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#homelab のすすめ - 家で研究をするために '作る編'

MITメディアラボの中垣拳です。

新型ウイルスの影響で、アメリカは3月中/下旬より外出自粛要請が広がっています。MITでも学部生の強制退去・ラボの閉鎖など3月中旬から急激に状況が変化しました。その流れはTwitterのモーメントにまとめています。

上のモーメントで記している通り、ラボの閉鎖が決まってから、 #homelab というハッシュタグを使い、「いかに家をラボ化するか?」という事をを考え、自分なりに実行・試行してきました。

今日本でも、米国から2週間ほど遅れて、ラボが立ち入り禁止になり、在宅での研究の必要性に迫られていると耳にします。緊急事態宣言も出ましたね。。そういった意味でも、このタイミングに、日本語で、僕なりの思考や試行をまとめてみる価値はあるのかなと思い、このnoteを書き始めた次第です。

他にも、在宅ワーク系などのTipsが色々と既にあるかと思いますが、 このnoteでは、研究(特に筆者の分野的に、ハードウェア・ものづくり・インタラクション系)にフォーカスするので「書類関係の作業とか、コーディングとかすればいいやん」的な当たり前な話は避け、ラボでのリソース(機材・人etc)が必要なものを中心にまとめます。筆者の分野的に実験研究系など、カバーてきてない分野もあります。

今回のnoteは前編の'作る編'、後編は'評価する・繋がる編' (の予定)。

細かなノウハウにも少し触れますが、それよりは、広めの考え方やアプローチ・姿勢を大まかにまとめることに主眼を置いているので、広く他の分野にも応用できれば幸いです。

*1 自分なりの #homelab 的な取り組みやノウハウ(あるいは困難や悩みなども)を、Twitterなどでハッシュタグをつけてぜひ共有してみてください。物理的に離れた現状でも、 #homelab を通して新たな繋がりが生まれるはず。

(弊ラボの中でも、Slack上で、それぞれの #homelab の様子を紹介し合うことで、新たな繋がりが生まれています。
*2 明言しておきたいのは、健康・命が何よりも第一です健康あっての研究。少しでも体調がおかしければしっかりと休みましょう。

1. 作る編

僕のいる分野(HCI = Human Computer Interaction)では、手を動かしてものを作り・考えるプロセスが重要視されています。これを家で続けるにはどのような方法があるのでしょう? 

僕は運よく、ラボから高価な3Dプリンタを持ち帰らせてもらえましたが、ここでは [ラボから設備を持ってくる]以外の方法に触れていきます。
(*ラボの機材を持ち帰る場合は同僚や管理者の許可を得て管理しましょう。僕のいる研究室では、GoogleDocなどで管理・共有しています。)

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a. 安価な機材の入手

ものづくり研究に必要な機材について、安価なものを入手するというのは、今試す絶好の機会ではないでしょうか? 3Dプリンタなどは、この数年でもかなり価格が下がりながら、クオリティが申し分ないものも多いです。

僕もAmazonUSで見つけた155ドルの3Dプリンタを今回試しに買ってみましたが、そのクオリティ(ヒートベッドかつフレキシブルマグネットプレートつき!)には驚きました。

*以下はあくまで例として、日本のAmazonで、安価な機材をパパッと調べてリストアップしてみたものです。僕は実際に使ってないので保証しません。(値段は記事執筆当時)

・3Dプリンタ (3次元造形)

FDM方式 -> HopeWant (¥22,859)
光造形方式 -> ANYCUBIC (¥25,999)

・レーザーカッター/彫刻機 (二次元彫刻・切削)
KKmoon (¥15,999)
 [*1 毒素を発生させる素材の取り扱いに注意 ]
 [*2 レーザーのそのものの取り扱いも注意(カバー推奨/必須)]

CNC (三次元切削・回路作成)
RATTMOTOR (¥17,598)

オープンソースでのCNC/3Dプリンタのプロジェクトも多数存在しますが、時間もかかるので、安価なものを購入する方が研究のゴールを達成する意味では、近道なのかなと思います。

誰か #homelab のための安価3Dプリンタ、CNC、HMDとかの記事を書いてくれたら、ここにリンク貼ります!

