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「ボールを奪われた後の5秒間」について、こう考えると全て上手くいく!

 今日は「奪われた後の5秒」というテーマでお話させていただきます。サッカーというスポーツは「自分たちがボールを持つ」ことが大切です。サッカーというスポーツにおいて、何よりも大切なのはボールです。ボールを持っていないとゴールは生まれません。ボールが無いと攻撃することはできません。
 ポゼッションフットボールやポジショナルプレーと言われるサッカー哲学は、「ゴールを奪いに行く」ことよりも「ボールを奪われないようにする」ことを大切にします。
 しかし、カウンターサッカーや守備ブロック形成といった他のサッカー哲学でも言えることは、ボールを奪われたらすぐにでも奪い返す必要があるということです。
 これは、「①相手がボールを持っている限り、相手はいつでもゴールに向かうことができる」「②自分たちはボールを持たない限り、ゴールする可能性はない」ということから考えても、ボールを奪い返すことが重要であるということがわかります。
 
 つまり「どれだけボールに対する執着心を持てるか」が選手たちにとっては大切になってきます。「殴られても蹴られてもボールば奪わせない」くらいの気持ちが必要です。「相手がボールを持っていたら、とにかく相手を封じて、相手をゴールに近寄らせない」「一刻も早くボールを奪う」ということを考えて全力で奪いに行かないといけないのです。
 
 スペインではとても有名な話ですが、スペインではこんな考え方があります。「ボールを奪われたら、奪われた人が責任をもって奪い返しに行く」です。たとえ攻撃的なポジションの選手であっても、ボールを奪われたときは、自陣まで戻って自分でボールを取り返しに行きます。
 
 「奪われた後、5秒間は全力で奪いに行く」という言葉も有名な言葉です。もう数10年以上も前に生まれた考えです。グアルディオラ時代のバルセロナでは「鉄の掟」として有名でした。今ではどのクラブでも当たり前に行われています。
 現在は、さらに洗練されて「組織立ったハイプレス」になっています。この「奪われた瞬間の5秒」はとても大切です。言ってしまえば、この奪われた後の5秒で「走れない選手」は試合で戦えないとまで言われています。「ここで全力を出せないのであれば、サッカーというスポーツに本気になれていない」とまで言われます。
 
 僕が訪れたアルゼンチンのサッカークラブでは、「相手に突破されること」に対して、何も感じなくなったらサッカー選手としては終了と言われていました。相手に負けるということは「屈辱的なこと」だと考えられています。アルゼンチンでは、「相手を絶対に止める」「最後まで諦めない」「必ずボールを奪い返す」という気持ちがなければ、サッカーはできないのです。
 ここでは、「相手に突破される」という言葉を正しく理解する必要があります。簡単に言うと、「自分たちが守るゴールに、自分より相手が近い位置に立ってたら、これは抜かれた判定になる」と思っておいた方が良いです。「ドリブルで抜かれる」ことだけが「突破される」ではありません。
 ワンツーパスで相手がゴールに近づいたら、それは突破されたことになります。もっと言うと「ディフェンスラインの裏のスペースに走られて相手が自陣ゴールに近づいた」としても、「突破された」判定になります。
 自分が守っていないところから攻め込まれても、アルゼンチンの選手たちはイライラが爆発します。屈辱的な気分にもなるそうです。そもそも、負けている状況や、相手がボールを持っている状況が大嫌いな人たちです。「自分が抜かれなかったらいい」なんて考えはありません。つまり、同時に言えるのは、「自分が抜かれてゴールを奪われるということは、チーム全員がゴールを奪われたことになる」と同じであるということです。それほど「自分が相手に突破されるということは、最悪なことなのです。

 相手に抜かれる回数が多い選手は、一刻も早く、守備力を高めた方がいいと思います。攻撃か守備、どちらを優先的に高めるべきかと聞かれたら、これは即答で守備だと答えます。攻撃的なチームを作りたいと思ってる監督ほど、守備を考えます。
 車でも同じです。スピードを限りなく出したい時、アクセルを踏もうと思ったら、ブレーキの性能が高くないといけません。ブレーキの性能が高いからこそ、スピードが出せるわけです。守備力さえ高ければ、どこまでも攻撃的なチームをつくることができるのです。
 
 もう一つ注意してほしいことがあります。それは「相手を自由にプレーさせること」が当たり前になってはいけないということです。突破されていなくても、相手が目の前でボールを持って自由にプレーしてることに慣れてははいけません。自分の大切なもの(ボール)を奪われて、目の前で好きに扱われてるのです。これに対して「何にも思わない」「取り返そうとも思わない」なんて最悪です。
 もし目の前に家族がいて、誘拐されそうになったら、命がけで助けようとします。それと同じくらいの感情が、サッカー選手には必要です。もしも、ボールに対してそこまで熱くなれないのであれば、サッカーにもチームスポーツにも向いてないのでしょう。
 
 「相手に抜かれること」「相手を自由にプレーさせること」に対して、特に嫌悪感を感じる必要があります。「絶対にやらせない」という強い意志を持つことが大切です。
 
 「相手に抜かれない」「自由にプレーさせない」ためには、何よりもまず「たくさん走れないといけない」「速く走れないといけない」です。走り続ける「体力」と、速く走れる「スピード」が必要です。気持ちだけが強くても、体が伴ってないといけません。先に心が折れてサッカーをやめたくなるでしょう。そうなる前に、体力をつけて、スプリント能力や俊敏性を高めることをおすすめします。
 
 話を戻します。「ボールを奪われない」「すぐにボールを奪い返す」ためには、ボールの奪い方を明確にしないといけません。よくあるのが、とにかく「1人」でボールを奪いに行くという「守備的単独プレー」です。
 これをしてしまうと、チームのバランスが崩れる原因になります。そうならないように「チームで守備をする」意識を持つことが大切です。

 ただし、「他人任せにする」ことではありません。「ボールを奪い返す」「相手を自由にさせない」という強い気持ちを持ち、それを実現させるために、周りの選手の位置を意識するのです。最終的に自分が相手を止める、ボールを奪うために、周りを意識して罠をつくるイメージです。人任せになったり、1人で守備に行ったりするのは「最悪」です。
 
 守備というのは、相当な気持ちを持ってやるものです。体力的、フィジカル的な理由でできないのであれば、一刻も早く自分の体を修正する必要があります。そもそも気持ちの面でそこまで熱くなれないのであれば、厳しいですがサッカーをやめることをお勧めします。
 
 今日は「奪われた後の5秒」というテーマでお話させていただきました。

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