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湯沢町の絶望リゾートホテルがおもしろい話と、僕もそれを生み出した当事者だった話

めっっっっちゃくちゃおもしろいYouTubeチャンネルを見つけた。ものすごくニッチだが、社会の闇についてあまりにもすごい学びをくれるので、このチャンネルの動画で学んだことをドヤ顔でそこら中で語りたい。つまり、できればネタ元を教えたくない。セコい人間である。

だけど、今日は断腸の思いで紹介する。こんなに良いコンテンツは、もっと多くの人に見られるべきだから。


めちゃくちゃおもしろい。資産価値がゼロの限界ニュータウンを扱うチャンネル。

ひたすらまじめにジャーナリズムをやっているというよりは、限界ニュータウンをエンタメとして上手に仕上げている。このアイキャッチ画像を見るだけで「良い感じにふざけてるなぁ」とお分かりいただけるのではないだろうか。

アイキャッチでボケている。引用元: https://youtu.be/g8Vq4cRxiQo?si=ltGbcF4yZFge2BZ0


ちょっとボケてはいるものの、動画の作りは淡々としている。荒れきった限界ニュータウンの土地を、静かに紹介していく。


引用元: https://youtu.be/g8Vq4cRxiQo?si=ltGbcF4yZFge2BZ0


とはいえ、彼は「廃墟に入ってみました☆」みたいなしょうもない潜入系YouTuberとは違う、圧倒的な取材力で綿密にその地域の事情を探り出すジャーナリストとしての側面と、複雑なストーリーを分かりやすく構成して伝えるストーリーテラーとしての側面を両立している。

なんといっても取材力がすごすぎる。権利関係が複雑で気が遠くなるようなリゾートマンション崩壊の経緯を、一次資料に当たりながら丁寧に解説している。

https://youtu.be/Ai7Sn8w8vmY?si=S1ylRsavSBgmAjz3

彼は「現地の人への聞き込み」「登記簿謄本の精査」「マンション販売の新聞広告や折込チラシ」などの膨大な資料を活用しながら、「いかにしてリゾートマンションが滅びるか」といった問いに立ち向かっている。


https://youtu.be/zaTAwWuQ8dY?si=YbYrDUmQfQZXSTi0


そのあまりの取材力と熱意に、僕は舌を巻いた。しかもしれっと「私もこの中の一区画を購入したのですが」と自分でも買っている話が出てきてビビる。「これだからインターネットはやめられねえぜ…」とつぶやかずにはいられない。


特に圧巻だったのは、「区分所有という迷宮」シリーズだ。

なんと、全4本立てである。普通のYouTuberはあまり4本立ての動画を出さないが、彼はそれをやっている。我々ゆる言語学ラジオもよくやるので、親近感が湧く。

めちゃくちゃ長いので詳しくはぜひ動画を見てほしいのだが、新潟県湯沢町を例にして、リゾートマンションやリゾートホテルがいかに行き詰まりやすいか、そして実際いかに行き詰まっているかを丁寧に取材してまとめている。リゾートマンションは不動産サイトでよく10万円とかで投げ売りされているので、「資産価値ゼロなんだろうなぁ」と思っていたが、この動画を見ると「資産価値ゼロどころか絶望しかないな」と理解が深まった。次にリゾートマンションの不動産広告を見たら涙なしにはいられない気がする。

リゾートマンションはしばしば、こんな苦境に陥る。「建物の老朽化が進んで価値がなくなっていて、利用者もほとんどいない。所有者はムダに固定資産税と管理費を払い続けることになるので、取り壊した方がいい。だが、もはや所有者に連絡が取れず、住民の合意形成ができない」。地獄みたいな状態である。他人事なら滑稽で大笑いだが、自分事にするとあまりにも悲劇だ。


だが、それはまだマシな方らしい。世の中にはもっと悲惨な地獄がある。リゾートホテルの区分所有だ。


引用元: https://www.youtube.com/watch?v=p9CnuafbjCU


「リゾートホテルの1室を買って、ホテル運営会社から配当をもらう」という投資である。少額からホテル業に投資できる、おもしろい仕組みではある。ただし、これにはヤバい落とし穴がある。ホテル運営会社が潰れたときに、物件がデッドロックしてどうしようもなくなるのだ。


引用元: https://youtu.be/p9CnuafbjCU?si=Ij83OtE5gBRXXCWI

「自分が部屋を持っているはずの物件なのに、ホテルは破産管財人が管理していて立ち入りできない」という地獄の状況が生まれる。本当にどうしようもない


更にもっと地獄のケースすらある。「1室を複数人で共同所有する」みたいな形もあるし、「自分が購入した部屋は明確でなく、ひとつの建物を1250人で共同所有したことになる」みたいな物件もあるらしい。


https://youtu.be/zaTAwWuQ8dY?si=Yb9UBMZ0yWtGgDkw

そんなもの、誰がどう考えても手のつけようがない。高度に発展した資本主義社会の金融システムは、ありえないデッドロックを生み出すことがある。


僕もそれに加担したひとりだった

さて、僕はこの動画を、「すごい!社会の闇だ!」と気楽に見ていたのだけれど、途中から「ああ~、他人事とも言い切れない!」と苦しい気持ちになった。

何のことはない。規模こそ小さいものの、そういえば僕も昔は千葉の田舎の限界集落でリゾート提供サービスみたいなことをしていて、その会社を倒産させている。

「うわ~!ホテル運営母体が潰れるの、最悪だな~。所有者がかわいそうだな」と無邪気に動画を見ていたが、よく考えたら僕はかわいそうな人を生み出した方の当事者である。己の罪深さを自覚して、謙虚に生きていきたい。


そういうワケで、今日はリゾートホテルの権利(みたいなもの)を売ったにもかかわらず倒産させてしまった自分を振り返ってみよう。湯沢町の地獄物件と比較しながら、自分の罪深さを確認しよう。

以下、非常にセンシティブな話になるので有料になる。気になる方は課金して読んでいただきたい。湯沢町のリゾートホテルのように規模が大きくない、しょぼいリゾートビジネスのややこしい権利の話だ。個人でややこしい分譲権利を生み出してしまった人はあまりいない気がするので、ちょっと貴重な体験談になると思う。

単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。いつ入っても当月書かれた記事は全部読める。12月は4本更新なのでバラバラに買うより2.4倍オトク。


それでは早速見ていこう。僕の罪の話を……。


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