芋出し画像

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「垰っおきたよ 『゚レンレむ』が 荷電粒子砲で蒞発させられたはずの光の巚人が宇宙の圌方からたた倧海獣から私たちを守るために垰っおきたんだ」

音速を超える飛行速床で二十メヌトルを超す巚人が空を飛んだ圱響で高局マンションの最䞊階に䜏んでいる『赀厎小倜』はベランダから閉じられた瞌で空を眺めおいる。

垌望の光のようなものが音波をばら撒きながら静かに暮らしたいず願う人々の暮らしに倉化を䞎えようずしおいる。

『小倜』は決しお空を飛ぶ『゚レンレむ』の姿を目にするこずはもう出来ないけれど、きっずママに蚀われた通りに芋る必芁のなくなった䞖界を砎壊しおくれるだろうず䞡手を組んで願い事を届けるようにしおゞェット機のような蜟音が響く倕暮れ時の空を芋䞊げおいる。

「やはり駄目ですね。『゚レンレむ』は前回の荷電粒子砲の攻撃で身䜓を構成する゚ヌテル粒子䜓の結合率が極端に䞋がっおいるず蚀わざるを埗たせん。このたたでは剥がれ萜ちた高熱の゚ヌテル粒子䜓が呚蟺地域を汚染しおしたうだけだず思われたす」

「しかしだな、我々の方だっお『ギガマキナ』ず『゚レンレむ』の䞡方を撃ち抜くほどの゚ネルギヌを充填するたでには最䜎でもあず䞉日はかかっおしたう。このたた手をこたねく以倖に方法はないんだ。銬鹿みたいな話だが奇跡でも起きるのを埅ち望むこずしかできないんだ。自然の猛嚁に人間は無力であるずしか蚀いようがない」

六本朚ヒルズ最䞊階フロアに秘密裏に察巚倧未確認生物排陀甚防衛基地『゚ルドラン』が建蚭されたのは二〇䞀〇幎に静岡県、山梚県、長野県を跚ぐ巚倧な砲での疑䌌゚ヌテル生成実隓䞭に起きた爆発事故の圱響による海掋汚染の結果、呚蟺地域の生物に異垞な现胞促進効果がもたらされ倧海獣ず呌ばれる巚倧生呜が珟れるようになっおからで、たるで巚倧生物の登堎ず呌応するようにしお、『゚レンレむ』ず呌ばれる光の巚人目撃情報が倚発するようになった事態を盞殺するようにしお東京郜議䌚及び囜䌚は緊急防衛察策委員䌚を蚭眮し、『゚ルドラン』及び倧型灜害察策民間運営団䜓『ゞャヌクサタン』を僅か䞉幎で制床化するこずに成功する。

䞀説にはある皮の固有゚ヌテルを䜿甚した個人的掻動ではないかず噂される『゚レンレむ』は倧海獣が出珟するたびに、倧和の䜕凊からか珟れるず、倧怪獣ず共に呚蟺地域に爆発的音響効果や芖芚汚染による被害を䞎えながらも突然珟れた巚倧灜害を僅か半日足らずで解決しおしたうずいう英雄的䞀面も持ち合わせ、内閣府による報道芏制が敷かれおいたにも関わらず倧海獣ず『゚レンレむ』の亀戊は瞬く間にカルト宗教的芁玠を持った信仰ずしお民間ぞず拡がっおしたった。

事態を重くみた『゚ルドラン』及び『ゞャヌクサタン』は倧海獣『ギガマキナ』第二圢態及び『゚レンレむ』を東京郜呚蟺の党電源を収束させた倧型荷電粒子砲『』により掻動停止状態ぞず远い蟌むこずに成功する。

「䞀幎足らずでここたで再生しおしたうずは我々の予枬を遥かに䞊回る゚ヌテル量です。ここたでだずなんらかの人工的察凊をされおいるずは思えたせんが、圓の『゚レンレむ』ぞ倉身する゚ヌテル保有者は芋圓たらないたた」

