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BFF ベタ・フラッシュ・フォワード[2] 大森記詩 彫刻家【ポリパテの重さ】

   *『建築ジャーナル』2019年2月号の転載です。 
       誌面デザイン 鈴木一誌デザイン/下田麻亜也 

天王洲アイルで開催されていたグループ展「GRAVITY “STEELERS vol.15”」へ彫刻家・大森記詩の最新作《Training Day -Patchwork Empire-》を見に行った。

オフィスビルの豪奢な1階エレベーターホールに 、有名SF映画の巨大宇宙船をモチーフとした彼の作品が、はるか頭上からワイヤーで、ガラスの間近に吊るされていた。

彼が2017年より発表している《Training Day》シリーズの他作品と同様、表面は数多のプラモデルパーツで覆われている。
色や大きさ・モチーフもバラバラな、 本来想定された組み上げ方を無視したパーツの集合が、モチーフの輪郭を粗くしかし確かにそのモチーフとわかるなめらかさに仕立てている。
よく見ると表面はヌラヌラと光っており、彼が施工時に使う溶剤系の接着剤による効果だとわかる。各パーツはプラモデル本来の組み上げ方のようにカッチリとはまるのではなく、溶かし合わされた表面が結合されているのだ。

作品は2m ほどの長さで大きく、かがみながら見ていると、宇宙船の後方―イオン・エンジンの噴射口から中を覗くことができた。
驚くことに内部骨格もまた数多のパーツにより構成されている。この内部断面は元のモチーフの断面 を再現するものではないものの、確かにこの大きさを支持するために必要な断面を構成していた。

プラスチックの集まりにもかかわらず感じる、ズッシリとした重さ。鑑賞者には触れて感じることのできないその重さを示すかのように、内部骨格があるかのようだ。

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建築家ジョン・ヘイダックは「FRAME7」というインタビュー中、インタビュアーへこう聞き返している。

「心臓の重さはどれくらいだと思いますか」

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