第16回 実写版『嘘喰い』イチ押しポイント集【レビュー】

始めに(注意書き)

はじめましての方ははじめまして。そうではない方はいつもお世話になっております、吹井賢です。

コラム『吹井賢の斜に構えて』第16回は、実写版『嘘食い』の一押しポイント集です。


最初にお断りをば。

※下記の内容は吹井賢の感想に過ぎません。
※なお、僕は漫画連載時からのファンで、当然原作は全巻持っていますし、なんなら、外出先で暇な時に読み返したいなーと電子書籍で部分的に買う(『迷宮勝負』編などの数巻を纏めて購入していた)、ということを繰り返した結果、スマートフォンの中にも全巻揃ったくらいのファンです。
(馬鹿なのかな?)

それでは始めます。


「実写版『嘘喰い』、確かに見たぜ。ただし味は……」って話

というわけで、今回は現在絶賛公開中の映画、実写版『嘘喰い』のレビューです。

レビューというよりも、ファンとして、「ここが良かった!」のまとめなので、タイトル通りに「イチ押しポイント集」というのが正しいでしょう。

ご存知の通り、この『吹井賢の斜に構えて』の第一回は原作の考察でした。(仮にも小説家なのに小説に関することでもなんでもない)(しかも他社さんの作品)

そんな僕の実写版イチ押しポイント、是非、食べていってください。


横浜流星版”斑目貘”

正直、横浜流星氏が演じる斑目貘は、原作とは違うイメージながら、結構好きです。
故に「横浜流星版」と書いた次第です。

公式サイトでは、
「うまく表現できる言葉が見つからないのですが、あの世界観を創ることができる迫先生は天才です」
とコメントされています。
これは本当にその通りですし、その読み込みがあればこそ、横浜流星版の斑目貘ができあがったのだと思います。


ぶっちゃけ、賛否ある演技をされていたと思うのですが、これは製作サイドの解釈によるところでしょう。

僕のイメージでは、『斑目貘』というキャラクターは、「クールで飄々とした男ながら、おちゃらけた部分もある」という感じなのですが、恐らく製作サイドの解釈は逆で、「おちゃらけた男ながら、ここぞという場面ではクールに決める」というものなのです。

これはどちらが正しいというわけではなく、受け取り方、解釈の問題です。

「貘さんはハイタッチしてガッツポーズなんてしないよ!」という意見もあるとは思いますが、原作においても、梶ちゃんと一緒にAVを見る、みたいな男子大学生的ノリを見せているので、やはり解釈次第でしょう。


僕は推理小説が好きで、その実写映画も見る方なのですが、実写の醍醐味って、「役者をはじめとするスタッフがどのようにキャラを解釈するか」だと思います。

例えば、『シャーロック・ホームズ』は世界で最も有名な探偵の一人だと思いますが、それをどのように描き出すかは実に多様です。

一番最近だと、ロバート・ダウニー・Jr版になるのでしょうか?
あれは少し、ワイルドな感じのホームズでしたよね。
(初っ端からボクシングしてるし)

けれども、「いやいや、シャーロック・ホームズってのはもっと落ち着いた雰囲気の男だよ」という意見もあるでしょうし、それも正しいと思います。


なので、僕の原作のイメージとは確かに差異がある描かれ方をされていましたが、横浜流星版としては良かったと思います。

実写版には「あんたの嘘、喰ってやるよ」という、原作ファンが知らない決め台詞があったわけですが、これも、勝負前の絵的なかっこよさやわかりやすさを重視し、追加されたものだと思います。
横浜流星氏の演技も決まってましたしね。

ただ、それはそうとして、僕は「あんた、嘘つきだね」という原作の決め台詞の方が好きですし、実写版から『嘘喰い』を知った方は、是非原作も読んでください。

実写版の決め台詞は勝負前に敵に向けて言い放つものですが、原作の決め台詞は色んな場面で敵味方関係なく告げて、その差も面白いところです。


良い感じに実写に落とし込まれた夜行さんと佐田国

「この映画で良かったところは?」と訊かれたなら、迷いなく「夜行さんと佐田国の演技」と答えると思います。
この二者の演技は本当にめちゃくちゃ良かったです。

村上弘明氏、三浦翔平氏の演技はお世辞抜きにすべて見所です。


特に、三浦翔平氏――つまり、佐田国はもっと見たかったです。

『佐田国一輝』というキャラクターは実写化にあたり、キャラ設定が変更されているわけですが、恐らく三浦翔平氏ならば、原作通りの佐田国でも似合ったと思います。それくらいにキャラクターとしての迫力、圧が際立っていました。


夜行さん役の村上弘明氏は、アクションシーンが凄かったですね。

「『無敵の死神』に相応しいように鍛え直した」とコメントされていますが、鬼太郎君とのバトルシーンは、あの数秒の攻防のためだけに見直したいと思わせるほどでした。
もっと長い尺でも良かったと思うのですが、夜行さん、マジで強いので……。
(原作でも本気を出した後は一秒でケリを付けた)


佐田国のキャラ変更と謎の男

鑑賞中、「ここすげえ批判されそうだな~」と思った一つが佐田国のキャラクター設定の変更です。
原作未読の方への配慮として詳細は伏せますが、結構大きく変わってましたよね。

その分、批判も大きいでしょうが、僕としては面白いキャラになったな、という印象で、気に入っています。


かつての佐田国はロマンチストな科学者だった、というキャラ変更が、「世界平和」というキーワードに繋がり、貘さんとリンクしているのは、正直、滅茶苦茶に面白いと思いました。

ラストのハンカチ落としもそうなのですが、製作サイドの方々は最後まで読み込まれて作品を作られたのだと思います。

原作にも、ギャンブルの目的を尋ねられた貘さんが「世界平和」と応じるシーンがあります。
その真意が解るのは大体、49巻あたりなのですが、その答えがどういう意味だったのか、知りたい方は是非、漫画を読んでみてください。


佐田国に賭郎を教えた草波渉という謎の男も、本当に謎なのですが(何せ原作にいない)、原作漫画のこの後の展開に出てくる『アイデアル』『悪徳者達』の刺客なのかな?と考えるとしっくり来るので、僕はそう思っておくことにしました。

だとしたら、佐田国の過去も、財務大臣の仕業ではなかったのかもしれませんね。


実写版『嘘喰い』、その味は……

というわけで、実写版『嘘喰い』のイチ押しポイントでした。

無論、批判したい部分も多くあったのですが、悪いところを列挙しても仕方ないですし、何より一応はプロの作家である人間が批判するということは、「自分はこの作品より面白いものが作れます!」と宣言しているに等しいと考えているに等しいと思っているので、そこら辺は語らないでおきましょう。

不満がなかった、と言えば嘘になるので、言いません。
横浜流星版”斑目貘”に食べられちゃうので。

そういったわけで、実写版『嘘喰い』のレビューでした。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

僕もまたギャンブルもの書きたいなあ。


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「あんた、嘘つきだね」

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