「経枈掻動も深刻だず蚀わざるを埗ないが、この分ではたた倩䜿様が珟れたず隒ぎ出す若幎局の女性信者が増えるに決たっおいたす。内容が内容だけに倧手メディアもうか぀に攟送を組むこずが出来ずに攟っおおくしかない状態。党くたさか我々を救っおくれるず思っおいた光の巚人ずやらにここたで手を焌くずは」

床重なる海獣ず巚人の決戊による経枈掻動ぞの䜙波は灜害察策に十分な費甚が捻出できない事態たで匕き起こし、予算オヌバヌから既に『゚ルドラン』はたった二人の職員を残すのみでたずもに運甚されおいるずは蚀い難ず無数のモニタヌが慌ただしく『゚レンレむ』及び静岡県沖に珟れた『ギガマキナ』第䞉圢態の様子を映し出しおはいるものの明確な察策を打ち出すこずが出来そうにないずいう無力感に襲われたたた時間だけが過ぎ去っおいく。

『ギガマキナ』の吐き出す過去の亡霊が染み付いた臭い息で浜束垂付近の海岞には赀朮の異垞発生が続いおいるけれど、珟れた神の䜿いの代匁者にすっかり手を拱いおいる。

「やっぱり倩䜿様は私のこずを救っおくれるわけじゃないんだ。お姉ちゃんだっお掗瀌を受けお倩囜ぞ行っおしたった。けど、あれは聡矎ちゃんが私の倩䜿様を悪魔だっお隒ぐ口を塞がないからお姉ちゃんがお友達を呌んでくれただけなのに。私はやっぱり闇街が怖い。あい぀は倩䜿様たちが䜕凊から珟れるのか本圓に知っおいるんだ」

『舞川詩乃』は倪った身䜓には䌌合わない黒いゎシックロリヌタ服を着お䜏宅街を歩いおいるけれど、圌女の巊手は剃刀で䜕床も刻たれおいお血液が流れ出お痛々しさが䌝わっおくるのかすれ違う人々は誰も圌女に声をかけたりはしおこない。

フラフラずふら぀く足元でもう少しで倪陜が沈んで倜が蚪れる街を歩きながら蚈画が䞭断された建築途䞭のビルの前で立ち止たる。

倜はただ来ないけれど気配ず声だけがひっそりず埌ろから远いかけおくる。

「私はか匱い女の子たちの心の叫び声で出来おいるんだ。このたたじゃお前は誰かの䞀぀になっお消えちゃうだけだっお知ったら女の子たちはみんな倩䜿様っおや぀を呌び出すんだ。私はさ、そういうこずを考えたりしないけれど、聡矎は䜿埒になる方法を探しおいたんだよ。だから翔子が詩乃にこだわっおいた理由を私は壊しおあげたい。䞭途半端な゚ヌテルなら私が封印しおあげるよ」

フリルの぀いた黒いスカヌトはビリビリに砎けおしたっおいる。䞋着が芋えおいるけれど、䞃階建おのビルの建築珟堎は所有者が行方䞍明になっおしたったずいう理由で工事が䞭断されおいる為に、資材や道具が散らかったたたで誰もあたりには芋圓たらない。

『舞川詩乃』はお颚呂堎で初めお手銖を切っおみたけれど、うたく刃が奥たで入っおいかなくおたくさん血は出たけれど、簡単には死ぬこずが出来そうにない。

どうせこのたた生きおいおも私が圹に立おるこずなんおないだろうし、もし簡単なやり方でお姉ちゃんのずころに近づけるのならちょっずだけ勇気を出しお明日の晩ご飯を抜きにするこずを考えおもいいのかもしれない。

ずにかく私がいなくなっおいい理由も芋぀けられなかったし、今こうやっお誰もいな建築珟堎を釘や鉄屑が萜ちおいお危険で溢れおいるのに私はがやがやず䜕も考えずに歩いおいる。

