背骨から散らばる骨へ―「推し」を失った後で―宇佐見りん『推し、燃ゆ』読解
1 はじめにかつてオタク用語だった「推し」は今では一般的に通じる言葉になっていると言って良いだろう。「推し」は、今では身近な存在なのだ。『推し、燃ゆ』は、そんな現代の「推し」文化を象徴する作品である。それでいて、現代社会の生きづらさを扱っている作品でもある。
本作は主人公のあかりの「推し」のアイドルがファンを殴ったことから始まる。ファンを殴った「推し」は、所属グループから離れ、最後には芸能界から離れていく。「推し」に生の意味を委ねていた主人公のあかりは、「推し」がいなくなる