Kei Kobayashi

株式会社CureAppでデザイナーをしている精神科医です。 「医療者のスライドデザイン…

Kei Kobayashi

株式会社CureAppでデザイナーをしている精神科医です。 「医療者のスライドデザイン プレゼンテーションを進化させるデザインの教科書」を2023年2月6日に出版しました。 https://amzn.asia/d/cnl18LT

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  • デザインと医療

    デザイナーで精神科医をしています。デザインは医療に、医療はデザインに何ができるのか?つれづれとつづっていきます。

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デザインと医療の2023年個人的ふりかえり

大きな手ごたえを感じた一年こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。 毎年加速度的に速まっている一年ですが、2023年も怒涛の勢いで年末を迎えました。 私が数年前から強く抱き続けてきた「デザインと医療をつなげたい」という思いが、さまざまな形で結実した意義深い一年でした。 年初にこのnoteが多くの人に共有いただけたことにはじまり、4年かけて書いた医療者向けの書籍の出版、Goodpatchとのヘルスケア勉強会、そしてDesignshi

    • ユーザーインタビューに精神科医のテクニックを活用する

      ユーザーインタビューと精神科診察こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。 先日、ある重い疾患で治療中の複数の方にインタビューを行いました。 病歴や生活習慣について尋ね、アプリのユーザビリティについて尋ねるインタビューでしたが、症状が重く、命にも関わる疾患であったため、準備段階から多くの配慮と緊張を伴う仕事となりました。 私はテスト計画、被験者とのやりとり、アンケート作成、インタビューを担当し、真摯に関わってくださる協力的な被験者に

      • デザインも医療もなにもわかっていない

        わかっている人のように振舞っていないか?こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。新年の記事として書こうとして気がづけば2月も半ばになってしまいました。 2023年はデザインと医療の人として必死で存在感をアピールし続け、多くのおもしろい人に出会うことができた価値ある一年でした。 そして前回の2023年まとめ記事を書いたとき、ふと大きな思い上がりに気づきました。 「なんか『医療とデザインがわかっている人』みたいになってないか?」 自

        • デザイナーが患者を理解する

          インクルーシブにユーザーを理解できるのか問題こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。 本記事はCureAppアドベントカレンダー14日目の記事として投稿しています。 インクルーシブデザインという概念が浸透する中で、デザイナーは自分たちが想像することすら難しいユーザーへの共感と理解を求められるようになりました。 以前Goodpatchとの勉強会でも議論しています。 しかし、人の抱える課題はあまりにも多く「インクルーシブに理解しまし

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          20本

        記事

          Designship2023公募セッション「対称な医療をデザインする」後編

          Designship2023で登壇したプレゼンテーションを公開しています。前編はこちら。 「情報の非対称性」をどう超えていくか?前編では新しい情報テクノロジーを用いて医療コミュニケーションを進化させる方法について、事例と可能性を紹介しました。 しかし、技術的に可能であればすぐに実現できるものでしょうか? ここからは現実の話をしましょう。私は今の仕事を通じ、医療現場に新しい技術を実装することの難しさを身をもって痛感しています。どうやら、新しければ使われる、魅力的なデザインで

          Designship2023公募セッション「対称な医療をデザインする」後編

          Designship2023公募セッション「対称な医療をデザインする」前編

          今年最高の体験でしたDesignship2023CureAppでデザイナーをしています精神科医師の小林です。 2023年9月30日-10月1日に行われたDesignship2023に公募スピーカーとして登壇しました。 これまで経験したことのない華やかな舞台に立つことができ、優秀で魅力的でデザインを愛する多くの人に出会うことができ、そして自分の考えてきたことの価値を認めてもらえた最高の体験でした。 後日動画も公開されますが、1日目の公募セッション「対称な医療をデザインする」の

          Designship2023公募セッション「対称な医療をデザインする」前編

          Designship2023で医療とデザインの話をします

          こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。 いつか登壇したいと思っていたDesignship2023の公募スピーカーに採択され、登壇できることになりました。嬉しい! 「対称な医療をデザインする」をテーマに、情報の非対称性からなる医師と患者のコミュニケーションはこのままでいいのか?情報テクノロジーの進化は医療をどう変えられるのか?その障壁には何があるのか?などをギュッと凝縮してお話しします。 考えるほどにデザインによる医療への介入は

          Designship2023で医療とデザインの話をします

          「飽きる」ヘルスケアデザイン

          飽きないデザインを考えるのに飽きてきたこんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。 日々健康のための行動変容と向き合っており、どうすればユーザーが飽きずに習慣化できる体験が実現できるかに頭を悩ませています。 「どうすれば飽きないか?」を突き詰めていく中で千差万別の人間に対するパーソナライズ地獄に陥っているので、反対に「どうすれば飽きるか?」に寄り添ったデザインを考えてまいります。これならいくらでも思いつきそうです。 前提今回のユーザ