倩井を支える鉄の柱が䜕本も立っおいる階たでやっおきお『舞川詩乃』ずいう名前もその䞀぀になっおしたおうず資材で散らかった1箇所だけ灰色のネットが倖れお倖が䞞芋えになっおいるコンクリヌトの先端あたりたで歩いおいく。

い぀のたにか䞭断しおいた建築工事は倚分誰も手入れをしおいなかったせいで、転萜防止甚に貌られおいた黄色いロヌプすら倖れおいお脚を螏み出せば䞀階たで転萜しお私はもしかしたら呜を倱うこずが出来るかもしれないけれど、もし䞊手く萜ちるこずが出来なかったら腕の骚を骚折しお内臓が砎裂しお錻の骚が折れおもっずブサむクになっお圌氏なんお䞀生できない身䜓になっおしたうだけで私は惚めに生きようっお願うだけで終わっおしたうかもしれない。

「けど、私はあず䞉十センチだけ脚を螏み出しおしたえば倚分本圓に真っ逆さたに萜䞋しお誰も片付けるなんおこずを考えおいなかったからか泥の䞊に突き出おいる鉄の棒がうたい具合に私を貫いお呜を亡くしおしたうこずぐらいは出来るかもしれない。勇気のない私に出来るのはきっずそれぐらいだよっお聡矎がよく私のこずを構っおくれおいたな」

「ねえ、そうしたら、私が突き萜ずしおあげようか。今なら誰もみおいないし、なんおいうか詩乃みたいな女の子がこんな堎所で転萜しお脳味噌をぶちたけお真っ赀に地面を汚す瞬間を芋られるなんおこずは滅倚にない機䌚だず思うの。需芁ず䟛絊っおや぀なのかな。私は今あなたのこずを必芁ずしおいるみたい」

『舞川詩乃』が埌ろを振り返るず、建築資材の隙間に『闇街霧子』が立っおいお圌女は私立粟華女子高校の制服を着たたた少しだけ笑っお膝を折り曲げしゃがみこんで床に萜ちおいる金属補のナットを拟っお『舞川詩乃』に投げ぀ける。

『舞川詩乃』の額に五センチぐらいの鋌鉄のナットがぶ぀かっお血が流れお圌女は足元がふら぀いおそのたた地面に転萜しそうになる。

「聡矎ちゃんのこずもこうやっお远い蟌んだんでしょ。私はさ、お前みたいなや぀のい぀も端っこでふおくされおいるだけだから灯の゚ヌテルを䜿っおも呚りは明るくなったりしないんだ」

「あはは。なにそれ。詩乃が人生に絶望しお死にたがっおいるのはよくわかる。お前は嘘なんお぀いおないじゃん。死ぬのだっお誰だっお怖いしさ、私が手䌝っおあげるっお蚀っおいるだけだよ。聡矎はさ、お前のお姉ちゃんの悪い癖が出たんだず思うよ。あの子は嘘をいうこずが生き甲斐みたいな子だから」

『舞川詩乃』は心を芋透かされたこずに途端に力が抜けおその堎に立ち尜くす。

死にたい気持ちが嘘になりそうで嫌になり、埌䞉十センチだけ脚を螏み出せば地面に萜䞋する五階のベランダで『舞川詩乃』は『舞川翔子』の悪い癖っおや぀を聞いおみようず『闇街霧子』の傍に近づこうずする。

ビルの䞊空で蜟音が鳎り響き、空が唞り始めお突颚が吹く。

『舞川詩乃』は颚に煜られお足元が揺らぎ、そのたた勢いで建築工事が䞭断されたビルから地面に向けお萜䞋しおしたいそうになる。

「いやだ だめ」

「ほら。お前は嘘なんお぀いおいなかっただろ。死にたい奎は死んでもいいんだ。生きたいっお蚀っおくれたから私はこうやっお詩乃の手を握っおいる」

『闇街霧子』は萜䞋しそうな黒いゎシックロリヌタ服ずビリビリに砎れたスカヌトを来た䜓重六十五キログラムで身長癟五十八センチの『舞川詩乃』の右手を掎んで痛々しそうに血が流れおいる巊手の傷をした先でなめずる。

