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朝なんて、飲み明かした夜でしかなかった

海沿いの曇った空に、品の無いスーツ、金髪にピアスだらけで繁華街を歩く酒臭い若者、それが10年前の僕だ。

学生だったその頃に写真家のアシスタントはしていたけれど、師匠は音楽家でもあった為に、写真の仕事なんてほとんど行った事がない。一緒にずっと音楽をしていたし、夜は飲めない酒を飲みに連れて行かれ、アシスタントを辞めて大学を卒業した後、就職もせずに夜のお兄さんをしていた。

そもそもが夜型だったこともあって、朝陽をゆったりと眺めることなんてまずなかった。今となってはお酒を飲むことはほとんどないし、日の出と共に目を覚ます。田舎をスーパーカブで延々と走りながら、あてどなく彷徨う写真家もどきをしている。

十和田湖での朝焼けを眺めながら、十年ひと昔とはよく言ったものだなと、ふと思った。


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847字

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