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プレゼンテーションから医療のデザインリテラシーを底上げしたい

デザインはまだ医療に貢献しきれていない

こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。

VUCAの時代と言われて久しく、多様かつ高速に変化するユーザーの価値観に対応するため、デザインの重要性が社会に浸透し、デザインの概念そのものも進化してきました。

医療という業界も社会の変化に敏感な性質を持っているため、学術分野を中心に日々ダイナミックな発展を続けています。しかし、改めて外から眺めたときに、生命科学、工学、社会科学などに比べて、デザインの寄与がまだまだ低いと実感しています。

医療の民主化というワードが聞かれるようになり、医療の外からの新しいサービスが活性化していますが、新しいデザインが医療の中心に入り込むのは容易ではありません。その理由として

  1. 多くの規制により参入障壁が非常に高い

  2. 医療自体の構造が複雑であり変化に莫大なコストがかかる

  3. 医療者全体にデザインへの関心が低い

1と2については過去の記事にバラバラと書いてきました。

今回は3の対策について言及していきます。

医療のデザインリテラシーを底上げしたい

医療者はさまざまな学問を学びますが、デザインを体系的に学ぶ機会はなく、もちろんデザインの現場に入ることもほぼありません。
医療は常に課題解決の連続ですが、学術的な方法論と医療独自の経験知による解決法をトレーニングされており、そこにわざわざデザインの発想を入れ込もうとはしていません。職場は無限の足し算によって生まれた複雑なデザインに囲まれており「医療はこんなもの」という認識すら生じています。

今の医療にデザインへの関心が高くないからこそ、デザインを伝えていくことで新たな価値が生み出せると考えています。
ではどうすれば、医療のデザインリテラシーを高められるのでしょうか?

プレゼンテーションをデザインの入口にしたい

ふだんの業務で意識されないデザインですが、多くの医療者がデザインに直面させられ、頭を抱える課題があります。それがプレゼンテーションです。

優れたプレゼンテーションを作るためには、自分の話す課題の本質を理解し、観客というユーザーを意識し、価値を最大化する必要があります。そのためには情報を間引き、レイアウトを整理し、認知の特性を応用することが求められます。
これらはすべてデザインのメソッドであり、行き当たりばったりに作られたプレゼンテーションで欠落している発想です。

プレゼンテーションのデザインを学ぶことにより、デザインのおもしろさを知ってもらう。そして医療全体のデザイン課題に関心を持ってもらえたら、個々の医療者がそれぞれの発想でデザインと向き合えるようになるかもしれません。

私は以前からプレゼンテーションのスライドデザインに関する研究を行っており、先ごろ「医療者のスライドデザイン」という書籍を出版しました(完成までに4年かかりました。大変でした)。

執筆当初は「医療のプレゼンテーションレベルを底上げしたい」という思いでしたが、その間にデザイナーになり「医療のデザインリテラシーを底上げしたい」にアップグレードされています。

すでにデザインに関心のある医療者もたくさんいると思います。医療とデザインをつなぐハブとして、私が役に立てると嬉しいです。

本の内容を一部紹介。こんなことが書いています。


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