『闇街霧子』は力いっぱい『舞川詩乃』を匕き䞊げお鉄屑や朚屑がたくさん萜ちたたたになっおいる工事珟堎の䞭に匕き戻す。

「殺す気でこんなずころたで远いかけおきたんだろ。脳味噌がぶちたかれた姿を芋たいっお蚀っおいたのはお前じゃないか」

「あはは。私はブスが萜䞋しお豚の逌になるこずなんお興味はないよ。ただ詩乃がしたいこずを手䌝っおあげたいだけだから」

「なんだよ、それだから蚀ったんだ お前なんかに、お前なんかに私の気持ちがわかる蚳ないっお お姉ちゃんはずっずお前にいっちゃダメだっお蚀っおたのに。お前みたいな奎が死ねばいいんだ」

ククッず口元を抌さえお『闇街霧子』はビリビリのゎシックロリヌタずボロボロの衚情の『舞川詩乃』を芋お笑いを浮かべる。

突然の突颚で汚れおしたった制服の埃を払い陀けお『闇街霧子』は『舞川詩乃』の傍から離れようずする。

「あはは。ありがずう。それじゃあね。バむバむ」

『闇街霧子』は巊手の人差し指にフッず息を吹きかけお指先に灯を宿らせるず、『舞川詩乃』は匕き぀った笑いを浮かべおすっかり陜が沈んで真っ暗になっおしたった建築珟堎の䞭に眮き去りにされる。クルッず振り返っお今床は死にたい気持ちなんおものを持っおいた自分を銬鹿にするみたいにしお巊手の人差し指を口元に぀けおフッず息を吹きかけるず、䜏宅街の倖灯に䞀斉にスむッチが入っお町䞭に倜が蚪れたっおこずを知らせるようにしお明るさを取り戻す。

『闇街霧子』はせっかく暗闇の䞭を誰にも芋぀からないように歩けるず思ったのに、倖灯が壊れおいなかったこずにがっかりするようにひず気の少ない土曜日の䜏宅街を歩いおいる。

挆黒の髪が倜を求めおいるせいか蛍光灯の光はたるで圌女を避けるようにしお街を照らしおいる。

──飛び出し泚意 ──ず黄色い䞋地に赀字で曞かれた看板の埌ろから般若面を被り長袖の济衣ず䞋駄を履いた男が『闇街霧子』の前に珟れお、般若面を口元たであげお話しだす。

「こんばんは。黒い欲望の象城。善意ず悪意の区別を持たない優しきお姫様。俺たちは君を迎えにやっおきたんだ」

「それじゃあたるで私が運呜に遞ばれたみたいだね。どうしお私なんかを芋぀けおくれたの」

「俺たちに意志がないのはご承知の通りだ。だがしかし。俺たちは玛れもなく人間なんだ。『ブラック゚ンド』たでようこそ。友奜の蚌にこれから君には終末の端くれをプレれントする぀もりだよ。行くぞ」

よく芋るず、塀の䞊や曲がり角の向こう偎やそれから倚分『闇街霧子』の埌ろの方にも暗闇の䞭に朜む人圱の気配を感じるけれど、もし圌女がここで誘いを断ったずしおもビルの䞊から萜䞋しお翌朝の新聞に小さな蚘事ずしお名前が残るだけなのかもしれないず考えお、般若面の男が差し出した右手に巊手を添えおちょっずだけ埌ろを振り返ろうずした気持ちを抑えお『闇街霧子』は圌らず䟛に歩き始める。

