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誤訳?:映画「ローマの休日」

誤訳?:映画「ローマの休日」

某大学の社会人向け講座でシエイクスピアをテーマにしたものをここ数年、受講している。その講師の方から目から鱗のお話を伺ったので、今回は短く書きたい。

日本最大の誤訳はGODを(主ではなく)神と訳したことだと言われているのはご存じの方も多いであろう。映画「ローマの休日」もそうであることが分かった。

この映画は筆者が生まれる前にできたので上映時は当然観ていない。テレビでは結構放映されていたと思うが、観たことは一度もなかった。勿論、グレゴリー・ペックとオードリー・ヘプバーン主演で、彼女がデビュー作でアカデミー主演女優賞を取ったこと位は流石に知っていた。講師のお話を聞いて今般Amazon Primeで(無料)で観みた。

誤訳というのは、Roman Holidayであって、A Holiday in Rome or Holidays in Romeでないことである。つまりローマで過ごした休日ではなく、(古代)ローマ流の休日であることが伝わっていないからである。最も「郷に入っては郷に従え」=「When in Rome, do as the Romans do」のように「ローマ流の休日」「ローマ人風の休日」「ローマ式の休日」という邦題は無理筋だろうから仕方がないだろう。「束の間のローマの休息」「束の間のロマンス」というのも今一。最近ならば変な邦題を付けずに英語そのままのタイトルにすると思う。

古代ローマ帝国では「パンとサーカス」と言われたよう、サーカスでは人間対動物、または人間対人間の戦い・剣闘が娯楽だった。映画「グラディエーター(Gladiator)」は映画好きの人なら知っているだろう。結局のところ、誰かの・何かの犠牲の上に楽しみ/Holidayが成り立つということで、映画「ローマの休日」にもその含意があるということだ。単に王女がつかの間の休日を取ったというのでは意味をなさない。

ところで。この映画のヒロイン候補は当初はエリザベス・テイラーだったと言われている。男優が大物のグレゴリー・ペックになったので、費用削減の観点から新人を使うということになり、オードリー・ヘプバーンを採用して結果的に大成功を収めた。また、カラーではなく白黒にしたのも費用削減の為のようである。

因みにこの映画の脚本家ダルトン・トランボは、有名なアメリカの赤狩り・マッカシー旋風に反対していたため、クレジットに名前を出すことができなかったようだ。彼には数々の有名な作品がある。
ダルトン・トランボのプロファイル(Wikipediaより)↓

映画の中で、アン王女(ヘプバーン)が詩を詠んでキーツ(John Keats)の詩だというのに対し記者(ペック)がシェリー(Percy Bysshe Shelley)だと訂正する場面がある。これはイングランドの三大?ロマン派詩人を知らないと意味が理解できないだろう。筆者も同じで、キーツではなくアイルランドのイェーツ(William Butler Yeats)の方に馴染みがある。

三大ロマン派詩人が正しいかはさておき、バイロン・キーツ・シェリーがその3人である。日本ではバイロン(George Gordon Byron, 6th Baron Byron)が一番有名だと思う。「事実は小説よりも奇なり」(Truth/Fact is stranger than fiction.)は誰でも知っていると思う(バイロンの言葉だと知っているかは別の話)。ギリシャ独立戦争に身を投じるたことでもよく知られている。与謝野鉄幹の「人を恋うる歌」にも登場する。

「あゝわれコレッジの奇才なく バイロン、ハイネの熱なきも 石を抱きて野にうたう 芭蕉のさびをよろこばず」
(注)
コレッジとはイングランドのロマン派詩人コールリッジ(Samuel Taylor Coleridge)のこと

それにしても、オードリー・ヘプバーンはとても美しく可愛かった。エリザベス・テーラーも若い時は素晴らしい美人であったが、可愛さでオードリーに軍配が上がり、この映画にピッタリだったと思う。

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