          「飽きる」ヘルスケアデザイン

          CureApp×Goodpatchヘルスケア勉強会をはじめました

          CureApp×Goodpatchこんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。とても興味深い試みを始めたのでご紹介します。 治療アプリで新しい医療に貢献するCureAppと、デザインカンパニーであるGoodpatchが協働し、2023年3月より合同勉強会を開始しました。 健康、医療、デザインというテーマを軸にお互いの知見を共有し、議論を重ね、ただ知識を増やすだけでなく組織間の文化交流や非言語的なコミュニケーションも含めた刺激的な勉強会

          CureApp×Goodpatchヘルスケア勉強会をはじめました

          なぜ診断名は医師に聞かないと教えてくれないのか?

          受診をしても診断名がどこにも書かれていない?こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。 先日友人と話していたときに「どうして病院を受診しても病名の記録は患者にもらえないのか?」という質問されました。たしかに。 どの病院を受診しても薬に関する説明書や診療内容の明細書はもらえますが、その根拠となる診断名はどこにも書かれていません。自分が病気かどうかを知りたくて病院を受診したのに、自分の病気の記録は渡してもらえない。依頼すれば診断書は書いて

          なぜ診断名は医師に聞かないと教えてくれないのか?

          「PHRにデザインを」という切なる願い

          PHRという理想の未来こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。 PHR(Personal Health Recording, Wikipedia)というものに以前から関心を寄せています。さまざまなデバイスを活用して個人の健康に関するデータを集約し、医療や健康管理に役立てようとする試みで、一般企業による開発だけでなく、数年前から国家戦略としてもインフラ整備が進んでいます。 ビッグデータやAIといったモダンなキーワードと相性がよく、

          「PHRにデザインを」という切なる願い

          ヘルスケアアプリは「ありがとうございました」を言うべきか?

          UX Writingの議論こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。たまには少し仕事の話を。 医師が患者に処方して使う治療アプリⓇの開発に携わっており、先日ユーザーが行う作業に対してUIが「ありがとうございました」と返した表現について議論になりました。 「UIはたいていお礼を言わない」派と「いやUIもお礼くらい言っていいんじゃない」派で衝突し(ちなみに私は言わない派)、じゃあ医療現場ってどうだったっけ?という流れになりました。患者が治

          ヘルスケアアプリは「ありがとうございました」を言うべきか?

          医師の仕事はなにが忙しいのか?

          忙しいイメージはあるが、医師は本当に忙しいの?こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。 医師の働きすぎは古くから多くの医療現場における課題であり、様々な事情により深刻化しています。この現状を打破するため医療法の改正が行われ、2024年4月から医師の時間外労働の上限規制が始まるようです。しかしこれは基本的に「働きすぎないようにしましょう」という号令であり、どうすれば働きすぎずに済むかにはあまり触れられていません。現場の事情が複雑に異な

          医師の仕事はなにが忙しいのか?

          デザイナーが「医療を理解する」とは?

          デザインに医療を伝えたいこんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。 医師でありデザイナーである身として、医療の世界にデザインの価値を伝える活動をしています。その一方で、デザインの世界に医療を伝える価値もあるのでは?と最近考えています。 改めて医療者ではない立場で医療を眺めると、ブラックボックスの部分がかなり多く、アクセスできる情報も難解かつ膨大であるため、理解するために多大なコストが求められます。 その一方でヘルスケア分野のデジタ

          デザイナーが「医療を理解する」とは?

          研究プレゼンテーションのデザイン。どうすれば面白くなるのか?

          面白い研究プレゼンテーションがしたかったこんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。 先日「医療者のスライドデザイン」という書籍を出したので、今回はプレゼンテーションについてお話しさせてください。 現在デザイナーをしていますが、かつては臨床や基礎研究の現場に所属し、研究会や学会でプレゼンテーションをする機会がありました。症例や研究内容について発表するのですが、自分で話すたびに感じていたのは「いまいち面白くならないな」という思いでした。

          研究プレゼンテーションのデザイン。どうすれば面白くなるのか?

          プレゼンテーションから医療のデザインリテラシーを底上げしたい

          デザインはまだ医療に貢献しきれていないこんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。 VUCAの時代と言われて久しく、多様かつ高速に変化するユーザーの価値観に対応するため、デザインの重要性が社会に浸透し、デザインの概念そのものも進化してきました。 医療という業界も社会の変化に敏感な性質を持っているため、学術分野を中心に日々ダイナミックな発展を続けています。しかし、改めて外から眺めたときに、生命科学、工学、社会科学などに比べて、デザインの

          プレゼンテーションから医療のデザインリテラシーを底上げしたい