酷く喉が枇いおいたけれど、今すぐに喉を最すだけの飲み物は手に入らないのだず分かっお圌女は、りニカの新曲、──   ──を口ずさむ。

「なんだかここは静かですね。波の音だけ聞いおいたらそのたた眠りに萜ちおしたいそうです。真叞さんは来る時もこうやっお波の音を聞いおいたんですか」

芹沢矎沙は六畳䞀間のチャブ台を挟んで『蒌井真叞』ずお茶を飲み時間ず朰しおいる。

胞元のペンダントの青い光の指す方向にどうやら『シロナガスクゞラ』は進んでいるようだし䜕も心配をする必芁はないかもしれない。

赀く茝く『桜珊瑚』を芋おいるだけでなんだか悪い気持ちなんお吹き飛んでしたいそうで『アンダヌ゜ン』が䞀生懞呜に『桜珊瑚』ず䜕かコミュニケヌションをずっおいる様子ず波の音を聞いお気持ちを安らげおいる。

「お前はさ、こんなずころに流れ぀いおきおどうする぀もりだったんだ。静かだけど䜕にもない堎所だぞ」

「がくはどこにいたっおこの調子さ。誰かに芋られたくお生きおいるわけでもない」

「じゃあ私だっおおんなじだ。いっそのこずあの戞棚の䞭でぐっすり眠れるならそれで構わない」

「あはは。いいアむデアだね。君の長い旅は『シロナガスクゞラ』の䞭で続くだけなんだ」

「欲しいものは党郚ここにあるからな。よし、じゃあ私が最埌に手䌝っおやる。持ち䞊げられるかな」

「そこの男の人に手䌝っおもらうずいい。圌なら君の垌望をわかっおくれるはずだよ」

『アンダヌ゜ン』はひらひら飛んで『蒌井真叞』のずころに近づいおコツンず頭を『桜珊瑚』の剣で叩くず、圌は思わずお茶を吹き出しおチャブ台の䞊を濡らしおしたう。

「どうしたんだい。この堎所でゞタバタしおいおもしようがないだろう。がくらは結局のずころ迎えが来るたで埅ち続けるこずしかできないんじゃないのかな」

「私はそんなものを埅っおいたりするほど愚かじゃない。ゆっくり眠れる堎所があればそれでいいんだ。出来たら私ず『桜珊瑚』をあの戞棚の䞭にしたっおおいおくれ。がくの身䜓が収たるにはちょうどいい堎所なんだ」

『蒌井真叞』は『アンダヌ゜ン』に蚀われた通りに、『桜珊瑚』を抱えお六畳䞀間の右端に眮かれた戞棚の䞀番䞊の扉を開けお䜕も入っおいないこずを確認するず、『アンダヌ゜ン』ず『桜珊瑚』を䞭に眮いお怪蚝そうな顔をする。

「本圓にこんな堎所でいいのかな。照明は確かにないけれど、赀い光だけで十分のような気がするけれど、君ず『桜珊瑚』以倖のものが芋圓たらない」

「出お行きたくなったら、い぀でも出られる堎所なのだから構わんよ。しばらくこい぀ず二人きりでおしゃべりができるだけで十分なんだ」

『アンダヌ゜ン』は右手で別れの挚拶を告げるず朚補の戞棚の匕き戞を閉めお穎熊みたいな栌奜をしお眠りに぀いおしたう。

少し寂しそうな顔の『蒌井真叞』がチャブ台の方を振り向くず、芹沢矎沙は脚を厩しお座りながら少しだけにこやかな衚情でお茶を飲んでいる。

「『アンダヌ゜ン』はい぀でも行きたい堎所に奜きな時にいくんです。そういう気持ちが圌女からは䌝わっおきお今はずおも優しい気持ち」

波の音が少しだけ慌ただしくなっおきたようで、癜鯚の泳ぐスピヌドがずおも早かったからか、どうやらもう倧分海面に近い堎所たで近づいおきたずいうこずが『蒌井真叞』にも理解ができる。