(SFCの後輩の @Masaki_ponpoko が実機レビュー書いていた!)

b. 家に既にある家電等で代替・応用する

少し発想を転換してみて、家に既にあるリソースを使って、ラボにある設備を代替する、という思考は頭の片隅に置いておくといいかもしれません。

特に、前述の安価な3Dプリンタさえあれば、家電への専用アタッチメントを設計・造形することで、必要な用途を達成するためのカスタムな道具を作ることができます。下はドライヤーの例ですが、掃除機・コンロ・レンジ・冷蔵庫・ミキサーなど少し特殊な機能を持った機械が家にはたくさん偏在しており、それをどううまく研究・ものづくりに活用するかは、アイデア次第。。(こういった家電の応用方法のまとめも欲しいところですね!)

以下のような、家電を使ったファブリケーション系の研究をサーベイしてみるのも良いかもしれません。

c. 作るもののハードルを下げてみる

上記2点は、いかに作れる環境・設備側を工夫するかについてですが、作るもののハードルを少し下げてみる、という考え方も紹介します。

例えば、何か試作したいアイデアがあるのに、必要な機材が特殊すぎて家に導入できない場合、あるいはお金がそもそもない場合。そんな場合は、試作するもののゴール・ハードルを少し下げてみるのはいかがでしょうか。特に研究の初期段階の場合は(日本では新学期だし!)これが有効に働くはずです。

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過去にあるnoteの記事用に、上にあるような実装の尺度という図を作ったことがあるのですが、これでいう実装(注:この図ではアイデアを現実に近づけるあらゆる行為と定義)の方法を、左の方にシフトさせてみるという考え方です。実際に機能的なプロトタイプが作れなくとも、ローテクな方法で、アイデアを表現したり、実証したりすることができるのです。例えば、

- ペーパープロトタイピング -> link
- カードボードプロトタイピング -> link
- ビデオプロトタイピング -> link
 ...などなど

UI/UX系だと一番最初に学ぶ手法かもしれませんが、 #homelab だからこそそんなプロトタイピングに立ち返ってみてもいいかもしれない。このアプローチの良いところは、技術に縛られることなく、理想やビジョン、体験そのものにフォーカスして、アイデアを醸成できることだと思います。

中でも、ビデオプロトタイピングはパワフルで、機能的なプロトタイプよりももっと先の未来指し示したイメージをもって、人にインスピレーションを与えることができます。

作業ツールとしても、最近だと、スマホのアプリなどで、簡易にコマ撮りアニメーションなどの動画制作ができるでしょうし、かなり容易になってきているはず。(以下はLineFORMという研究を始めたときに作ったビデオプロトタイプ。

*これを機に、ビデオプロトタイピング的な作品を集めるPinterestボードを以下に作ってみました。まだ数点ですが、適当に追加していきます。

d. 外部委託的なサービス?

家に制作できる設備を持つだけでなく、外部に発注するのも一つの手段でしょう。日本だと、3DプリントだとDMM.makeとか、PCB基板だとP版.comとかでしょうか?

ちょっと海外生活も長く、日本でのオススメサービスなどありませんが、考え方としてだけメモ。

[こんなサービス・仕組みあったらいいのになメモ]

* 世界中の地域に点在するFabLabのネットワークを使って、うまく #homelab での研究の補助ができないか? (ソーシャルディスタンスを守った上での、機材利用許可などできれば...?)

* Fabのメルカリ(?)みたいなことできないか? -> それぞれの家庭等にある3Dプリンタなどの専門的な機械で、注文を受けて、即プリント・発送? 

* あるいはFabのUber(?)とか?-> 移動型のFab施設(トラック的な?)で注文状況に応じて、Fabしながら、街・都市を巡回・配達する。

*安価な3Dプリンタなどの機材レンタル。 -> こういうレンタルって結構高額な物が多いが、お金に困っている高校生・大学生でもレンタルできるぐらいの敷居の低いサービスはありえないか?

[重要] 安全第一、リスクに備える

最後に、家でハードウェア系の作業をすることはさまざまなリスクがつきものです。救急キットは最低限必ず用意した方が良いし、ラボから持ち込んだ機材・素材によっては、消化器まで完備するべきことも。

吉岡 純希さん(@Junky_Inc)が立ち上げられたFab Safe Platform wikiは、#homelab の安全性をチェックする意味で良いリソースになりそうです。

そして、万が一 #homelab の作業中に怪我をしてしまったときに、所属の機関ではサポート(お金・医療etc)できる仕組みがあるのか、についても念のため調べておいた方がいいかも。。

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うーん、 #homelab は奥が深いし、様々な考え方がある。そこが面白い。次回「評価する・繋がる編」のnoteで!


ex. 関連して、最近公開したこちらのnoteもぜひに。


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