、本は初めてだったが映画は10年前に映画館で観ている。ちなみに映画も大変面白いし、キャスト陣が大変豪華である(堺雅人、竹内結子、香川照之ら。出番多くない役に伊東四朗がいる等とにかく豪華。敬称略)。

本を読んでの感想としては変なのだが、読了後真っ先に出た感想は「映画完成度高いな」だった。往々にして実写化すると重要なエッセンスが抜けてしまったり、空気感が変わってしまったり、キャストがイメージ通りで無かったりといった現象が起きがちであるが、小説の空気感と映画の空気感がほぼほぼ一致している。特にメインどころの堺雅人と竹内結子(と、メインでは無いが重要な役割の柄本明)は作品から飛び出したのではないかと思うほどイメージに近い印象である。
本の感想文で書くことではないが、映画も大変オススメである。

さて、本作品についてだが、上記の新潮文庫のHPに記載されている紹介文をそのまま引用する。

衆人環視の中、首相が爆殺された。そして犯人は俺だと報道されている。なぜだ? 何が起こっているんだ? 俺はやっていない──。首相暗殺の濡れ衣をきせられ、巨大な陰謀に包囲された青年・青柳雅春。暴力も辞さぬ追手集団からの、孤独な必死の逃走。行く手に見え隠れする謎の人物達。運命の鍵を握る古い記憶の断片とビートルズのメロディ。スリル炸裂超弩級エンタテインメント巨編。

これが全てである。
基本的には逃亡劇なのだが、人間味のある人と人の繋がりのストーリーでもある。過去を想起しながら人が動いていく面白さ、基本的に逃亡しているので臨場感あふれる展開の面白さ、そしてミステリーにカテゴライズされがちな本作だが肝心の真相は全然分からない面白さ。
"首相暗殺"こそ現実味が無いが、見えない大きな力の恐ろしさ・やるせなさや、世間の無責任さ、マスコミの騒ぎ方等々、そこに描かれる世界は生々しく、実際に首相暗殺事件が起きたらこんな具合なのだろうかと思わされる。コロナ禍でやるせない思い、もどかしい思いが多く募る今こそこの作品に強く共感できるように思う。

1.2周してほしい本

ページ数は多めで700ページ近いのだが、テンポがよくハラハラドキドキしながら読み進められるので、気付いたらかなり時間が経っているタイプの作品。構成が面白く、先に関連資料を読んでから本論を読むような構成になっている。関連資料を読んでいるうちは何が何だかサッパリになりがちなので、しっくりこない人はサラッと流し読みで良いと思う。本作は5章構成となっているが、全て読み終わった後に1~3章を是非もう1度読むことをお勧めしたい。伏線の回収や、新たな謎を感じられると思う。分量としても多くない章なので、本を1.2周する程度である。
小説を読んでから映画でも、映画を観てから小説でも楽しめる作品なので、是非両方ご覧いただきたい傑作である。
一般的には小説→映画をオススメされている作品だが、個人的には映画→小説をオススメしたい。小説の方が説明されているので、映画でどこまで気付けるかという挑戦的な面白さがあると感じるからだ。私自身は映画→小説→映画としたくなったので、近日中に映画をもう1度観ようと思っている。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?