圌の圹目は『 』の為に芹沢矎沙の障害を取り陀いおいくこずだけだけれど、どうやら埌のこずはどうにか”ポヌルトヌン”に任せおも倧䞈倫なのかもしれないず蒌井真叞は手元の腕時蚈を確認する。

カスタムメむドのスピヌドマスタヌには海抜蚈が内蔵されおいお、今が海抜䞉癟メヌトル近い堎所であるこずがわかり、これならば特殊耐圧ダむバヌスヌツで自分䞀人だけなら抜け出せるかもしれない。

「君には青い光が救いを届けおくれるずいう確信があるみたいだね。それならがくの圹目もここで終わるはず。䞀足先に、『カスミガセキ』たでがくは戻るずしよう。『ホワむトラむト』は君のこずをえらく評䟡しおいたよ」

なんだかお花畑にいるみたいに芹沢矎沙はボヌッずお茶を呑んでいるだけで、あたり『蒌井真叞』のいうこずには興味がなさそうだけれど、ペンダントヘッドの青い光が照らした先にあるものを信じおみる事しかできないずいうこずがわかっおいるようだ。

そうやっお癜いワンピヌスず倧きな麊藁垜子を被った女性は圌女に蚀っおいた。

「時が来たら、萜ち着いお、やるべきこずが枈んだのならもう慌おる必芁もなくなるはずよ。歯車の動きは䞀分たりずも乱れないように私たちの䞖界はできおいるわ。ずおも簡単な話なのよ」

芹沢矎沙は湯飲み茶碗をチャブ台の䞊に眮いお、ゆっくりず『蒌井真叞』の方を芋るず──もう倧䞈倫です、あなたの眪はこれからこの堎所でゆっくりず償われおいくだけです、海が党おを掗い流しおくれる時だけを埅぀しかありたせん──ずいうようなメッセヌゞを送りながら圌の目を芋おしっかりず䌝える。

『蒌井真叞』は結局のずころ最埌は皆䞀人なんだずいう圓たり前のこずを理解しおくれたようだずカスタムメむドのスピヌドマスタヌの文字盀脇のボタンを抌し蟌むず党身が深い青色のダむバヌスヌツに包たれる。

深海魚のようなマスクの特殊な耐圧環境化でも行動可胜なスヌツに右手には『.』ずゎシック䜓の衚蚘があり、『蒌井真叞』は別れも告げず『シロナガスクゞラ』の倧きな口が入り口になっおいるず思われる波間の方に歩いおいくず、そのたた二癟五十メヌトルほどの深海に向かっお叀代地球の鮪ずいう魚の尟鰭ず背鰭を暡倣したダむバヌスヌツのフィンを䜿っお深海ぞず向かっお泳いでいっおしたう。

「癜河君。噂では聞いたこずがあったけれど、目の前に巚倧な口だけの倧怪獣が珟れた。がくの行く手を簡単にはしおくれないらしい。ここたで来おがくは奇跡を埅ち望むだけのク゜野郎になるこずしか出来ないのかな」

『む゚ロヌサブマリン』に乗り蟌んでいる䜐々朚和人の前に珟れた『ギガマキナ』第䞉圢態が臭い息を撒き散らしながら埐々に陞地のほうに近づいおくる。

海は倧しけでこのたた海䞭に朜っお行っおも無事に青い光を远いかけるどころかどこか知らない土地に流れ぀いおしたうかもしれない。

『出雲』で手に入れた赀い募玉は匱々しく光りながら照合される瞬間を埅ち望んでいるようだ。

「どうやらその奇跡ずやらが向こうからやっおきおくれたみたいでござるよ、和人氏。過剰䟛絊された゚ヌテルが䜜り出した光の化身、『゚レンレむ』でござる。䞊空を音速で飛び亀う圌の独壇堎になっおしたうでござるから小生は䞀旊戊線を離脱するでござる」

䜐々朚和人が揎護を倱い、たった䞀人で『ギガマキナ』の目前に取り残された䞍安感で䞀杯になった頃にたるで圌を窮地から救い出しおくれるような光の巚人が浜束県某海岞ぞず降り立っおくる。

けれど、『゚レンレむ』の䜓は高熱で蒞発しおしたいそうなほど湯気が立ち䞊がりボロボロず癜い光の身䜓が厩れ萜ちお今にも消えお無くなっおしたいそうなこずがよく分かる。

奇跡を起こしにやっおきた救䞖䞻はすでに厩壊の道を蟿る目前で醜悪な化け物ず察峙しようずしおいるけれど、陞地ぞ近づいおくる『ギガマキナ』を焌き払っおしたおうず『゚レンレむ』は口から熱線を吐き出しお海面を爆炎によっお穢すこずで倧量のプランクトンの死骞によっお発生しおいる赀朮汚染を浄化しようずしおいる。

「和人。どうにもこうにも倢っおいうのは叶わないんだ。──ねだるな、勝ち取れ、さらば䞎えられん──なんお蚀葉ぐらいしかこういう堎所では圹に立たない。いいか、思いを䞀぀に重ねおみろ。勝ちたいず匷く願っおみろ。俺たちが力を貞しおやる。『超神合䜓アヌスガルズ』の出番がやっおくるぞ。この局面をお前の力で打開しおみせるんだ」

䜐々朚和人の胞元で『ナグドシラルヒュヌマノむド』である『アヌスガルズ』が熱く燃え滟るような魂の化身ずしお話しかけおくる。

超合金補の赀い身䜓を持った『アヌスガルズ』は最倧搭茉人数二名の『む゚ロヌサブマリン』の䞭倮パネルを指差しお──叫んでみろ──ず䜐々朚和人を錓舞し始める。

「そうだな、『アヌスガルズ』。ナグドシラルパワヌフルドラむブで行くぜ。チェェェェンゞアヌスガルズ スレむプニルむンナグドシラルゥゥゥゥゥゥ」

『アヌスガルズ』ず䜐々朚和人が粟䞀杯咆哮するように叫ぶず、『アヌスガルズ』は䞡手を広げお『む゚ロヌサブマリン』の䞭倮パネルに吞い蟌たれおいく。

半球圢のパネルに倉革ず倜明けを瀺すルヌン文字が衚瀺されお圌らを埅っおいた『ナグドシラルヒュヌマノむド』に『ナグドシラルパワヌ』が送信されおいく。

「いぇぇぇい 埅っおいたぜ 長兄の俺様は䞊空五千メヌトルからラグナロックのために音速で駆け぀ける。いくぜ、チェヌンゞラグナロックオントヌル」

癜い雲を突き抜けるように戊闘機ぞず倉圢した雷神『トヌル』が『スレむプニル』の元ぞず飛んでいき、完党性を瀺すルヌン文字を送信する。

「うぉぉぉぉ 埅ちかねおいたぞ この䞖界に珟界した時からこの時を。いくぞ、チェヌンゞラグナロックオンオヌディヌン」

囜道沿いを走っおいたトントラックが巚倧な熊型ロボットぞず倉圢しお咆哮しながら砎壊ず自然を瀺すルヌン文字を送信しお匱き者たちの力を䞀぀にたずめようずする。

「がくの出番もあるんだね。涙はもう拭う必芁がないんだ。がくらの力が䞀぀になれば敵なんおどこにもいない。さぁ、いこう。チェヌンゞラグナロックオンロキ」

ずある小孊校のプヌル底が割れお溜たっおいた氎が地䞋ぞず流れ蟌んでしたったかず思うず、角を生やした昆虫型のロボットが浮かび䞊がり誰もいない孊校の校庭に守護するものを意味するルヌン文字が浮かび䞊がり空ぞず送信する。

「やはりこの機䜓が必芁になっおくるでござるな。『フェンリル』。お前の出番でござるよ。和人氏ず力を合わせお困難を打ち払っおやるでござる。小生は退避するでござる。」

狐の獣人である癜河皔は-の脱出ボタンを抌しおコクピットから離脱しおパラシュヌトによっお䞊空から降䞋しおいくず、戊闘ヘリが急旋回をしお倧荒れにしけ始めた浜束沖ぞず飛んでいく。

「やはり私がいなければ始たりたせんね。必ずや合䜓を成功させおナグドシラル゚ネルギヌで䞖界を満たしおご芧に入れたす。行きたすよ、チェヌンゞラグナロックオンフェンリル」

光の巚人ず巚倧な口ず無数の足の化け物が察峙する海に六䜓のナグドシラルヒュヌマノむドが集結しお危機的な汚染状態ぞず掗い流そうず倉圢した二人乗り朜氎艇は足が八本ある倩銬型ロボットぞず倉圢しお䞊空ぞず浮かび䞊がるず『超神合䜓アヌスガルズ』ぞず倉圢しようずする。

「和人。ここからはお前の力だけが党おだ。いくぜ、絶察無敵の六神合䜓、ラグナロックアヌスガルズ、ナグドシラルパワヌフルドラむブを芋せおやる」

海の䞊で巚倧な黒い光が産たれたかず思うず、倧鷲ず熊ず昆虫ず狌ず倩銬が空䞭で䞀぀の巚倧な機械生呜䜓ぞ合䜓しようず身䜓を倉圢させおいく。

䞡手ず䞡足ず頭ず胎䜓ず腰に分かれおいたナグドシラルヒュヌマノむドは海䞊で熱線による攻撃を繰り返しながら呚蟺地域を壊滅状態ぞず远い蟌もうずしおいる『゚レンレむ』ず『ギガマキナ』の前に『超神合䜓アヌスガルズ』の姿ずしお珟れるず、小さな赀い身䜓の超合金補の『アヌスガルズ』が胎䜓䞭倮のコクピット郚分に圓たる黒い半球の䞭ぞず吞い蟌たれおいく。

「たさか子䟛の頃憧れた合䜓ロボットのコクピットにがくが入り蟌めるずは思っおいなかったぞ。お前たちをのスケヌルたで到達させるのに十幎かかったんだ。『.』が誇る最匷兵噚『超神合䜓アヌスガルズ』の力を思う存分に芋せ぀けおやる。いくぞ、たずは超必殺剣でフィンブルノェトを打ち払い、『ギガマキナ』を粉砕しおやる」

『゚レンレむ』は今にも溶け出しおしたいそうな光に包たれた身䜓で浜束沖の『ギガマキナ』の傍に近づこうずしおいる。

酷く臭い息を吐き出しながら、海掋を汚染させおいる巚倧な口だけの倧怪獣が無数の足をしならせお陞地ぞず近づきながら『゚レンレむ』の熱線によっおダメヌゞを負っおいるけれど、爆炎に包たれながらも怯むこずがない。

『アヌスガルズ』は背䞭に背負った巚倧な剣を䞡手で握りしめるず、倩空に向かっお掲げお黒い雲を呌び寄せる。

無数の皲光が走り回っお雷撃を集め始めるず、手に負えないほど進化しおしたった『ギガマキナ』第䞉圢態に向かっお、サンダヌボルトトヌル゜ヌドを『.』によっお䜜り出された『匷襲型汎甚人型決戊兵噚超神合䜓アヌスガルズ』が振りかざし、緑色の身䜓ず巚倧な口の぀いた頭ず觊手のように蠢く脚の『ギガマキナ』を消滅させようずする。

「やっおやるぜ。和人。お前が願ったから俺たちは架空䞖界の『ナグドシラル』から『ガむア』に召喚されおきたんだ。いいか、倢を手に入れろ。誰かに叶えおもらいたい幻なんおものはお前の最匷の剣で昇倩させおやれ。叫べ ナグドシラルパワヌフルドラむブだ」

「いくぜラグナロックアヌスガルズ 倩地厩壊 終末の序曲を思い知れ ギガフレむムペルムンガンド」

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